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グループ通算制度における損益通算とは

グループ内黒字法人・赤字法人で通算処理できる!
 

グループ通算制度における損益通算の計算

グループ通算制度(以下「通算制度」といいます)では、通算グループ内の各法人において生じた所得金額と欠損金額を通算(損益通算)することが可能です。

具体的には、グループ内の黒字法人においては、以下のとおり「グループ内の赤字法人で生じた欠損金額」をその黒字法人の所得金額の比で配分し、その金額を損金算入します。

黒字法人における損金算入額(通算対象欠損金額)の計算

※通算グループ全体の黒字法人の通算前所得金額の合計額が上限とされます。

一方、赤字法人においては次の計算式で、グループ全体の「黒字法人に損金算入させた金額」の合計額を赤字法人の欠損金額の比で配分し、その金額を益金算入することにより、損益通算を行います。

赤字法人における益金算入額(通算対象所得金額)の計算

※通算グループ全体の赤字法人の通算前欠損金額の合計額が上限とされます。

単体納税制度では、他の法人の欠損金額と通算することは認められていないため、この損益通算が通算制度を採用することの最大のメリットといえます。

なお、損益通算は、法人税および地方法人税のみで認められている取り扱いです。
事業税(特別法人事業税を含む)および法人住民税では、損益通算は認められていません。

損益通算ができる法人(通算グループの範囲)

通算制度を適用するには、所定の事項を記載した申請書を提出して、国税庁長官の承認を得る必要があります。
通算制度の承認を受ける場合は、内国法人である親法人とその親法人との間に外国法人を介在しない完全支配関係がある一定の子法人のすべてで、承認を受けることとされています(下図参照)。
このとき、完全支配関係がない法人および完全支配関係がある場合でも外国法人や、その外国法人の子法人などは、通算制度の承認を受けることはできません。

また、上記要件を満たしており、通算制度の承認を受けることができる子法人であれば必ず承認を受ける必要があります。特定の子法人だけ除外するということはできません。

損益通算は、この通算制度の承認を受けた親法人および子法人(以下「通算法人」といいます)を範囲(本稿では「通算グループ」といいます)として行います。
なお、子法人については、事業年度末に親法人との間に完全支配関係がある法人に限られています。期中に通算グループから離脱してしまうと、その子法人は損益通算を行うことができません。

損益通算が制限される場合

通算法人※1が、通算制度開始日または加入日において、親法人(通算法人が親法人の場合には、子法人のいずれか)との間に支配関係が5年超継続していない場合(設立以来支配関係がある場合などを除きます)で、共同事業要件※2に該当しないときは、その通算法人の通算前欠損金額のうち、一定期間において生じた含み損資産の実現損に達するまでの金額は、損益通算が制限されます。

※1 通算制度の開始または加入に伴う時価評価の対象法人を除きます。
※2 共同事業要件とは、以下の要件をいいます。

開始時および加入時(加入前に親法人との間に支配関係がある場合)

親法人 子法人
AからCまでに掲げる要件、または、AおよびDに掲げる要件に該当する場合
A 通算グループ内のいずれかの主要な事業(以下「通算前事業」といいます)と通算グループ内のいずれかの事業(自社が行う事業を除きます。以下「親法人事業」といいます)との事業関連性要件
B 通算前事業と親法人事業の事業規模比5倍以内要件
C 通算前事業の事業規模変動2倍以内要件
D 通算前事業を行う法人の特定役員継続要件

加入時(加入前に親法人との間に支配関係がない場合)

親法人 子法人
AからDまでに掲げる要件に該当する場合
A 加入法人の完全支配関係グループのいずれかの主要な事業(以下「子法人事業」といいます)と通算グループ内のいずれかの事業(以下「親法人事業」といいます)の事業関連性要件
B 子法人事業と親法人事業の事業規模比5倍以内要件または子法人事業を行う法人の特定役員継続要件
C 加入法人の従業者継続要件
D 加入法人の主要な事業および子法人事業の事業継続要件
非適格株式交換等により加入した場合
共同で事業を行うための株式交換等の適格要件(対価要件を除く)に該当するとき

※親法人との間に完全支配関係が継続することが見込まれる子法人に限られます。

また、上記の通算法人で一定期間内に多額の償却費が生ずる事業年度※3がある場合には、その事業年度において生じた通算前欠損金額(償却費部分ではなく、通算前欠損金額の全額)は、損益通算が制限されます。

これらの損益通算の制限措置は、損益通算が制限されるだけで、一通算法人において損金不算入とする措置ではありません。
したがって、損益通算が制限された欠損金額は、繰越欠損金として翌期以降に繰り越され、その通算法人の所得金額から控除することができます。

※3 多額の償却費が生ずる事業年度とは、以下の割合が30%を超える事業年度をいいます。

    償却費として損金経理した金額    
原価、販売費、一般管理費その他の費用の合計額

×100% >30%

償却費として損金経理した金額は、減価償却費として費用計上した金額のほか、次の金額なども含まれます。

  • 修繕費として費用計上した金額のうち法人税の資本的支出の規定により損金の額に算入されなかった金額
  • 除却損または評価損(減損損失の金額も含む)の金額のうち損金の額に算入されなかった金額
  • ソフトウエアの取得価額に算入すべき金額を研究開発費として費用計上した金額

通算税効果額の精算

損益通算により、黒字法人では、納付すべき法人税および地方法人税が減少します。
この減少した金額は、黒字法人から赤字法人に支払うことにより精算することができます。

精算のため各法人で授受される金額を「通算税効果額」といい、黒字法人が支払った通算税効果額は損金不算入とされ、赤字法人が受領した通算税効果額は益金不算入とされます。

永沼実 氏(税理士)

あいわ税理士法人マネージャー。
大手税理士専門学校の講師などを経て、現職に就く。国内の上場企業、IPO準備企業、ベンチャー企業などに対する税務アドバイザリー業務や資本政策の策定・実行支援等に従事している。また、グループ通算制度プラクティス・グループのリーダーとして、グループ通算制度の導入および申告に関してさまざまなサポートを提供している。

グループ通算制度における繰越欠損金の通算実務

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