ビジネスパーソンのための自己肯定感の高め方
ありのままの自分を受け入れ、幸せなキャリアを描く!世の中には自分が望むライフスタイルで無理なく成果を出し、公私ともに幸せを実現している方がいます。
他方、一生懸命頑張っているのに今ひとつ成果につながらない方や、成果が出ていてもプレッシャーや不安がまさって、あまり喜べないという方もいます。
スキルや能力が同じようにあっても、なぜこんな違いが現れるのでしょうか。
その違いに大きく影響するのが「自己肯定感」です。
皆さんも「自己肯定感が大事!」「自己肯定感を高めよう!」という言葉を耳にしたことがありませんか。
なんとなく大事であることはわかります。
ですが「そもそも自己肯定感って何?」「どうすれば高まるの?」という基本のところがなかなか理解されずにいます。
そのため言葉だけが独り歩きして、誤解から逆効果や悪循環に陥っている方もとても多いのが実情です。
この記事では、自己肯定感を高めることで、自分の望む公私ともに幸せなキャリアビジョンやライフスタイルを無理なく構築していくコツをお伝えしていきます。
目次
自己肯定感とは何か?
自己肯定感とは、文字通り「自分で自分を肯定する感覚」です。
自己肯定感が高い状態というのは、何かができたかどうか、できるかどうかという能力や成果にかかわらず、「ありのままの今の自分に存在価値がある」「自分は自分でいい」と感じられている状態です。
自己肯定感とは「自分を好きになること」だと思っている方も多いのですが、無理にいいところを見つけて好きになろうとする必要はありません。
自分の「こういうところちょっと嫌だな」と思うところも含めて「ま、こんな自分もそれでいいか」と受け入れている状態が自己肯定感の高い状態です。
自己肯定を続けていくと結果的に「自分を好きになりました」という方が多いのですが、自分を好きにならなければいけないというわけではありません。
また、ここでいう自己肯定感の高低という指標は、人と比較しての高低ではありません。
あくまで自分のなかでの高いとき、低いときと捉えましょう。
人生にはいろんなことが起こります。
「あのときもっと頑張っていたら……」と後悔の念が強くなるときなど、「ありのままの自分でいい」と心から思えない瞬間は、誰にでもあります。
自己肯定感の高低は不動の絶対的指標ではなく、日によっても状況によっても揺らいでいくものです。
「自己肯定感が高い人は悩まない!いつもポジティブ!」のように誤ったイメージを持たないでください。
「悩まない人にならなければならない」という非現実的精神論で、空回りや逆効果になることもありますので気をつけましょう。
短期的な高低にこだわったり、振り回されたりしないことが大切です。
自己肯定感と自己効力感
自己肯定感と混同されやすいものに自己効力感があります。
自己効力感とは「自分にできる、できそうだ」という感覚のことです。
たとえばこれまで携わってきた仕事について「この分野のことならある程度わかる」と自信を持っていられる状態は、自己効力感が高い状態です。
すぐにはわからないこと、できないことがあったとしても、「調べたらできるだろう」とこれからの可能性を含めて自信を持っている状態も含まれます。
自己肯定感も自己効力感も、どちらも「自信」と言い換えられます。
そのため両者は混同されやすいのですが、まったく別の概念です。
たとえば、なにか新しい分野について学び始めるとき、初めからその分野の知識を持っている人はいません。
この場合、自己肯定感のある人は、「知識のない今の自分もそれでいい」と、現状のありのままの自分を認め、受け入れます。
自己効力感のある人は「知識がないといってもまったく知らないわけではなくこの部分はわかっている」とか「さらに勉強すればもっとできるようになるだろう」と自分の能力やスキルについて、「できる/できそう」と考えます。
自己効力感も、時と場合に応じて高くなったり低くなったりします。
たとえば、ある分野で「自分はできる」と自信を持っていても、もっと能力の高い集団のなかに行けば「自分の能力なんてたかが知れている。井の中の蛙だったな……」と気づくことがあります。
このような経験も成長のためには不可欠ですが、自己肯定感が低いと「できない自分はダメだ」と落ち込んで成長意欲がなくなってしまいます。
自己肯定感が高いと「自分の能力はこの程度だったのか。もっとすごい人はいくらでもいる」と客観的な自己評価を修正しながら、「今のありのままの自分もOK」と肯定することができます。
そうして井の中の蛙であったという気づきが、「もっともっと学べることがあるんだ!」と嬉しくワクワクする体験に変わります。
自分を卑下せずに能力の高い周りの人たちからも学ぶことができ、さらにスキルアップをはかることができます。
短期的な成果をあせらず、まずは土台をしっかり育てよう
自己肯定感は成果にかかわらず「自分は自分でいいんだ」とありのままの自分を日々受け入れることで高まります。
他方、自己効力感は実際に何かがうまくいったり、できるようになったりする成功体験で高まります。
また、自分の成功だけではなく、自分以外の人が成功することでも「私にもできそう」と自己効力感が高まります。
