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注文書に印紙が必要になるケースとその対応策

契約書とみなされる場合に要注意

注文書に印紙が必要になることがあるという点は意外と知られていません。
本記事では注文書に関する印紙税のポイントについて、わかりやすく解説をします。

注文書に印紙が必要になるのは請負契約の注文書に限られる

注文書に印紙が必要になりうるのは、それが請負契約の注文書といえる場合です。
売買契約の注文書については、どのような場合であっても印紙は不要です。

したがって、まずはその注文書が請負契約に関するものかどうかが問題となります。

ある契約が請負契約なのか、それとも売買契約なのかを判断することが印紙税を考えるうえで、とても重要です。
そのため、国税庁は、請負契約にあたる場合と売買契約にあたる場合についてその判断基準を示しています。
たとえば、なんらかの工事やオーダーメイドでの物品の製作、修繕などは請負契約にあたります。
詳細については、国税庁の質疑応答事例(印紙税)「請負と売買の判断基準(1)」をご確認ください。

さて、注文書が請負契約に関するものと判明しても、そのすべてに印紙を貼るわけではありません。
請負契約の注文書のなかでも、次に解説する3つのケースのいずれかにあたったとき、印紙が必要となります。

請負契約に関する注文書で印紙が必要になる3つのケース

それでは、請負契約の注文書について考えてみましょう。
印紙税の実務上、次の3つのケースのいずれかにあたると、その注文書は「契約書」として取り扱われ、印紙が必要になります。

(1)契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。

(2)見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものを除く。

(3)契約当事者双方の署名又は押印があるもの

印紙税法基本通達 第21条2項

(1)は、3つの要件から成ります。
すなわち、

  1. 注文書に契約当事者の間の基本契約書、規約または約款等に基づく申込みであることが記載されていること
  2. 注文者の申込みによって自動的に契約が成立すること
  3. 注文書に「お請けいただける場合は請書の提出をお願いします」といった記載がないこと

という3つの要件をいずれも満たしたとき、その注文書には印紙が必要になります。

(2)は、2つの要件から成ります。
すなわち、

  1. 注文書に見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等に基づく申込みであることが記載されていること
  2. 注文書に「お請けいただける場合は請書の提出をお願いします」といった記載がないこと

という2つの要件をいずれも満たしたとき、その注文書には印紙が必要になります。

(3)は、注文書に契約当事者双方の署名または押印があるときに、印紙が必要になります。
この場合、(1)や(2)に該当しないとしても、契約当事者双方の署名・押印があれば印紙を貼らなければなりません。

どのような場合に以上の要件を満たすのか等、詳細については、国税庁の質疑応答事例(印紙税)「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」をご確認ください。

注文書への課税を避けるための対応策

請負契約に関する注文書が上記3つのケースのいずれかにあたると印紙が必要になります。
そのため、上記の要件を満たさないようにすることで注文書への課税を避けることができます。

(1)、(2)のケースでもっとも容易なのは、「お請けいただける場合は請書の提出をお願いします」といった記載を付すことでしょう。
なお、相手方から請書の提出がなかったとしても、注文書が(1)、(2)のケースに当たらないという結論に影響はありません。

また、注文書が課税されるのは、注文書を紙で相手方に渡した場合です。
そのため、注文書をFAXやメール添付で送付することにより、注文書への課税を避けることができます。
なお、請書を紙で発行した場合には相手方が印紙を貼る必要があります。
そこで契約当事者双方がFAXやメール添付を利用することで、お互いに印紙税を節約することができます。

取引先に対し注文書を紙で大量に送付している場合には、今回の記事を参考に印紙の納付状況に問題がないか、どのようにして課税を避けるか等を検討されるとよいでしょう。

山田 重則 氏(弁護士)

鳥飼総合法律事務所所属。
一橋大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
企業等からの印紙税の相談対応や社内研修の実施など、印紙税に関する幅広い業務を行う。
新日本法規出版株式会社・鳥飼コンサルティンググループ主催の印紙税検定<中級篇>、弁護士ドットコムオンラインセミナー「弁護士が知っておくべき印紙税のポイント」にて講師を務める。
著書に「迷ったときに開く 実務に活かす印紙税の実践と応用」がある。

印紙税が必要になる文書とその判断のポイント

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