「ステーキを売るな、シズルを売れ!」ホイラーの公式って何ですか?
セールスするのに必要な5つの鉄則!セールスの歴史上、体系的にまとめられたセールス関連本として世界初のベストセラーであり、今なお世界中で読み継がれているものといえば、エルマー・ホイラーの『ステーキを売るな、シズルを売れ』です。
本書のなかでもとくに「シズル」は今もそれだけで使われるほど有名な言葉です。
本書で語られるのは、モノを売るには欠かせない5つの公式。
では、どんな公式が述べられているのでしょうか。
先生には以前、ホイラーの公式について教えてもらいましたよね
ええ、ほんの少しだけでしたが
あとで知ったんですけど、公式は全部で5つあるっていうじゃないですか
そうですね
先生、出し惜しみしましたね……
う~ん、今回はそういうアプローチですか
「ホイラーの公式」というのはセールスに関する公式です。
アメリカの営業コンサルタントであるエルマー・ホイラー(1903-1968)が提唱しました。
セールスについて10万を超えるフレーズを集め、1900万にのぼる消費者で効果を検証した結果を踏まえ、そのエッセンスを5つに絞り込んだんですね。
もっとも有名な公式が「ステーキを売るな、シズルを売れ!」です。
このフレーズだけ取り上げられることもありますが、ホイラーの公式には他に4つあります。
では、最初にホイラーの公式5つをすべて挙げてみましょう。
■ホイラーの公式- ステーキを売るな、シズルを売れ!
- 手紙を書くな、電報を打て!
- 花を添えて言え!
- もしもと聞くな、どちらと聞け!
- 吠え声に気をつけろ!
手紙か電報のどちらにする?って聞かれたから、フラワー電報でシズルを売り込むことにするんだワン!
全部、詰め込んでしまいましたね
ちゃんと説明しますから、落ち着いて聞いてください
かしこまりましたワン!
目次
ホイラーの5つの公式
ステーキを売るな、シズルを売れ!
そもそもシズルってなんでしょう。
シズル(sizzle)というのは、肉がジュージュー焼ける音を表す英語の擬音語です。
ということは、ステーキそのものを売ろうとするのではなく、そのステーキが焼ける音を売れ!ということになりますね。
買う方も小銭のじゃらじゃら鳴る音で支払うんですね
とんち比べをしたいわけではないのですよ
ステーキの焼ける音って食欲をそそりますよね。食べる前からおいしそうに思えてきます。
このように商品そのものではなく、食べたいな、ほしいなという欲求を誘うフレーズや情報をアピールすることが大事なのです。
ステーキだけに限りません。
ウナギのかば焼きのにおいにつられて店に入ってしまうとか、ビールをグラスに注いだときの泡立ちを見てのどを鳴らすとか……、あれが「シズル」の効果です。
五感を刺激する、つまりお客様の琴線に触れるのはいったいどこなのか。
それを見極めてアピールしようということですね。
手紙を書くな、電報を打て!
公式の2番目が「手紙を書くな、電報を打て!」です。
これからはスマホよりも電報の時代ですね!
その電報も今やスマホから送れる時代なのですが……
それはさておき、電報を打つ機会も減りましたが、イメージはおわかりでしょう。
手紙を書くように長々と説明するのではなく、電報のように簡潔にメッセージを伝えましょう、ということです。
ホイラーいわく「最初の10語はそれに続く1万語よりも重要だ!」とのことです。
また、お客様は最初の10秒で評価を決めてしまうともいいます。
だからこそ最初は電報のように簡潔に伝えることが、お客さまをひきつけるコツなのですね。
たとえシズルであっても、くどくど聞かされるとウンザリしますよね
ジュージュー焼きすぎるとステーキも焦げてしまいますし、食べる前から胸焼けしそうですもんね
そういう意味ではないのですが、おそらくそういう意味であっています
花を添えて言え!
「論より証拠」という言葉があります。
それと同じように、なにかを伝えるときには花=証拠となるものを添えて伝えましょう。
たとえば、実演販売などは「花を添えて言う」最たるものかもしれませんね。
ホイラーの公式その2で説明したように、短い電報で伝えます。
このとき、証拠となる花を添え、身振り手振りでデモンストレーションすることが大きな効果を生むのです。
恋人にプロポーズするときも言葉だけで伝えるのではなく、花束を添えてプロポーズすると、もっと気持ちが伝わるものでしょう。
「花を添えて言え!」というのは、そのようなイメージで考えるとわかりやすいでしょうか。
愛の告白に花を贈られたら、うれしいでしょう?
