パソコンの消費電力を3割減らす省エネ術
日々の積み重ねで実現パソコンは、新しい機種ほど節電能力が高まっていますが、もうひと工夫することでさらなる省エネが期待できます。ここでは、省エネに効果的な考え方・使い方を紹介し、経費節減に貢献する方法を解説します。
いまや、全社員に1台ずつパソコン(PC)が支給され、始業から終業まで1日中使い続ける職場も珍しくありません。1台当りの電力消費はわずかでも、複数台で毎日の積み重ねとなると、その電気コストは無視できません。
本稿では、PCの設定や個人の心がけで3割の節電を目指す省エネ術を解説します。
目次
ピーク時は約4.5倍の電気料金に
省エネの基礎知識として、まずは電気料金についておさらいをしておきましょう。
「夜間は電気料金が安い」ということを耳にしたことがあるかと思いますが、電力会社は時間帯別に異なる電気料金を設定するプランを導入しています。
たとえば、東京電力が平成24年6月から導入した「ピークシフトプラン」もそのひとつです。
このプランは、電力量の料金単価を夏季(7~9月)は3つ、そのほかの期間(10~6月)は2つの時間帯に分けて設定したプランで、申請によって選択することができます(図表1)。
各時間帯の単価は図表1のとおりですが、夏季のピーク時(13時~16時)は単価が53.16円、一方、夜間は11.82円ですから、同じ電力量を使ってもピーク時は約4.5倍の電気コストがかかってしまいます。
PCや通信などIT関連にとどまらず、電気機器を使う作業のうち、時間を調整できるものはできるだけピーク時を避けて、夏季は午前中や夜間に、夏季以外なら夜間に行なうことで節電が可能になります。
ピークシフトに対応したPCを使う
最近では、電力会社が提供するピークシフトに対応したPCも登場しています。
ピークシフト機能をもったノートPCは、電気料金の安い夜間にバッテリーを充電し、日中やピーク時は自動的にバッテリー駆動に切り替えて、AC電源を使用しない設定が可能です。
NEC、東芝、パナソニック、ヒューレット・パッカード、富士通、レノボなど多くのメーカーのノートPCが対応しています。また、NECからはオプションで充電池を内蔵できるピークシフト対応のデスクトップPCも発売されています。
なお、使用中のノートPCがピークシフト機能に対応していなくても、ピークタイムの時間帯には手動でAC電源を切ってバッテリーで利用するようにすれば、電気料金が高い時間帯での稼働を防ぐことができます。
NECパーソナルコンピュータではLaVieシリーズ用などに「ピークシフト設定ツール」(ソフトウェア)の無償ダウンロードを提供しています。ピーク時を11~16時に設定した場合、バッテリー駆動で動作し、バッテリー残量がなくなったらAC駆動になり、16時までは充電をしない設定が可能です(図表2)。
節電の第一歩電気代を直接確認する
PCやプリンタなどIT機器は、どれくらいの電力を消費しているのでしょうか。
実際の消費電力は個々の製品や状態、節電設定等によってまちまちですが、「エコチェッカー」「ワットチェッカー」「ワットメーター」「エコキーパー」など電力量表示器と呼ばれる製品を使うと、オフィスや家庭でも消費電力を手軽に調べることができます。これらは家電販売店で3,000~6,000円程度で市販されています(写真)。
この機器をコンセントと電源プラグの間に設置することで、接続した電気製品の消費電力を調べることができ、電気料金(目安)を表示してくれます。
電力量ではピンとこなくても、金額がわかると、どの機器が電気をたくさん消費しているのかが具体的にイメージできます。
デスクトップPCはノートPCの約3倍を消費
一般的にデスクトップPCとノートPCはどれくらいの電力を消費し、どの程度の違いがあるのでしょうか。
2011年にマイクロソフト社が行なった実験結果(WindowsPC消費電力検証結果レポート)を参考に解説しましょう。
新しいPCのほうが消費電力が少ない
古いPCより新しいPCのほうが一般的に消費電力は低く抑えられています。
性能が向上しているにもかかわらず、ハードウェアの省電力化やWindowsやソフトウェアの設定によって節電性能も著しく向上しているからです。
デスクトップPCとノートPCともに、2010年製のWindows7搭載PCは、2006年製のWindowsXP搭載PCと比べ、消費電力が、5割以上減っていることがわかりました。
記憶装置にHDD(ハードディスク)を搭載したPCよりSSD(Solid State Drive)を使ったPCのほうが消費電力が少ないなど、ハードの構造やモデルによっても節電性能は異なります。
ノートPCはデスクトップPCより消費電力が少ない
Windows7搭載のデスクトップPC(20型ワイド液晶含む)の平均消費電力は46Wであるのに対して、ノートPCはわずか15Wでした(図表3)
