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仕事で落ち込んでもモヤモヤしない効果的な悩み方

グルグル思考から抜け出そう!

「効果的な悩み方ってなんだ?」
「そもそも悩みたくないんですけど?」
そんなふうに思う人もいるかもしれません。

しかし、仕事をしていれば誰でもミスすることがありますし、ときには上司やお客さまに叱られたり、できない自分にガッカリしたりすることもあります。
成長意欲が強かったり、自分なりのこだわりを持っていたりするからこそ悩むことだってあります。
悩むのは成長のために必要なことでもあるのです。

とはいえ、いつまでも自分を責めたり、落ち込んだりしてしまうとつらいですよね。
すでに起こってしまったことを後悔し続けても仕事のパフォーマンスは上がりませんし、健康や幸せを損なうようなことになれば本末転倒です。

じつは悩み方にも効果的な悩み方と悪循環になる悩み方があります。

仕事がうまくいかないときや落ち込んだとき、気持ちをすぐ切り替えられるようにするにはどうしたらよいでしょうか。
このコラムでは、その違いを解説していきます。

効果的な悩み方と悪循環になる悩み方

悩んでも変えられないもの、悩んで変えられるもの

効果的な悩み方では、変えられないものは受け入れて、変えられるものだけに集中します。自分で変えられるものを解決することで悩みを解消するわけです。

一方、悪循環になる悩み方だと、変えられないものを考え続け、グルグルと同じことを思い悩んでしまいます。自分の力の及ばないものはどうやったって変わりませんから堂々巡りをしてしまうんですね。

なお、ここでいう「変えられないもの」「変えられるもの」とは下表のようなものを指します。

変えられないもの すぐに変えられるもの 長期的には変えられるもの
・すでに起こってしまった過去の事実
・気質、性別、年齢、生まれた環境など持って生まれたもの
・感情
・他人

・行動

・考え方

・能力
・価値観
・習慣
・無意識の行動や考え

※変えられるもののなかにも、自分が変えたいものと変えたくないものがあります。

すぐに変えられるのは、その時々の行動や考え方です。
能力や価値観、習慣なども変えていくことはできますが、時間がかかります。

仕事でミスしたときの効果的な悩み方

たとえば、タスクを書いた付箋をパソコンの画面に貼り付けていたのに、いつの間にかはがれていて、やるべきことを忘れてしまっていたとします。
このとき「なんで付箋がなくなっちゃったんだー!ちゃんと貼っておいたのに……」とすでに起こってしまった出来事をグルグル考え続けても事態は変えられません。
過去は変えられないのですから、いくら過去を悩んだところで悩みは晴れないのです。

変えられない事実は受け入れて、変えられる行動や考え方をどう変えていくかを悩んでいく方が効果的です。

この場合であれば、付箋ではなくタスク管理専用のホワイトボードで管理するとか、タスク管理のアプリを使うとか、より確実に管理ができる仕組みを作っていけば同じミスを繰り返すことがなくなるでしょう。
やり方がわからなければ、まずはネットや本で調べたり、タスク管理の上手な人にやり方を尋ねたり、そんな行動から始めてみましょう。

ただし注意していただきたいのは、同じミスを繰り返さないための対策として「次は忘れないように気を付ける」というのは、効果的ではないということです。
なぜなら「忘れっぽい」という習慣はすぐには変えられないので、「気を付けよう」と思うだけでは次も同じように忘れてしまうからです。
あくまでも「こうしたら改善できるんじゃないかな」と期待できるような具体的な行動や考え方を取り入れるよう心掛けてみてください。

自分の性格や感情は変えられる?

ところで「性格は変えられますか?」とよく聞かれます。
「性格」という言葉は人によって捉え方がずいぶん違いますので、「性格」をどう捉えるかによって変えられるともいえるし、変えられないともいえます。

たとえば、いろんなことによく気がつく繊細な感受性というのは持って生まれた要素が強い気質ですから変えられません。
しかし、その感受性で感じとったことを自分に関係ないことまで「自分が何とかしなければ」と引き受けすぎてしまう習慣や考え方は変えていくことができます。

内向的な人・外向的な人は何を変えればよいか

また、内向的/外向的という特性も持って生まれた要素が強く変えられません。

たとえば、内向的で人前で話すのが苦手という方の場合、内向的な特性を変えようとするのではなく、プレゼンスキルを学んだり、わかりやすい資料を作ったりする方が効果的です。
内向的な方は高い集中力で黙々と作業することができ、ひとつの物事を納得いくまで突き詰めて考えられる人もたくさんいます。