たとえば、スポーツ選手が結果を出したのを見て、「私も頑張ろう!やればできる!」と勇気をもらったことがある人は多いでしょう。
両者の関係を木に例えると、自己肯定感は根や幹、自己効力感は枝葉や実の部分といえます。
ベースとなるのは自己肯定感です。
深くはった根やしっかりとした幹という土台があるからこそ、枝葉を生い茂らせ、実をつけることができるのです。
自己肯定感と自己効力感を混同してしまうと、「ありのままの自分でいい」という自己肯定感を、「うまくできた」という成功体験で高めようとしてしまいます。
これはひょろひょろの弱々しい幹に無理やり枝葉を茂らせ実をつけようとするような状態です。
短期的には成果を出せても「いつかメッキがはがれるのでは?」「次に失敗したら先はない」と、プレッシャーで苦しくなることがあります。
「『できる!』と自分に言い聞かせよう、そうすれば夢はかなう」という手法があります。
ですが、これがうまくいくためには、土台となる自己肯定感が必要です。
「きっとできる」と自分に言い聞かせたときに、自然と「うん、やればできるよ!」と心から思えて勇気がわいて、無理なく行動に移せる場合には大丈夫でしょう。
問題なのは、言い聞かせているだけでピンとこないとか、言い聞かせれば言い聞かせるほど「ほんとにできるのかな?」と疑いや不安な気持ちが出てくるという場合です。
まずは「やればできる!」と自己効力感を持とうとするよりも、「できてもできなくてもOK」と自己肯定感を育てていきましょう。
そのうえで「経験を積めばさらにできるようになるだろう」という自己効力感を持ち、夢や目標に向かっていく。
そうして成功体験を得られたら、また自己効力感が高まるという好循環を生み出すことが効果的です。
自己肯定感に対するよくある誤解
「できない自分もOKと認めてしまったら、努力できなくなる」と心配する方もいらっしゃいますが、これは誤解です。
「できない今の自分もOK」と認めることは、「未来永劫できないままでOK」と今後の成長をあきらめることとはまったく違うからです。
それがあなたの夢や目標のために必要なことであれば、「できない今の自分もOK」と認めたうえで、「3か月後までに知識とスキルを身につけよう」と自分のペースで努力して成長していけばいいのです。
自己肯定感が低いと、「できないとダメだ!」と能力と自分の存在価値を結びつけて自己否定してしまいます。
これはとてもつらい状態なので、なんとかしようと一時的には頑張れます。
「できたらうれしい」という目標よりも「できなければダメだ」という目標の方が、インパクトが強いので短期的には成果が出やすいからです。
しかし、このやり方ではなにかひとつ目標をクリアしても「次はこれもできるようにならなければ!」と次のダメ出しポイントを見つけて、常に自分を追い込み続けることになります。
それでは、回し車に乗るハムスターのように終わりがありません。
このようなやり方では成果は短期的・限定的で、長期的にみると長持ちしません。
「実をたくさんつけなければ!」と無理に自分を追い込んで、ひょろひょろの弱い根や幹に無理やり枝葉や実をつけてきたら、どこかで限界が来てしまうのは自然なことでしょう。
寿命が短い時代ならそれでもよかったのかもしれませんが、今や人生は100年以上続く長距離耐久レース。
ひたすら自分を追い込んで先行逃げ切りという戦略はかなり厳しいでしょう。
あせらずじっくり、自己肯定という根を深くはり、太い幹を育てていく方が、自然で持続可能な成長につながります。
根と幹がしっかりしていれば、そこから興味関心という枝葉をたくさん伸ばすことができます。その結果、無理なく自然にたくさんの実をつけることができます。
自己肯定感の高め方
では、自己肯定感を高めるためには、どうしたらいいのでしょうか。
自己肯定感を高めるには、何かができたかどうかという自分の能力やスキルと、自分の存在価値を結びつけずに、切り離して考えることが大切です。
これは、他人に対してはできるのに、自分に対してはできない人が多いようです。
たとえば友人が何かに失敗して「こんなこともできないなんて自分には存在価値がない」と落ち込んでいたら、どう声をかけますか。
「本当だね。そんなこともできないなんて存在価値ないね」とは言わないし、思いもしないでしょう。
「チャレンジしたこと自体がすごいよ」とか、「最初からうまくいかないのは当たり前だよ。それとあなたの価値は関係ないよ」などと言うのではないでしょうか。
人の存在価値は労働力や仕事の成果、こなせる情報処理の量や正確さで決まるものではありません。
たとえば、将棋は人間よりAIの方が強くなったのだからといって、プロ棋士は必要ないのでしょうか。
むしろ、AIが登場してから将棋がさらに面白くなったと感じる方も多いのではありませんか。
プロ棋士の方々はAIを使って研究を重ね、体力的にも思考力という面でもこれまでの限界や常識を超えて挑戦し続け、将棋の新たな可能性を切り開いています。
そのようなプロ棋士の姿から、私たちは挑戦の素晴らしさや人間の可能性を感じることができるのです。
自己否定のメカニズムと書き換え方
人間の脳には、これまでの人生経験によって、さまざまなプログラムが組まれています。
何かがうまくいかなかったときに「こんなこともできないなんて自分はダメだ!」と無意識に自己否定の言葉が浮かんできたとします。
