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令和3年度の最低賃金改定額が発表されました

1,041円から820円まで!あなたの街の最低賃金はいくらになった?
 

去る8月30日、令和3年度の地域別最低賃金額が発表されました。

毎年少しずつ金額が上がっていますが、今年はどうなったのでしょうか。

ここでは最低賃金の改定額について、いろいろな角度から見ていきます。

全国平均28円アップ! 今年度の最低賃金はいくら?

今年度の改定ですが、昨年に比べて平均28円の増額、最低賃金の全国加重平均額は930円となりました。
皆さんの勤める会社の所在地の最低賃金はいくらになったのでしょうか。

令和3年度 地域別最低賃金改定額一覧

全国都道府県別の最低賃金改定額は以下の表の通りです。

都道府県令和3年度改定令和2年度差額発効年月日
北海道889円861円28円令和3年10月1日
青森県822円793円29円令和3年10月6日
岩手県821円793円28円令和3年10月2日
宮城県853円825円28円令和3年10月1日
秋田県822円792円30円令和3年10月1日
山形県822円793円29円令和3年10月2日
福島県828円800円28円令和3年10月1日
茨城県879円851円28円令和3年10月1日
栃木県882円854円28円令和3年10月1日
群馬県865円837円28円令和3年10月2日
埼玉県956円928円28円令和3年10月1日
千葉県953円925円28円令和3年10月1日
東京都1,041円1,013円28円令和3年10月1日
神奈川県1,040円1,012円28円令和3年10月1日
新潟県859円831円28円令和3年10月1日
富山県877円849円28円令和3年10月1日
石川県861円833円28円令和3年10月7日
福井県858円830円28円令和3年10月1日
山梨県866円838円28円令和3年10月1日
長野県877円849円28円令和3年10月1日
岐阜県880円852円28円令和3年10月1日
静岡県913円885円28円令和3年10月2日
愛知県955円927円28円令和3年10月1日
三重県902円874円28円令和3年10月1日
滋賀県896円868円28円令和3年10月1日
京都府937円909円28円令和3年10月1日
大阪府992円964円28円令和3年10月1日
兵庫県928円900円28円令和3年10月1日
奈良県866円838円28円令和3年10月1日
和歌山県859円831円28円令和3年10月1日
鳥取県821円792円29円令和3年10月6日
島根県824円792円32円令和3年10月2日
岡山県862円834円28円令和3年10月2日
広島県899円871円28円令和3年10月1日
山口県857円829円28円令和3年10月1日
徳島県824円796円28円令和3年10月1日
香川県848円820円28円令和3年10月1日
愛媛県821円793円28円令和3年10月1日
高知県820円792円28円令和3年10月2日
福岡県870円842円28円令和3年10月1日
佐賀県821円792円29円令和3年10月6日
長崎県821円793円28円令和3年10月2日
熊本県821円793円28円令和3年10月1日
大分県822円792円30円令和3年10月6日
宮崎県821円793円28円令和3年10月6日
鹿児島県821円793円28円令和3年10月2日
沖縄県820円792円28円令和3年10月8日
全国加重平均930円902円28円

昨年度までは最低賃金700円台の地域もありましたが、今年度の改定により、全国すべての都道府県で800円を超えました。

あらためて見まわしてみると、同じ日本でも地域によって大きな差があることがわかります。
同じ日本国内なのに最大221円もの開きがあるのは驚きです。

なお、都道府県によって発効時期が異なりますが、10月1日(発効時期が最も遅い沖縄県でも10月8日)以降、この最低賃金額を参照することになります。
今のうちに自社で支給している賃金が最低賃金を下回らないかどうか確認しておきましょう。

最低賃金額が高いのはどこ?

もう少し詳しく見てみましょう。

まず、最低賃金額が高い都道府県はどこでしょうか。

◇最低賃金額(高額順)

1,041円
東京都

1,040円
神奈川県

992円
大阪府

以下、埼玉、愛知、千葉……と続きます。
最低賃金額900円台の都府県に限ると、金額順に埼玉県の956円から愛知県、千葉県、京都府、兵庫県、静岡県と続いて三重県の902円まで、ちょうど上位10位内に収まっています。

おおむね三大都市圏内の都府県が上位に入っていますね。
これは皆さんも想像通りなのではないでしょうか。

◇最低賃金額(低額順)

820円
高知県・沖縄県

821円
岩手県・鳥取県・愛媛県・佐賀県・長崎県・熊本県・宮崎県・鹿児島県

822円
青森県・秋田県・山形県・大分県

低い順に並べるとご覧の通り。
ここで注意したいのは、地価・物価に違いがあるので、額面通りの金額で判断することはできないということです。

たとえば、「全国家賃動向」2021年7月調査(全国賃貸管理ビジネス協会)による全国の総平均賃料を参考に見てみましょう。
※1部屋(1K、1DK、1LDK含む)から3部屋まですべてのデータから算出したもの

「全国家賃動向」によると、総平均賃料は東京都で72,464円、沖縄県で52,634円でした。
また、東京を100%とした水準で見ると沖縄県は73%とのことです。

同じように最低賃金で東京都を100%と見た場合、沖縄県の最低賃金は79%になります。

総平均賃料最低賃金
東京都72,464円(100)1,041円(100)
沖縄県52,634円(73)820円(79)
( )内数字は東京を100とした場合の水準値

家賃だけの比較ですが、それでも額面だけを見て高い・安いと判断することはできないだろうということはうかがわれます。
(都道府県別の名目賃金と実質賃金の違いを比較するのも面白いかもしれません。)

最低賃金だけで判断することはできないにしても、沖縄県は最低賃金79ポイントに対して総平均賃料は73ポイントですから、東京都に比べて家賃負担は軽そうに見えますね。

最低賃金はどれくらい増えたの?

