文学に関する面白雑学・豆知識5選
石川啄木、伊勢物語、ヴィクトル・ユゴーなどのエピソードを紹介作家や古典に西洋文学……、ちょっと知的に話題にできる面白ネタをご紹介。
皆さんはここで紹介する文学、小説をご覧になったことはありますか?
天下の大泥棒石川五右衛門の子孫だった?
『一握の砂』の石川啄木は中学の先輩でもあった言語学者・金田一京助に金の無心をすることもたびたび。
金田一京助は石川啄木にお金を都合するために家財道具を売ることもあったそうです。
石川啄木が訪問するたびに家具がなくなるので、息子の金田一春彦(こちらも言語学者)は石川啄木を石川五右衛門の末裔だと思っていたとか。
ちなみに、石川啄木と金田一京助を主人公にした推理小説もあって、アニメ化もされています。
夢で逢えたら・・・
伊勢物語では主人公(在原業平がモデルとも)が「わたしはこんなにあなたのことを想っているのに、あなたは夢に出てきてくれない」と嘆く歌が詠まれています。
当時は自分が“想い人を夢に見る”のではなく、想い人が“夢のなかへ会いに来る”と考えられていたそうです。
そのため「恋人が夢のなかにさえ、わたしに会いに来てくれない」不誠実を嘆いたというわけです。
夢についての見解が現代と逆転しているのが面白いところです。
ペンネームは何かのもじり
言文一致運動で知られる明治の小説家、二葉亭四迷の名前は「くたばってしまえ」からきています。本名は長谷川辰之助といいます。
似たようなネーミングの例としては、江戸川乱歩がエドガー・アラン・ポーの名前のもじりであるのは有名です。
そのほかにも、同じ推理作家でいうと岡嶋二人という方がいます。こちらは「おかしな二人」のもじりで井上夢人と徳山諄一の両名によるコンビ作家のペンネームです。
さらにいうと「おかしな二人」はニール・サイモンの戯曲名も由来するものだそうです。
近ごろの若い者は・・・
「近ごろの若い者は……」というセリフはいつの時代でも口をついて出てくるもののようです。
「近ごろの若い者は……」と言われたかつての若者も知らず知らずのうちに、今の若者に対して「近ごろの若い者は……」と言ってしまうこともあるかもしれません。
たとえば、夏目漱石の『三四郎』にも
近ごろの青年は我々時代の青年と違って自我の意識が強すぎていけない。我々の書生をしているころには(中略)すべてが、君とか、親とか、国とか、社会とか、みんな他(ひと)本位であった
夏目漱石『三四郎』
と述べる場面があります(下線は編者による)。
なんだか、今でも通用しそうなセリフですね。
世代間ギャップというのは明治の昔も令和の今も変わらないということでしょうか。
ちなみに古代エジプトで建設されたピラミッドにも「近ごろの若い者は……」という落書きが残っているという話です。
世界一短い手紙
『レ・ミゼラブル』といえば日本でも映画やミュージカルが上映されるなど、広く知られた小説です。
この小説の作者であるヴィクトル・ユゴー(1802-1885)が『レ・ミゼラブル』出版後、本の売れ行きを気にして旅行先から出版社に手紙を送りました。どんな文面かというと
ユゴー「?」
それに対して出版社の返事が──
出版社「!」
文章に置き換えれば
ユゴー「売れ行きはどうでしょう?」
出版社「売れてます!」
といったところでしょうか。
あれだけ大部の物語を著した作家も気が気でなかったのか、言葉を尽くさず、ささやかに「?」とたった一文字書いて送るのも面白いところです。
そのうえ出版社も「!」で返信するところが粋ですね。