そのときは成果と存在価値を結びつけて自己否定をするプログラムが無意識に作動しています。
そこに気づいて、自己肯定のプログラムに書き換えていきましょう。
プログラムを書き換えるには、自己肯定の言葉を繰り返しインプットすることが必要です。
自己肯定の言葉を繰り返し自分にかけてください。
このとき、頭のなかで思うだけではなく、紙に書き出したり、声に出して言ったり、五感を使ってインプットすることが効果的です。
「できたかどうかと人の価値は関係ないよ」
「まずは挑戦したこと自体を認めよう」
「最初からうまくいかなくてもOKだよ」
「全部がダメじゃない。この部分はうまくいってるよ」
など、他人に対して言ってあげるように、自分に対してもありのままの今の自分を肯定する言葉をかけてあげます。
最初は難しいかもしれませんが、何度も何度も繰り返し自分にインプットしてください。
徐々に頭のなかのプログラムを自己否定から自己肯定に変えていくことができます。
最低3か月は地道にコツコツとインプットを続けることが必要です。
自己肯定感の低い状態で起こること
実は、自己肯定感が低い状態というのは、自分に対するハードルがものすごく高い状態でもあります。
「こんな成果を出したら自分を認められる」「こんな状態になれたら自分にOKを出せる」という合格基準がものすごく高いのです。
「99点だったらダメ、100点でようやくOK」と思っている状態だったりします。
しかも100点を取っても満足するのは一瞬だけ。
「次も100点取らなきゃ」と脳内ですぐにまた次の試合が始まってしまうのです。
なぜ、わざわざそんなハイレベルな戦いを自分に仕掛けているのでしょうか。
それは、現状のありのままの自分ではダメだと思っているからです。
だから、「早く自分を変えなければダメだ!」と非現実的な高い目標を設定してしまうのです。
一発逆転で完璧な自分になることで自分を認めようとしているのです。
しかし、非現実的な高い目標をクリアできる可能性はほぼありません。
一瞬クリアできることはあったとしても、一生クリアし続けることは不可能です。
このようなやり方では自己肯定感がどんどん下がってしまいます。
日々の積み重ねが自己肯定感を高める
以前、私のクライアントがこんなふうにおっしゃっていました。
以前は、自分に対する最初のハードルがものすごく高かったのに、そのことにも気づいていませんでした。
「このくらいできて当たり前。みんなやってる」と思い込んで自分を追い込んで、目標に向かうために壁のような高いハードルをわざわざ自分で作って、「越えられない、できない」と思っていました。
実際には壁を越えるどころか体当たりしていただけなんですよね。
今振り返ると、「そりゃあ、生きにくいわ」とツッコミどころ満載で笑ってしまいます。
なにか輝かしい実績を作らなければ!と縛られてあせっていたんですよね。
今は「できてもできなくても今の自分でOK」とありのままの自分を認めることで、だんだんそのハードルを下げられるようになりました。
壁は小さなステップの階段になり、小さな一歩を毎日コツコツ無理なく上がっていくことができ、やりたいことが少しずつでも着実にできるようになりました。
日々、充実感があります。人から見ての輝かしい実績ではなく、自分のやりたいことをやるようにもなりました。
1日1日は少しずつでも、振り返ると1か月や半年でずいぶん自分が変わっていることに気づいて驚きます。
「成果を出せなくてはダメだ!」とあせっている方が苦しいわりに成果が出にくく、「今のままでもOK」とありのままを認め、受け入れている方がラクで着実に成果が出るというのは逆説的で不思議な感じがするかもしれません。
でも、そのメカニズムがわかれば当たり前のことと納得できるのではないでしょうか。
自己肯定感を高めることは、無理に自分を好きになろうとすることや、常にポジティブでいようとすることではありません。
現状をありのまま正しく理解し、それを受け入れ、そのうえで自分の得たい未来に向けて、日々少しずつの成長を積み重ねて実現させていく。
それが着実で王道の方法なのです。
幸せなキャリアビジョンをかなえるために
技術革新が進み、人間よりも機械やAIの方が早く正確にできることが増えてきました。
この流れは今後ますます加速するでしょう。
「何ができるか」という成果や能力だけで自分の存在価値をはかっていると、これからの時代は精神的にますます苦しくなります。
ありのままの自分を肯定する自己肯定体質に変えていくことで、長期的視野で着実に自分を成長させることができます。
自分らしく幸せなライフスタイルやキャリアビジョンをかなえていきましょう。
株式会社ライフキャリアサポート代表取締役。工学修士および心理学修士。
「人生は自分でデザインし創りあげていく」をコンセプトに、経営者・ビジネスパーソンのライフキャリアデザイン(人生設計)をサポート。デザイン(設計)と心理学を融合させたコンテンツはわかりやすく実践的。広く一般に流行するためのコンセプトデザインではなく、個人や小規模組織が「自分らしく幸せ」をかなえるためのオリジナルな生き方・ビジネスやチームの在り方をデザインから実践までサポートをすることを得意とする。