こういった内向的な方もスキルを学んで場数を踏めば、丁寧でわかりやすいプレゼンができるようになります。

そのように落ち着いてプレゼンをしている内向的な人を見ると、外向的な性格に変わったように見えることもありますが、スキルが身についただけで特性は変わっていません。
本人からしてみれば、内心では緊張していることが多いものです。

しかし、適度な緊張はマイナスではなくパフォーマンスをアップさせてもくれます。
内向的な性格の方であってもスキルを身につければ、緊張をも味方につけて集中した良いプレゼンをすることができるのです。

逆に外向的な方は長時間、人と関わらずに一人でデスクワークするようなことが苦手です。
これも持って生まれた特性ですから変えるのは難しいことです。
ずっと一人で黙々とやろうとするのではなく、同僚と意見交換をしたり、上司に計画を報告して意見をもらったり、人と接することでエネルギーが得られ、モチベーションが高まるという自分の特性を活かした仕事の進め方を組み立てていくのがいいでしょう。

また、外向的な方は人のためにエネルギーを費やすので、自分が処理できる以上の仕事を引き受けて燃え尽きてしまうこともあります。
その一方で一生懸命になるあまり、ミーティングで他の人に話す機会を与えないこともあります。
仕事でつまずくことがあったら、ときどき物事を俯瞰して見る習慣を身につけていくとよいでしょう。
やりすぎているときにそっと教えてくれる同僚や仲間を持つのも効果的です。

このように内向的であれ外向的であれ、その特性ならではの悩みを抱えるものです。
そんなときは持って生まれた特性を変えようとするのではなく、それを活かしてパフォーマンスが上がるようにやり方を考えるとか、それぞれの特性に応じたスキルを身につけていく方が効果的です。

落ち込んだときの感情も直接は変えられない

感情も直接は変えられません。
仕事でミスして落ち込んでいるときに「落ち込んじゃダメだ」と言い聞かせてもモヤモヤは晴れません。
それどころか、変えられない感情を変えようとすることで同じことをグルグルと悩み続け、ますます落ち込んだ気分から抜けられない悪循環に陥ってしまいます。

こうした感情も、考え方や行動を変えることで間接的に変えることができます。
ネガティブな感情は否定するよりも、考え方を変えて「そういう感情もあるよ」と受け入れる方が早く消化できます。

落ち込んでいるときに人から「いつまでも落ち込んでいちゃダメだよ」と言われるよりも、「誰だって落ち込むこともあるよ。そりゃショックだよね」と共感してもらった方が気持ちを早く切り替えられたという方も多いのではないでしょうか。
あるいは「落ち込むのをやめよう」と自分に言い聞かせるくらいなら、「落ち込むこともあるよ。そのうち忘れるだろう」と思った方が気持ちを早く切り替えられます。

別の仕事で忙しくしているうちにいつの間にか気が紛れていることだって、よくあることです。
変えられない感情にとらわれず、変えられる行動や考え方に集中していきましょう。

価値観や習慣は時間をかけて変える

行動や考え方は意識すればすぐに変えられますが、能力、価値観、習慣などは変えていくのに時間がかかります。
それらは何度も繰り返して行動や考え方を変えていくことで少しずつ変えていくことができます。

長年の考え方のクセや習慣はすぐには変えられません。
当初は「変えられることを変えて悩みを解決しよう」と思っていたとしても、次にうまくいかないことがあったときには、また変えられない事実をグルグル考え続けてしまう悪循環な悩み方をしてしまうことでしょう。

効果的に悩むスキルも、やり方がわかっただけで最初から身につくものではありません。
スポーツや楽器の練習と同じく反復練習で備わるスキルなのです。

最低3か月は、意識して繰り返していきましょう。効果的な悩み方の行動パターンがだんだん習慣になって、無意識にできるように変わっていきます。
この時間経過を把握しておかないと、すぐに変わると期待して変わらない自分にガッカリしてしまいます。
「時間がかかるものだ」と最初から思っておけば焦ることはありませんね。

無理に変えても悩みは晴れない

変えたいかどうかという自分の気持ちが大事

変えられることだからといって、なにがなんでも変えなければならないわけではありません。
どんな習慣や価値観、考え方を持っているかは、その人の自由です。唯一の正解があるわけではありませんから、変えたいかどうかという自分の気持ちの方が大事です。

私が20代の頃、仕事の提案がうまく通らなかったことがありました。
そのとき「ご縁がなかったな。仕方がないか」と、あっさりあきらめようとしていたら、先輩から「え?その反応ならじゅうぶん、相手の方は興味を持ってくださっていると思うよ。あきらめずに修正してまた提案すればまだまだ可能性はあると思うよ」と教えてもらいました。
まだチャンスがあるのか!と嬉しくなりました。

