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新任管理職が着手すべきマネジメントの課題

優れた管理職のコンピテンシーから導き出す

コンピテンシーから新任管理職の課題を導く

筆者がここ20年間研究している分野にコンピテンシーがあります。
コンピテンシーとは「できる人の行動特性」という意味です。

今回は、できる管理職のコンピテンシーを具体的に提示します。
管理職に就任した皆さんが、自分自身の日頃の行動を振り返ったり、新たな指針にしたりしていただけると嬉しく思います。

できる管理職が実践している7つのコンピテンシー

下記がコンピテンシーとその定義です。
一部上場企業の「できる管理職」にヒアリングして作成しました。

コンピテンシー:できる管理職の行動特性
(1)理念・方針の共有 経営理念・方針、新しいやり方をわかりやすく部下に理解させ、実行させる行動
(2)経営への参画 自分はもちろんのこと、部下も上手に計画立案や企画立案や改善活動に参加させる行動
(3)業務の革新/生産性の向上 常にもっと良いやり方はないかを考え最小のコストで、より早く、チーム全体の仕事の質と量を高める行動
(4)教育・指導 部下に気づきを与え、仕事を通じて部下の人間性を高め、成長させる行動
(5)権限委譲 やる気と意欲のある部下に、思い切って仕事を任せ、のびのびと仕事をさせる行動
(6)部下への配慮・動機づけ/コミュニケーションの充実 一人ひとりの部下とより良い信頼関係を築き、効果的に仕事に活用する行動
(7)指揮・命令・徹底 目標や新しいやり方、規則やルールを部下に徹底して守らせる行動

これらは管理職にとって重要な行動特性です。
したがって新任者なら身につけるべき課題ともいえるでしょう。

では、これからひとつひとつ具体的な行動例を説明していきます。

管理職コンピテンシー(1)理念・方針の共有

<管理職コンピテンシー(1)の行動例>

経営方針などのわかりにくい表現を部下が実行に移せるよう、かみくだいて説明する

たとえば次のような共有の仕方です。左側の「火の用心」スタイルではダメです。

  ダメな共有 適切な共有
社長

部長

課長
火の用心

火の用心

火の用心
火の用心
 ↓
今夜は風が強いから、見回りを1回から2回に増やそう
 ↓
さらに見回りに持っていく水の量を半分から、8分目に増やそう。重いけど頑張ってな!

「理念・方針の共有」とは、同じ言葉やフレーズを連呼することではありません。
下の役職に行けば行くほど具体的な行動となるところに着目しましょう。

また「理念・方針の共有」では、一度言って相手がその通りに理解し実行してくれることなど、めったにないと思ってください。
とにかく繰り返し、繰り返し、何度でも言うことが重要です。

特に本社関連の人には注意してほしいところです。

「メール流したでしょ。前回の会議で言いましたよね」

いくら言い張ったところで、そんなこと誰も覚えていません。
後述するコンピテンシーである「教育・指導」にもつながりますが、部下との根気比べです。
自分から白旗をあげないことが重要です。

管理職コンピテンシー(2)経営への参画

<管理職コンピテンシー(2)の行動例>

部下に「今月はなにか新しいことをやってみようと思っているか」などと問いかけ、仕事への工夫を呼びかけている

まず「経営への参画」の意味を考えてみましょう。
私たち管理職が経営参画することの重要性はおわかりでしょうが、部下達を経営参画させるとはどういうことなのでしょうか。

このテーマはこういうふうに読み替えていただけるとよいでしょう。

経営参画=業務の改善・改良

ここでのポイントは人口動態の変化。
日本は今後20年から30年すると、3,700万人も人口が減ります。
つまり国内で商売をすることを前提にしたら、確実に需要が減ってくるのです。
だから仕事の方法や手段を見直すことが重要です。

おもちゃメーカーの事例を見てみましょう。
この会社では毎週月曜日に「アイデアファイト」といって、開発担当者ひとりにつき毎週1点、新しいおもちゃのアイデアを持ち寄ります。
これを毎週毎週続けます。陳腐なアイデアでも、組み合わせてみると面白いものができるのだそうです。

良いものをじっくりと考えるよりも、たくさんのアイデアをすぐ出すこと。
これに専念してみましょう。

管理職コンピテンシー(3)業務の革新/生産性の向上

<管理職コンピテンシー(3)の行動例>

誰かがうまいやり方を見つけだし成果をあげたという情報を手に入れると、部下と一緒になってそのやり方を研究し、使えるものは取り入れてメンバー共有の財産にする

今、私たちがやっているクリエイティブな仕事は、マニュアルや手順書を作ったくらいで生産性を上げられるものではありません。
逆に言えば、マニュアルを作って生産性が上がる仕事は、パソコンや機械、パートさんに任せるべき仕事なのです。

一方でクリエイティブな仕事であっても、そのノウハウやコツの差は歴然と存在します。
そこで、これを共有する仕組みが重要になります。

私のお客様も多くが年に1回、職種別に集まり、ノウハウやコツを共有する場を持っています。
成果を上げた行動や事例の本質を皆で書き出し、それを集めて皆の共有財産にしていきます。

ぜひ、皆さんもこういう場を持ってください。

管理職コンピテンシー(4)教育・指導

<管理職コンピテンシー(4)の行動例>

教育を効果的に行うため「教えた部下に教えさせる」というやり方をしばしば使う

ほとんどの大手企業では、インストラクター制度、コーチ制度、シスター・ブラザー制度などと呼んで、これを制度化しています。
これらの制度は教えられる新人にも効果的ですが、教える側も大きく成長させます。