Windows7のノートPCであればデスクトップPCのおよそ30%の電力だけで稼働するわけです。
また、2006年製WindowsXPのデスクトップPCからWindows7のノートPCに買い換えれば、消費電力はおよそ6分の1以下に減らせることになります。
ちょっとした工夫で3割の節電を目指す
次に、PCの使い方や設定で節電する方法を解説します。
離席時はスリープを使う、90分以上の離席ならシャットダウン
会議中や外出時など、PCの電源をつけたまま長時間離席するのは電力のムダ遣いです。
PCの電源を完全にオフにする「シャットダウン」か、PCの状態をメモリ等に保持したまま一時的に休止状態にする「スリープ」(WindowsXPではスタンバイ)機能を用いて節電をしましょう(図表4)。
通常、離席が90分以上ならシャットダウン、90分未満ならスリープを使うと効果的といわれています。
PCは電源投入時に多くの電力が流れ(突入電流と呼ばれます)、PCの起動時にもHDDの駆動、OSやソフトウェアの読み込み処理など、たくさんの電力を消費します。
シャットダウンは電源オフの間はほとんど電力を消費しませんが、PCの起動時に多くの電力を消費するので、頻繁に起動と終了を繰り返すと、逆に多くの電力が消費されてしまいます。
一方、スリープではPCが低消費電力状態になり、復帰も省電力で高速に行なえます。
ただし、スリープ状態のときにPCの電源をオフにしたり、停電(ノートPCならバッテリー残量ゼロ)になった場合は、作業途中のデータが失われることがありますので、大切なデータは保存してからスリープにするようにしましょう。
なお、WindowsVistaから「ハイブリッドスリープ」という機能が追加されています。
この機能はスリープ状態が長時間続いたり、バッテリー残量が少なくなったときに、スリープ状態のデータやアプリの状態をメモリからHDDに保存して電源をオフにする「休止」状態に自動的に移行します。
データが失われる心配がなく、思ったより長時間離席した場合の節電対策になります。
なお、最新のWindows8では「コネクテッド・スタンバイ」機能が追加されています。
これは、スリープ状態でもネットワークの接続状況を維持し、一定の間隔で送られてくるデータを受け取れる機能で、スリープ復帰時にネットからの通知や最新情報をすぐに確認することができます。
利便性を損なわず省エネを目指した機能といえます。
ディスプレイの輝度を下げて節電する
ディスプレイは比較的多くの電力を消費しますので、明るさを示す「輝度」を下げることで節電効果が得られます。
マイクロソフト社はディスプレイ単体で比較した場合、最も明るい輝度100%から40%に抑えることで約38%の節電になるとしています。
デザインや画像を専門に扱うなど、ディスプレイの輝度が作業の質に影響する場合を除き、一般の業務で使用するPCの輝度は抑えめに設定して使用することで節電できます。
Windows7のノートPCの場合、「コントロールパネル」→「電源オプション」で輝度の調整ができます。デスクトップPCは、ディスプレイ本体に輝度を調節するボタンが用意されていることがほとんどです。
電源オプションで節電設定
Windowsでは、一定時間、操作がない場合に「自動的にディスプレイの電源を切る」「ハードディスクの動作を止める」「スリープモードに移行する」など様々な節電設定が用意されています。
たとえば図表5は、20分経過後にディスプレイをオフにしてハードディスクも停止、30分操作がない場合に「スリープ」状態に移行する、さらにハイブリッドスリープをオンに設定して長時間の操作がないときは休止状態に移行、を指定した例です。
Windows7では「コントロールパネル」→「電源オプション」で設定します。
離席時にPCをスリープにすることを忘れたとしても、自動的にこれらの節電モードに切り替わります。
なお、ディスプレイのスクリーンセイバーは、CRT画面が焼き付いてしまうことを防止するためのものです。
節電効果がないばかりか、かえって消費電力が増えるので、使用は避けたほうがよいでしょう。
デスクトップPCの場合、昼休みなどの休憩時にはディスプレイの電源をオフにすることが効果的です。
自動節電プログラムをダウンロード提供中
「電源オプション」での節電設定が面倒、あるいは、どう設定してよいかわからないという場合、マイクロソフト社がWindowsPC用に無料でダウンロード提供している「WindowsPC自動節電プログラム」を使用すると、一般的に適切と思われる節電設定に自動設定できます。
オフィスにたくさんあるPCを一律に設定したい場合なども比較的簡単に設定できます。
なお、マイクロソフト社ではこうした節電設定を行なうことで約30%、スリープモードを併用することで約50%の節電効果があるとしています(図表6)。
月刊「企業実務」 2013年2月号
神崎洋治(テクニカルライター)