変動費と固定費に分解すると費用はどう見えるのか
費用を2種類に分解すると何が見えてくる?ひとくちに費用といってもその内容はさまざまです。
商品を製造するための材料費あるいは商品そのものの仕入、従業員へ支払う給料、事務所家賃、水道光熱費、旅費交通費などなど。
会社が事業活動を営むうえで発生する費用は多岐にわたります。
通常これらすべてをまとめて「費用」といいますが、その性質によって分類して考えることができます。
たとえば直接費・間接費、埋没費用、機会費用などと表現されます。
今回は「変動費」と「固定費」という分類から費用を考えてみましょう。
目次
変動費とはどんな費用のことなのか
変動費とは、売上や販売数量の増減に合わせて増減する費用のことです。
たとえば材料費や仕入原価などが変動費に該当します。
では、1個10,000円の商品があって仕入原価が5,000円だった場合を考えてみましょう。
100個販売した場合
・売上:販売数量100個×10,000円=1,000,000円
・仕入原価:販売数量100個×5,000円=500,000円
300個販売した場合
・売上:販売数量300個×10,000円=3,000,000円
・仕入原価:販売数量300個×5,000円=1,500,000円
売上に比例して仕入原価の額も変わりました。このような費用が変動費に当たります。
固定費とはどんな費用のことなのか
「固定費」は売上や販売数量の増減にかかわらず、一定して発生する費用のことです。
極論でいえば固定費とは、売上がゼロであっても100億円であっても、常に一定額で発生する性質のものといえます。
たとえば事務所家賃は、商品の売れ行きの好不調にかかわらず、毎月一定額かかります。
さきほどの例に、一か月当たり300,000円の事務所家賃を加味して考えてみましょう。
100個販売した場合
・売上:販売数量100個×10,000円=1,000,000円
・仕入原価:販売数量100個×5,000円=500,000円
・事務所家賃:300,000円
300個販売した場合
・売上:販売数量300個×10,000円=3,000,000円
・仕入原価:販売数量300個×5,000円=1,500,000円
・事務所家賃:300,000円
当然のことではありますが、販売個数の増減に関係なく、事務所家賃の額は変わりません。
このような費用が固定費です。家賃のほかには水道光熱費・従業員の給料などが該当します。
ところで、正社員に対する給料は固定費と考えられます。
その一方で、繁忙期が理由で一時的に増加するものであれば、残業代・短期パート社員の給料などを変動費と考える場合もあります。
業種業態によって考え方が異なることもありますが、さしあたりは売上にかかわらず毎月一定額かかるかどうかで考えてみるとよいでしょう。
変動費型ビジネスと固定費型ビジネス
以上のように費用は変動費と固定費に分けることができます。
何が変動費で何が固定費なのでしょうか。
中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」に業種別指標が掲載されているので、こちらをご参照ください。
では、費用を変動費と固定費に分けることでどのようなことが見えてくるのでしょう。
たとえば変動費に比重があるのか、それとも固定費に比重があるのかによって、そのビジネスの性質が変わってきます。
変動費型ビジネス(変動費>固定費)
固定費よりも変動費の割合が大きい場合を考えてみましょう。
初期費用が抑えられるので(売れ行きが悪かったとしても、一定に発生する固定費が小さいため)、リスクも小さくなります。
しかしその一方で、1個販売するたびにかかる変動費の額が大きい分、1個販売するたびに追加して得られる利益は小さくなる傾向にあります。
つまり粗利益が小さいために、薄利多売になりがちだといえるでしょう。
したがって変動費型ビジネスはローリスク・ローリターンと考えられます。
なお、一般的には変動費型ビジネスとして小売業などが該当します。
固定費型ビジネス(変動費<固定費)
変動費よりも固定費の割合が大きい場合はどうでしょうか。
固定費型ビジネスはその固定費分を回収するだけの大きな売上を確保しなければいけません。
ただし、販売数量に比例して増える変動費の占める割合は小さくなります。
言い換えると1個販売するたびに付随してかかる費用が少ないので、販売するほど利益率が大きくなるともいえます。
したがって変動費型ビジネスに比べて、固定費型ビジネスはハイリスク・ハイリターンになります。
なお、固定費型ビジネスと考えられるものに、たとえばホテル業があります。
来客してもらうための建物やスタッフに占める費用の割合が大きいということでしょう。
もちろん、どちらに優劣があるというものではありません。
販売戦略にしても、それぞれの特性が考慮されることになります。
値引きに強いのは変動費型か固定費型か
ホテルや旅客機はその日1日の利用者数にかかわらず運用する費用つまり固定費が大きいので、早期予約割引を行ってでも利用者を集めることで売上を確保することができます。
なぜなら、乗客が1人であっても100人であっても、旅客機は飛ぶことになるからです。
ですから、価格を下げてでも利用者を集めた方が利益につながるわけです。
これは1顧客当たりの追加費用=変動費が少ないため、値引きによる利益幅の縮小が起きにくい固定費型ビジネスだからこそできる特徴です。
わかりやすくするため、あえて極端な例を挙げて考えてみましょう。
- (A)変動費型:売上10,000円(変動費7,000円)
- (B)固定費型:売上10,000円(変動費1,000円)
AとBそれぞれで20%割引を実施すると
- (A)売上10,000円-値引額2,000円-変動費7,000円=1,000円
- (B)売上10,000円-値引額2,000円-変動費1,000円=7,000円
値引き自体は商品の陳腐化など、さまざまな理由があってのことです。
ただ単純に、値引きして利益が取れるかどうかだけを考えるなら、固定費型の方が値引きに強いといえるでしょう。
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- 第5章 「数字」が読めると本当に儲かりました
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