昨年に比べていくら増額されたのかを見てみましょう。
令和3年度改定で改定幅が最も大きいのはどの都道府県でしょうか。

◇増額(前年比)

32円
島根県

30円
秋田県・大分県

29円
青森県・山形県・鳥取県・佐賀県

島根県がトップで32円の増額でした。

次いで30円の増額が秋田県と大分県の2県。
29円の増額は4県あって、北から順に青森県、山形県、鳥取県、佐賀県です。

残りの40都道府県はどこも28円の増額でした。

ちなみに平成28年度の最低賃金改定額を起点として、令和3年度までの5回の改定額累計で最も増額された都道府県はどこなのかも調べてみました。

過去5回の改定累計額で最低賃金の増額幅が最も大きかったのは、同率1位で埼玉県と千葉県。
それぞれ累計111円の増額です。

◇最低賃金の増額(過去5回改定の累計)

111円
埼玉県・千葉県

110円
神奈川県・愛知県

109円
東京都・大阪府・兵庫県

なお、全国平均でみれば5回改定の累計増加額は106円でした。

最低賃金が1,000円になるのはいつごろ?

ところで皆さん、昨年(令和2年度)の最低賃金改定額を覚えていらっしゃいますか?

令和2年度は新型コロナウイルス感染症拡大による経済や雇用への影響が考慮され、最低賃金額も据え置き、あるいは増額されても1~3円にとどまりました。

ところが今年は昨年に比べて全国平均28円の増額(昨年の28倍!)で、3%ほどのアップです。

「28倍!」は大げさですが、非常時でもなければ最低賃金の改定額は3%増だろうというのは予想されることでした。

というのも「働き方改革実行計画」(PDF)のなかで「年率3%程度を目途に最低賃金を引き上げ、全国加重平均が1,000円になることを目指す」とされていたからです。
このさき何も問題がなければ、最低賃金は3%ずつ増額改定されていくということでしょうか。

全国加重平均額1,000円を目指すということですが、このままの上げ幅で最低賃金が改定されていくと、目標である1,000円に到達するのはいつになるのでしょう。

すでに東京都・神奈川県の最低賃金額は1,000円を超えていますが、全国平均で見た場合は?

まずは過去5年間の平均改定額を見てみましょう。

改定額(全国平均)前年比
平成28年度823円25円
平成29年度848円25円
平成30年度874円26円
令和元年度901円27円
令和2年度902円1円

すでに述べたように令和2年度は例外としても毎年おおよそ3%程度の増額であることが察せられます。

それでは今後も3%ずつ増額改定されていくと仮定して、いつ1,000円に到達するのかを試算してみましょう。

改定額(全国平均)前年比
令和3年度930円28円
令和4年度958円28円
令和5年度987円29円
令和6年度1,017円30円

あくまで試算通りに進んだ場合ですが、3年後には1,000円を超えることが予想されます(3年間で87円の増額見込)。

もちろん、全国平均で考えた試算額なので、3年後にすべての都道府県で最低賃金が1,000円に届くとは限らないでしょう。

ですが、913円+増額見込87円=1,000円となりますので、令和3年度時点で913円を超える最低賃金額が設定されている都道府県は1,000円に届くかもしれません。

令和3年度改正時点で最低賃金額が913円を超えている都道府県は、金額順にみて次の9都府県です。
※東京都・神奈川県はすでに1,000円超

  • 東京都 1,041円
  • 神奈川県 1,040円
  • 大阪府 992円
  • 埼玉県 956円
  • 愛知県 955円
  • 千葉県 953円
  • 京都県 937円
  • 兵庫県 928円
  • 静岡県 913円

大阪府は来年度にも1,000円を超えそうですね。

最低賃金には周知義務がある!?

企業としては、この最低賃金額を下回らないよう、従業員の賃金を設定しなければなりません。
もし、昨年度までの最低賃金額ぎりぎりで設定している従業員がいるようでしたら、早々に見直しを図ることになるでしょう。

さて、最低賃金を下回らないようにするのは皆さん、ご承知かと思います。

では、従業員への周知義務があることはご存じでしょうか。

じつは最低賃金額がいくらなのかを従業員に知らせる義務があり、それは最低賃金法という法律に定められているのです。

最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない。

最低賃金法 第八条(周知義務)

しかも、違反したら30万円以下の罰金が科せられます(同法第四十一条)。

それでは、どうやって地域の最低賃金を周知していけばよいのか。
厚生労働省が運営する最低賃金に関する特設サイトでは、広報ツールが掲載されているので、これらを活用しましょう。

最低賃金

最低賃金公報ツール
厚生労働省:最低賃金に関する特設サイト

ポスターやリーフレットは都道府県ごとに印刷して使えますし、英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語など多言語にも対応しています。
外国人労働者の働く会社でも安心して使えますね。

最低賃金問題:県境にある店舗は悩ましい?

