度重なるルール違反には毅然と対処しましょう
「なりたい会社」になるヒント先日ある経営者の方から「何度注意しても遅刻が直らない社員がいるのですが、どうしたらいいのでしょう?」とのご相談がありました。
このような場合、会社は就業規則の服務規律と懲戒規程にもとづいて「始末書の提出」「出勤停止」「解雇」など合法的な処分(懲戒処分)を行なうことができます。
ところが、ここまで私がお話をすると、その経営者の方は「でも、ちょっとしたルール違反なのに、懲戒処分なんて大げさではないでしょうか」と心配そうにおっしゃいました。
たしかに「懲戒処分」とは、いわばルール違反をした者に与える罰のような位置づけですので、重々しくなることは否めません。
ですが、ルールを守らなくても処分しないということは、ルールを守らなくても咎とがめられないと言っていることと同じです。
もしも処分を行なわないとなると、「ちょっとくらい遅刻しても、たいしたことではない」「仕事をミスしても大丈夫」「お客様からクレームがきても問題ない」と本人はもちろん、他の社員も仕事やルールを軽く捉えてしまう可能性があります。
会社としては「ルールを守らない場合は、処分を行なう場合もある」という毅然とした姿勢が大事なのです。
始末書で初めて自覚
ある飲食店の店長Aさんは、新入社員Bさんの無断遅刻や休憩時間を守らない、という問題行動に悩まされていました。
その都度口頭で注意をしていましたが、何度注意をしても遅刻が改善されないので、「もし、今度遅刻をしたら、就業規則に従って始末書を書いてもらうことになるから、十分注意してほしい」と伝えました。
その後しばらくして再度遅刻をしたBさんに始末書を提出させたところ、Bさんは始末書を書いたことで初めて自分の行動が問題行動だったということを自覚し、その後遅刻をしなくなった、という報告をいただきました。
ただし、ルール違反の程度に比較して重すぎる懲戒処分は違法になるなど、一定の要件を満たさないと、懲戒処分自体が無効になってしまうため注意が必要です。
実務上は、自社の就業規則の内容やその社員の問題行動の程度によってケースバイケースで処分を判断します。
会社の秩序を守るためにも、また真面目に働いてくれている他の社員のためにも、ルールを守らない場合は、処分を行なうという意識は必要不可欠です。
ぜひ覚えておいてください。
月刊「ニュートップL.」 2011年5月号
吉川直子(コーチ型人材コンサルタント)
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