いつも私はこう言っています。
「教えることは二度学ぶこと」だ、と。

この効果は絶大です。

もうひとつは勉強会の実施です。
あまり欲張らないで、たとえば第3木曜日の16:30から30分と決めて、3ヶ月から4ヶ月先のテーマと担当者を決めてしまうことです。
そしてその勉強会の先生役に若手社員を抜擢します。

これはある電子部品メーカーの実例です。
30分の勉強会を始めることに決め、先生役の社員を指名します。
これくらいだと第1回目は準備不十分。テキストも粗っぽい。30分といえども案外長いもので、先生役の社員はしどろもどろになります。
すると次の第2回目は、必ず詳細なテキストを作ってきます。おかげで勉強会もうまくいきます。結果、ほめられるので、第3回目はさらに出来が良くなります。

このようにして、教える立場の先生役がいちばん勉強になるわけです。

管理職コンピテンシー(5)権限委譲

<管理職コンピテンシー(5)の行動例>

「上司の承認が必要なこと」と「部下の判断で自由にやれること」を明確にしている

権限委譲とは、やさしくいえば「任せる」ことですが、丸投げはいけません。
仕事を任せるにあたって、自分なりの基準や決めごとを明確にしているかどうかがポイントです。

権限移譲についての、もうひとつの行動特性はこちらです。

<管理職コンピテンシー(5)の行動例>

自分の後継者を心のなかで決めていて、徐々に自分のやり方を教えながら、権限を移している

新任の方には難しいお題かもしれませんが、企業の永続的な発展には必要不可欠です。

「自分の後継者を決めていますか?」

「そして、計画的に育成していますか?」

管理職コンピテンシー(6)部下への配慮・動機づけ/コミュニケーションの充実

<管理職コンピテンシー(6)の行動例>

若い社員のセンスを取り入れて社内の行事を盛り上げたり、仕事にゲーム性を取り入れて部下たちを夢中にさせたりしている

特にチームメンバーが若い場合はぜひトライしてもらいたいものです。
その際、参考にしたい会社はリクルートさんです。
リクルートさんではたとえば、こんなことをやっています。

<目標達成ビンゴ>
業績管理上の目標制度を3×3のビンゴゲームに見立て、個人ではなくチームで挑戦するゲームです。

売上、収益、経費、訪問件数等、チームで達成したい指標を、ランダムに並べます。
指標が達成したら塗りつぶし、縦横斜めがそろったら、「ビンゴ!」です。

目標達成ビンゴ

これはほんの一例ですが、こういうことを管理職が常に仕掛けているのです。

部下への配慮・動機づけ/コミュニケーションの充実のポイントをもうひとつ。

<管理職コンピテンシー(6)の行動例>

部下との対話やミーティングのときにひとりでしゃべりまくるのではなく、自分のしたいことを手短かに述べたあとは部下に質問したりして、よい聞き手になろうとしている

今まで、いろいろなやり方やノウハウを載せましたが、皆さん、基本態度は大丈夫でしょうか?

手を止めて、話を聞く」。

とはいえ、私もこういうことをよく事務所でやってしまいます。
パソコンに向かって仕事をしている私に対して、「望月さん、これどういうふうに処理したらいいんですか?」と後ろからスタッフが声をかけます。
ところが、仕事の手を休めず、しかもスタッフのほうを見向きもせずに「今まで通りに処理しておいて」。

こんな対応をされた部下はどう思うでしょうか。しかも1日に何度もあったとしたら。

こんな毎日が積み重なると、部下はきっと心のなかではこう思っているはずです。
「『コミュニケーションが大事だ!』なんていつも言っているけど、結局、私の話すら聞いてくれないじゃないか。そんなに自分の仕事が大事なのかよ……」。

基本態度は大事です。

管理職コンピテンシー(7)指揮・命令・徹底

<管理職コンピテンシー(7)の行動例>

「これだけは譲れない」というものを持っていて、それを貫こうとしている

自分なりの基準をオープンにすることです。
「私はこれだけは許さないよ!」「これは必ずやってくれ」などなど、折に触れて皆に話すべきです。
こうすることで、逆に部下もリーダーと付き合うのが楽になります。

ここは特に新任者には大事なポイントです。

まとめ:できる管理職になるための4ステップ

いかがだったでしょうか。
常に成果を上げている管理職が、具体的に実践していることをご紹介しました。

とはいうものの、急にすべてを実行しようとしても難しいでしょう。
まずは重点的に実行すべき項目を決め、「行動改善目標」と名付けましょう。
「習慣」作りのためには、以下の4ステップが重要です。

習慣作りの4ステップ
  1. 気づく
  2. 行動改善目標を立てる
  3. 定期的にチェックする
  4. 振り返る
習慣作りの4ステップ

新任時が自分を変えるチャンスです。
ぜひ、良い習慣を身につけてください。

望月禎彦 氏(人事評価制度コンサルタント)

人事政策研究所代表。ユニ・チャーム株式会社人事部で採用・研修の実務を経験。1992年独立以来、中堅企業の人事政策面を徹底支援。「行動」をベースにした独自の理論を駆使し、“できる人”を着実に増やし、成果につなげている。実際の支援先は30年間で400社を超える。著書に『1万人の部下をぐんぐん成長させたすごいノート術 部下ノート』(アスコム、共著)など。

傾聴力を強みに変えるコミュニケーションのポイント

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