その地域の最低賃金額がいくらなのかについては、物価の違いもあって一概に高いから良い、低いからダメとは言えないでしょう。

ただ、しばしば言われることですが、県境にある店舗でアルバイトを雇う場合などには悩ましい問題が起こることがあります。

たとえば東京都と埼玉県の県境を想定してみましょう。

通り1本を挟んで2件のコンビニエンスストアがあったとします。
一方は東京都にあり、もう一方は埼玉県にあります。

2件ともアルバイトを採用したくて、同時期に求人広告を出しました。

ここで最低賃金をもういちど確認してみましょう。
令和3年度改定額で見ると、東京都は1,041円、埼玉県は956円です。

ということは東京都にある店舗は最低でも時給1,041円にしなければなりません。
埼玉県にある店舗なら最低時給は956円です。

このとき、皆さんはどう思いますか。

通り1本を挟んだだけなのに、東京に住所があるというだけで向かいのコンビニよりも85円多く時給を支払わなければいけない、と考えるでしょうか。

それとも、通り1本くらいの距離なら時給の高い東京店に採用希望者が集まるかな、と考えるでしょうか。

そうです。店舗としては、ここが悩ましいところです。

アルバイトとしては仕事がほぼ同じ条件であれば当然、時給が高い方を選びます。
この例でいうと、埼玉県側のコンビニは時給を高く設定しないと働き手を確保できないおそれがあるわけです。

働く側からすると、お給料がたくさんもらえるのは、たいへんありがたいことです。
反面、雇う側からすると人件費の高騰につながることになります。

世界の最低賃金はどれくらい?

日本国内の最低賃金は私たちの収入に関わってくることなので、目にすることも多いですよね。

では、他国の最低賃金がいくらなのかはご存じですか?

普段気にすることはありませんでしたが、この機会に調べてみると、OECD(経済協力開発機構)が調査していました。

Real minimum wages(OECD)

日本語に訳せば「実質最低賃金」というところでしょうか。
OECDに加盟している38か国のうち、32か国のデータですが、この調査から最低時給額を見てみましょう。

世界的に見て日本のお給料は高いのでしょうか、低いのでしょうか。

Real minimum wages 2020年調査:単位USドル

最低賃金(時間給)
1オーストラリア12.9
2ルクセンブルク12.6
3フランス12.2
4ドイツ12.0
5ニュージーランド11.8
6オランダ11.3
7ベルギー11.2
8イギリス11.1
9カナダ10.5
10アイルランド10.3
11スペイン9.1
12韓国8.9
13スロベニア8.4
14日本8.2
15ポーランド8.0
16アメリカ7.3
17イスラエル6.8
18リトアニア6.7
19ポルトガル6.7
20チェコ6.3
※21位以下省略

日本は14位でした。

2020年度(令和2年度)の日本の最低賃金が全国平均で902円です。
それを踏まえて、OECD調査で日本の最低賃金が8.2ドルということは1ドル=110円と考えると分かりやすそうです。
8.2ドル×110円=902円という計算ですね(もっとも為替は毎日変動するので、なんとも言えませんが)。

ひとまず1ドル=110円としましょう。
すると、トップのオーストラリアの最低賃金は日本円に換算して1,419円となります。

その他、アメリカの最低賃金が意外と低いのに気づきます(7.3ドル=803円)。

世界の長者番付トップ10といえば、そのほとんどがアメリカです。
Amazonのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットなど名だたるメンバーが並んでいます。

Forbes THE REAL-TIME BILLIONAIRES LIST

アメリカの有名企業の経営陣の年収が高額なのはニュースでもよく目にするので、なんとなくアメリカの賃金水準は高いように思っていました。
ですが、上を見たら超高額だからといって一般的な平均年収までもが高額だとは限らないんですよね。

もっともアメリカの所得格差は非常に大きいとは言われていましたし、こうして最低賃金とトップの収入を見比べても、その一端が垣間見えるような気もします。


詳しい方はお気づきかもしれませんが、給料の高さでいうと、OECD調査「Real minimum wages」にスイスが入っていないことを不思議に思われるかもしれません。

スイスもOECD加盟国なので、この調査に入っていてもおかしくなさそうですが……。

どうしてだろうと思って調べてみると、どうやらスイスは最低賃金を一律に定めることをしていないようです。
だから調査に含めるのが難しかったのかもしれません。

ところが何と!
昨年10月スイスのジュネーブ州では住民投票により、最低賃金(時給)を日本円にしておよそ2,600円に引き上げることが決まったとか。

まさに桁違いですね!

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