もちろん気持ちはうれしいんですよ。
でもドラクンクルスやオオバナサイカクをもらうのはちょっと……
どうして悪臭で有名な花しか贈られないのですか?
もしもと聞くな、どちらと聞け
「もしも~~なら」という聞き方よりも「AとBのどちらにしますか?」といった二者択一式の投げかけが効果的だということです。
もしもし奈良(なら)県の人ですか?
これまた懐かしいネタをご存じですね
セールスというのは往々にして、(最初は)ほしいと思っていないものを売り込むので、たんに「買いますか?」という投げかけではNo!を誘発してしまいます。
したがって、購入というゴールに向けてたくみに誘導する質問が必要なわけです。
そのために有効なのが「どちらにしますか?」という質問なのです。
「Yes or No?」ではなく「A or B?」ということですね。
ホイラー自身が経験したという事例を見てみましょう。
ホイラーが新しい事務所を探しているときのことです。
窓からきれいな景色の見える物件をいくつか見てまわったあと、不動産屋から「どちらの景色の方がお好きですか?」と聞かれました。
そこでホイラーが「こちらの景色の方が好きだ」と答えたところ、不動産屋は「では、この部屋にするといたしまして……」と言って話を進めていきます。
ここにいたって、ごく自然に契約手前まで話が進んだことにホイラーは気づかされたのです。
誘導尋問というと聞こえが悪いかもしれませんが、自然な流れで次のステップへ商談を進ませるのには「あれかこれか」という質問が効果的だということですね。
吠え声に気をつけろ!
ウ~、ワンワン
グルルルル
キャンキャン!
ワォーーーン!!!
今夜は満月……。
先生がシェットランド・シープドッグに!
どうして犬種限定なのですか。そもそも狼男でもありませんよ
とかく犬の鳴き声はいろんなことを表現しています。
言葉は通じなくても、その吠え方でさまざまなことを感じ取れますよね。
セールスも同じです。
これまで紹介したホイラーの公式1~4を適切に使えたとしても、一本調子で話すのでは効果も期待できません。
言葉に抑揚をつけながら感情豊かに話すことで、お客様に伝わるようになるのです。
チラシひとつとっても、本当に伝えたいところは文字が大きくなったりしていますよね。
これがすべて同じ大きさ・色・フォントを使っていたらどうでしょうか。
何をアピールしたいチラシなのか、わからなくなると思いませんか。
それを伝えるために、わざわさシェットランド・シープドッグになったんですか
いや、だから犬種を限定しているわけでは
まとめ
以上がエルマー・ホイラーが掲げる5つの公式です。
セールスにおいては基本的かつ古典的な内容なので目新しさを感じないかもしれません。
ですが、それだけに常識として押さえるべき内容だといえるかもしれませんね。
「この広告にはシズル感がない」のような言い方はいまでもよく見かけますよ。
紹介されている事例はさすがに古めかしく見えるかもしれませんが、『ステーキを売るな、シズルを売れ』が古典的名著として読み継がれていることには間違いありません。
お客様にものを伝えるにはどうすればよいのか、それをしっかり学べることでしょう。
だからこそ今もエルマー・ホイラーの名が広く知れ渡っているのです
そういえば、わたしもエルマーはたくさん読んでました!
たしかにそちらも広く知られていますけれども
おまけ:「もしも」と聞いてはダメですか?
「もしも」って聞いたらダメなんですか?
ん?
「もしも買うなら、AとBのどちらですか」って聞いた場合はどうなるんですか
そういうことですか。ここからは断言できませんが……
ホイラーの公式「もしもと聞くな、どちらと聞け」は日本語に訳すといささか奇妙に思えるかもしれません。「もしも~なら」の後が不明瞭ですから。
この点、原文に当たると、Don’t Ask If, Ask Which! のようです。
文法上、正確なことは言えませんが、ask if 構文はイエスかノーを聞く質問に使います。
たとえば、こんな文章です。
I asked her if she bought the book.
「わたしは彼女にその本を買ったかどうか尋ねた」
「~しましたか」という質問で、これはYesかNoで回答するものですよね。
じつは英語の文献もいくつか当たってみましたが、ホイラーの公式において
○Ask If:something と nothingとを選択させる質問
○Ask Which:something と somethingとを選択させる質問
と説明しているものばかりでした。
ですから「Yes or No?」ではなく「A or B?」と説明したのです。
実際、ホイラー自身も「買いますか、買いませんか?」ではなく「(買うとしたら)これですか、あれですか?」と聞くのだと言っていますしね。
少なくとも、選択式の質問をしようという点は間違いないでしょう
そういうことでしたか
皆さんはどう思われますか?
いったい、誰に聞いているんですか?