部下ノートで指導力を上げて部下を育てる方法
毎日でなくてもOK!たった3行書くだけで部下が変わる!部下ノートとは?
筆者が企業幹部の方々に強くお勧めしている部下育成法のひとつが『部下ノート』です。
部下ノートとは
- 部下の素晴らしい行動、あるいは反対にいまいちだった行動
- それに対して自分自身どのようにアプローチしたのか
を手短にノートに記入していくやり方です。
ただこれだけのように見えますが、書き続けることで部下がよく見え、気づきを得られるようになっていきます。
じつはこの部下ノート、もともとはユニ・チャーム株式会社の創業者である故 高原慶一郎氏が行っていた手法です。
筆者は高原氏のもとで社長秘書を1年半務めていましたが、高原氏が非常にたくさんのメモを取っておられたのを目にしています。
高原氏はメモを20種類以上のノートにまとめ、上手に業務に活かしておりました。
そのなかの1冊が部下ノートだったのです。
あるとき、高原氏はこうおっしゃいました。
「わたしは部下に指示ばかりしているように見えるかもしれないが、部下から学ぶことも多いぞ。きみも直属の部下を持つことになったら必ずやりなさい」
以来35年間、わたしも部下ノートを取り続けています。
部下ノートの書き方
部下ノートに書くべきことはふたつだけです。
- 部下の行動
- 上司である自分自身がそのとき感じたこと・アプローチしたこと
「部下の行動」を書くといっても、すべての部下の行動をつぶさに書く必要はありません。
特筆行動だけ書いてください。
(例)
●部下Aが特に素晴らしい行動をした。
●部下Bがまたこんなことをやらかした。
また日記ではありませんから、毎日書く必要もありません。
こんなスタイルです。
『1.部下の行動』を2行、『2.自分がそのとき感じたことやアプローチ』を1行です。
つまり、たった3行書くだけでよいのです。
筋トレと同じで、細く長く実行していくことが継続するためのポイントです。
ですから、部下の数だけノートを用意する必要はありません。
最初に張り切って人数分用意しても、継続できなくなるからです。
したがって、1冊の部下ノートにたくさんの部下が登場してくることになります。
部下ノートを書くと何が変わる?
介護施設の施設長 橋本さん(仮名)の実例を見てみましょう。
橋本さんが着任した介護施設は、年間2,000万円以上の赤字を出していました。
そのうえ、部下である施設メンバーは、前任の施設長に不満があったようです。
部下からは「聞いてくれない!やってくれない!」のオンパレードです。
顧客満足より、自分たちの言い分を実現することを優先していたのです。
こちらは、橋本さんが就任当初に書いた部下ノートです。
最初の1か月間、橋本さんは目に付くエントランス正面の壁、1階の共用トイレを徹底的に磨き上げていきます。
その間、スタッフには「やれ!」とも言いません。
黙々とひとりで行いました。
すると2か月目からこの行動を見ていたスタッフ数名から
「自分に何かできることはないのか?」
「壁の汚れが気になるが、綺麗にするためにはどのようにすればよいのか?」
などの質問が出てくるようになってきました。
着任2か月目の部下ノートです。
整理整頓活動に特化したら、就任当初42施設中42位であった施設ランキングが、あっという間に28位に。
みんなの意識も変わりだし、施設長の言うことに耳を貸してくれるようになってきます。
次は、見学しにきた要介護者ご家族に対しての「接遇」「接客」の改善です。
まずは笑顔でお出迎え、お見送り、そして声がけの徹底です。
それだけで、あっという間に施設が黒字に転換しだしました。
このときの部下ノートです。
たしかに橋本さんの行動も立派でした。
しかし施設業績が変わったのは、橋本さんのものの見方・考え方が変わったのが最大の要因だと考えています。
もういちど、橋本さんの部下ノートを見返してみましょう。
最初は、スタッフの悪い点ばかりを記入しています。
それが2か月目には部下の良い点を発見し、書き留めるようになりました。
そして最終的には、ひとりひとりの強み弱みを見極め、どう活用できるかという経営者視点に変わってきているのです。
たとえば6/16付のノートでは「彼女にもこんな笑顔があるのか」と気づきました。
そして7/2付のノートでは、「彼女をキーマンに据えてみようかな」と部下の成果に応じた役割を考えられるようになっています。
これは絶えず部下を見て、気づいたことを書き留めてきたからこそ、です。
これが部下ノートの効果です。
どういう指導をすると、どのように成果につながるのか、という視点で部下の行動を見るようになりますから、当然、部下の成長に直結します。
図示するとこうなります。
簡単にできて、成果につながる部下ノート。
ぜひ、明日から実践してみてください。
人事政策研究所代表。ユニ・チャーム株式会社人事部で採用・研修の実務を経験。1992年独立以来、中堅企業の人事政策面を徹底支援。「行動」をベースにした独自の理論を駆使し、“できる人”を着実に増やし、成果につなげている。実際の支援先は30年間で400社を超える。著書に『1万人の部下をぐんぐん成長させたすごいノート術 部下ノート』(アスコム、共著)など。