しかし、先輩が続けて「ダメって言われてから毎日のように相手に連絡してうまくいった人もいるよ」とおっしゃったのを聞いて意気消沈。
「うわー、毎日連絡するとか無理だわ……」と一気に気持ちがしぼんでしまったのです。

「いやー私、そんなガンガン行けるタイプじゃないからどうですかねぇ……」と、もごもご言っていたら、先輩は慌てて

「いやいや、なにもあなたに無理して毎日先方に連絡しろって言いたいわけじゃないよ。こういう人もいるくらいなんだから、1回であきらめなくていいって励ましたかっただけ。あなたがもし自分でも先方の要望通り修正したいと思うなら修正すればいいし、修正案ができたタイミングで、3か月後でも半年後でももう一度提案してOK!という意味だよ」

と丁寧に説明してくださいました。

「あ!それならできそうだし、やりたい!」と、気持ちが明るくなりました(気持ちの振り幅大きすぎてしんどい……笑)。

このとき、私は先輩から「もっとガンガン行けるような人にならないとダメだよ」などとはまったく言われていません。また、自分でも「ガンガン行けるような人になりたい」と思っていたわけでもありません。
それなのに、人の事例を聞いて勝手に「私もガンガン行けるような人にならなければならないということか!」と思い込んでしまいました。

先輩がそんな私に気付いて丁寧に説明してくださったので、悪循環に陥らずに済みました。
先輩のフォローがなければ「がんばってしつこく連絡入れなきゃ!」とアクセルを踏み、同時に「いや、でもそんなの無理。しんどすぎる……」とブレーキを踏み、モヤモヤを抱えたまま悪循環な悩み方を続けてしまっていたかもしれません。

悩みを解決するやり方はひとつではない

このように私の体験談でいうと「毎日連絡する」というのは行動なので変えられることです。
しかしながら、持って生まれた気質によってそれが簡単にできる人もいれば、すごくエネルギーを使う人もいます。

同じ山頂を目指すにしても、ルートはいろいろあります。
唯一の正解があるわけではありません。自分に合ったやり方を選んでいきたいですね。

そもそも変えられるということは、変えたければ変えられる可能性がありますよという意味であって、変えなければならないということではありません。
変えたいかどうかという自分の気持ち、そして今の自分の能力でできることなのか、どのくらいの難易度なのか、自分の気質に合っていることなのかという見極めも大事です。

私のように人の言動に影響されやすい人は特に、悩んだときには「自分はどうしたいのかな?」と自分の気持ちを点検するクセをつけていくとよいでしょう。

他人の言動に悩むときも自分の考え方から変えてみる

行動や考え方を変えられるといっても、それは自分の行動であって、他人の行動や言動を変えることはできません。

職場の同僚や先輩など他人の言動でしんどいと思い悩むときは、相手を変えようとするよりも、自分がその人との距離感や付き合い方を変える方が効果的です。
いろんな考え方や感じ方があっていいのですから、どちらが正しいかを無理に決める必要もありません。

たとえば相手に「そういうふうに言うのはやめて」と自分の気持ちやリクエストを伝えることはできます。
ですが、それで相手の言動を100%コントロールすることはできません。

「もうやめて」と言ってもしつこく続けてくるような人がいたとして、「なぜこの人はやめてと言っているのにまた同じことをするのか?」と、変えられない相手の言動を悩んでもモヤモヤが残るばかりです。
「なぜ私はイヤなことをしつこく言い続けてくる人のそばを離れようとしないんだろう?」という自分の言動を振り返ったほうがいいでしょう。

だからといって「もう金輪際付き合わない!」などと極端に走る必要はありません。
一緒にランチに行くのはしばらくやめようとか、仕事上の付き合いだけにしておこうとか、自分が心地いい距離感を選べばいいのです。
他人を変えようとするより自分が幸せになることを考えましょう。

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

変えられないものは受け入れ、変えたくないものは「これでいいんだ」と自分を認め、変えられるもののうち自分が変えたいものだけを「どうしていこうかな?」と考えていきましょう。

変えられることだけに集中して1ミリずつでも修正していけば、その1ミリが1か月後、半年後、そして1年後には大きな違いになっています。

常光瑞穂 氏(コンセプトデザイナー、心理コンサルタント)

株式会社ライフキャリアサポート代表取締役。工学修士および心理学修士。
「人生は自分でデザインし創りあげていく」をコンセプトに、経営者・ビジネスパーソンのライフキャリアデザイン(人生設計)をサポート。デザイン(設計)と心理学を融合させたコンテンツはわかりやすく実践的。広く一般に流行するためのコンセプトデザインではなく、個人や小規模組織が「自分らしく幸せ」をかなえるためのオリジナルな生き方・ビジネスやチームの在り方をデザインから実践までサポートをすることを得意とする。

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