役員報酬の支給額決定には同業他社との比較が重要!
中小企業の役員報酬額のリアルと比較できるデータ集役員報酬は税務調査でも争点になりやすく、会社も税理士も気をつかうところです。
当社の『「役員報酬・賞与・退職金」「各種手当」中小企業の支給相場』(以下『中小企業の支給相場』)はこの問題を解決するべく、多くの会計事務所にご支持いただいている役員報酬の支給実額データ集です。
では『中小企業の支給相場』が、なぜこの問題に対応するために重要なのでしょうか。
ここでは
- 役員給与の損金不算入
- 定期同額給与
- 実質基準
- 税務調査
をキーワードにして本書の意義を紹介します。
目次
役員報酬は経費に認められない?
役員の給与・賞与(以下、役員報酬)は原則、損金つまり税務上の費用とは認められません。
これは「役員給与の損金不算入」といって法人税法第34条に定められています。
(役員給与の損金不算入)
法人税法(e-Gov法令検索)
第三十四条 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
※第34条文中「次に掲げる給与」については後述。
たしかに役員報酬の支出は費用なのですが、そのままでは損金には認められません。
たとえば以下のようなケースで考えてみましょう。
収益(税務上は益金)が1,000、費用が600、そのうち役員報酬が100だとして、費用600のうち役員報酬100が損金にならないのであれば──
会計:収益1,000-費用600=利益400
税務:益金1,000-損金500=所得500
このように税務上は所得が大きくなってしまいます。
所得が大きいのは得なように見えますが、ここに法人税率を掛け算して支払うべき法人税額を計算するので、所得が少ない方が節税になります。
損金に認められないことの大きさがわかるでしょう。
役員報酬を損金にするための税法上の決まり
ただし、どんな役員報酬でも損金に認められないというわけではありません。
前述の法人税法第34条第1項第1号で定められていますが、以下のケースであれば損金に認めることと定められています。
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
- 業績連動給与
たとえば「定期同額給与」というのは簡単に説明すると、あらかじめ毎月決まった額を役員報酬として支給するということです。
なお、この定額は定款や株主総会の決議によって決められます。
もし、定めた額よりも高い額を支給すると定期同額給与に反することになり、その役員報酬は損金計上できないというわけです。
役員報酬は定額であれば金額は高くてもよいのか
では、法人税法に基づき定期同額給与の要件を満たしていれば、役員報酬はたとえ青天井になってもよいのでしょうか。
つまり、かりに極端な節税目的で儲けのほとんどを役員報酬にするような金額に定めたとしても問題はないのでしょうか。
結論からいうと、これは認められません。
課税の公平という観点から、無条件に役員報酬額を定めてよいとはされていないのです。
では、損金計上できる役員報酬額に基準はあるのでしょうか。
そのひとつが「実質基準」です。
役員報酬は役員の職務内容や会社の業績、あるいは同業他社の支給相場等と比較して高額すぎる場合には損金算入を認めてもらえません(法人税法第34条第2項および法人税法施行令第70条参照)。
これらの事情と比較して、まさに実質的に適正な額であるかどうかが問われるわけです。
過大な役員報酬だと税務調査で指摘されたら
職務内容や会社の業績で判断されるというのは分かりやすいかもしれません。
ですが、同業他社が役員報酬をいくら支給しているのか、わかるものでしょうか。
ここが税務調査で争点になりやすいポイントです。
役員報酬を意図して高額に設定したわけではないとしても、税務調査官から指摘されることがないとはかぎりません。
役員報酬額については裁判でも争われるほど悩ましい問題なのです。
■参考
比嘉酒造「残波」課税で注目判決 役員退職金の「適正額」めぐり東京地裁が一部取り消し(KaikeiZine 2016.05.20)
では、税務調査で同業他社に比べて役員報酬が高額すぎるのではないかと指摘された場合、どう反論したらよいでしょうか。
申告書等からさまざまな企業のデータを把握している税務署に対して、企業は何を根拠に主張できるのでしょう。
役員報酬の生データで根拠ある支給額を
ここで強力な味方となるのが『中小企業の支給相場』です。
本書は全国の中小企業にアンケートを実施し、その結果を集計した貴重なデータ集です。
たんに役員報酬の支給平均額をまとめたような調査資料ではなく、個別企業の支給実態もそのまま掲載した生のデータ集です。
『中小企業の支給相場』アンケート回答企業の
- 業種
- 所在地
- 資本金
- 売上規模
- 支給対象者の役位
などを整理し、まとめています。
つまり前述の実質基準=役員の職務内容や会社の業績、あるいは同業他社の支給相場を参照できるデータ集なのです。
中小企業のデータはなかなか世に出てこないものです。
その点、本書には中小企業の役員報酬の実支給額のデータが収められていますので、税務調査での根拠資料に最適です。
もちろん、役員報酬額を決める際にも参照すべき資料となるでしょう。
税務調査で役員報酬が過大であると認められた場合、過大な部分が損金算入できないだけでなく、追徴課税等のペナルティも発生します。
本書『中小企業の支給相場』を活用して、適切な役員報酬額を決定しましょう。