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資本金別にみる役員報酬の支給実態とは?

国税庁「民間給与実態統計調査結果」からわかる役員報酬の平均支給額
 

国税庁ではさまざまな統計資料を提供していますが、そのなかに「民間給与実態統計調査」があります。
一般従業員の給料に関するデータが大半ではありますが、じつは役員報酬の支給金額も集計されている統計資料です。

民間給与実態統計調査において、役員報酬は資本金の額ごとに分類・調査されています。
世間では役員報酬はいくら支払われているのか、企業規模で相場を参照することができます。

では2021年5月現在、最新集計データである「令和元年分 民間給与実態統計調査結果」から、役員報酬の支給実態について、どんなことがうかがえるのかを見ていきましょう。

資本金別に役員報酬の平均支給額を見てみよう

役員報酬の支給金額は「第7表 企業規模別及び給与階級別の給与所得者数・給与額」で報告されています。

詳細は「民間給与実態統計調査」をご覧いただくことにして、ここでは資本金別に見た役員報酬支給額の全体像を見ることにしましょう。
令和元年 12 月 31 日現在、役員報酬の平均支給額は以下のとおりでした。

資本金性別平均
年齢
平均勤続
年数
給料賞与
2000万円未満

55.6
57.6
56.2
18.3
18.0
18.2
648万円
362万円
561万円
27万円
10万円
22万円
2,000万円以上

57.3
60.5
58.1
23.2
24.5
23.5
847万円
474万円
752万円
75万円
98万円
81万円
5,000万円以上

58.1
56.5
57.9
23.0
17.8
22.4
1,042万円
468万円
980万円
117万円
22万円
106万円
1億円以上

55.6
53.6
55.4
17.5
11.3
17.0
1,144万円
683万円
1,105万円
183万円
78万円
174万円
10億円以上

54.6
41.5
52.6
19.9
10.6
18.4
1,470万円
417万円
1,304万円
330万円
104万円
295万円

一見して企業規模が大きくなる(資本金の額が高くなる)ほど役員報酬の額も大きくなっているのがわかります。
事業規模が大きくなるほど売上高も大きくなりやすいので、比例して役員報酬額が大きくなっても不思議ではないでしょう。

ほかに目を引くのは、男女間で役員報酬支給額に大きな差があることです。

支給額だけでは男女で役員報酬にこれほどの差がある理由ははっきりしません。
というのも、実際のところ社長の奥様が非常勤取締役でいらっしゃって、毎日出社しているわけでもないので月額10万円ほどの役員報酬が支払われている、という例も少なくないからです。

それでも平均支給額で2倍あるいはそれ以上の差が開いているのは驚きです。

年齢も在任年数も同じ取締役が二人いたとして、性別が異なることのみを理由に役員報酬の支給額にこれだけの差がつくとは考えにくいでしょう。
ですので、常勤取締役だけを抽出したら男女にかかわらず、平均支給額も大きく変わることになりそうですね。

役員報酬の平均支給額は妥当な金額なのか

ちなみに「資本金5,000万円以上(1億円未満)」のデータに着目して、もう少し細かい数字も見てみると上の表とは別の様相が浮かび上がってきます。

【再掲】役員報酬の平均支給額(資本金「5,000万円以上」のみ掲載)

資本金性別平均
年齢
平均勤続
年数
給料賞与
5,000万円以上

58.1
56.5
57.9
23.0
17.8
22.4
1,042万円
468万円
980万円
117万円
22万円
106万円

あらためて確認しますが、資本金5,000万円以上1億円未満の企業で支払われる役員報酬の平均額は男性で「1,042万円」、女性で「468万円」です。
ここだけ見ると役員報酬の相場は男性で1,000万円強、女性で500万円弱といえるでしょうか。

では、もう少し細かく見ていきましょう。
「民間給与実態統計調査結果」では支給額100万円単位で細分化して集計データを取りまとめています(下図参照)。

民間給与実態統計調査
<画像クリックで拡大>

資本金5,000万円以上の株式会社でも、役員報酬が100万円以下なら平均で64万円、200万円以下なら平均で147万円……というように、100万円ごとの給与階級別に集計されています。
すべて合算した数字が「1.資本金別に役員報酬の平均支給額を見てみようで見た役員報酬支給平均額の表になるのです。

この給与階級区分に着目して、どの区分がいちばん多いのか、比率は次のようになります。

男性役員
給与階級比率
①1,500万円以下18.5%
②800万円以下9.9%
③2,000万円以下9.9%

女性役員
給与階級比率
①200万円以下20.5%
②500万円以下19.0%
③400万円以下16.3%

厳密に中央値(※1)を算出するデータがないので定かなことは言えませんが、平均値から離れた金額が実際の役員報酬支給額の水準とも読み取れそうです。

男性役員にいたっては、平均値が1,000万円ほどであるにもかかわらず、平均値に比べて、500万円以上多く支給しているか、あるいは200万円ほど支給額が少ない企業の方が多いようにも見えるのは興味深いところです。

この民間給与実態統計調査には集計した数字しか掲載されていないため、回答した企業それぞれの事情までは判然としません。
回答事業者数は18,529件(令和元年分民間給与実態統計調査の概要:抽出率より)と相当に大きな数ですが、その役員報酬が社長に支給された額なのか、専務に支給されたのか、あるいは取締役なのかという区別も分からないのです。

同じ役員報酬とはいえ、男女で集計数にも大きな開きがあるので、どこまでの金額なら損金算入できるか、細かく見ていく必要があります。

もっと詳細な事例で役員報酬の支給額を比較したい方は

国税庁調査というだけあって、「民間給与実態統計調査結果」は調査の件数、内容ともに充実しています。
従業員給与も統計データが幅広くまとめられていて、なかなか興味深い資料です。

毎年、調査を実施・公開していますので、皆様もぜひいちどお手すきの際にのぞいてみてはいかがでしょうか。

【国税庁】民間給与実態統計調査 年度別リンク

とはいうものの……

役員報酬について平均額以外の調査も知りたい。
会長、社長、専務などの役位別に見られないでしょうか。

同業他社とも比較したい。
製造業の社長なら役員報酬の相場はいくらだろう。

などなど、興味はつきないところです。

「もっと具体的に同業他社の支給事例を調べたい」という方にはこちらもいかがでしょうか。
※2023年2月、最新版発行!

「役員報酬・賞与・退職金」「各種手当」中小企業の支給相場【2023年版】

なかなか世に出てこない中小企業の役員報酬相場についてアンケート調査を実施しました。
役員報酬や役員退職金の支給額はもちろんですが、支給する企業の・・・

  • 業種、会社所在地
  • 資本金、年商
  • 役員の同族関係(同族なのか、非同族なのか)
  • 役位(解消、社長、専務、常務ほか)
  • 在任年数
  • 常勤か非常勤か

といった情報を掲載しています。

いろいろな角度から見る役員報酬調査データ

業種、売上、資本金、所在地、同族関係、在任年数といった豊富な情報とともに、中小企業の役員報酬支給金額をまとめました。
ここでは少しだけ収録データをご紹介しましょう。

製造業の役員報酬
<画像クリックで拡大>

業種は「製造業」「建設業」「卸・小売業」「サービス業」「その他」の5分類で分けて掲載しています。

地域によっても相場は異なりますから、

● 東北の製造業だと社長の役員報酬はどれくらい支給されているのか
● 近畿のサービス業の専務は役員賞与をどれくらい支給されているのか

といった地域内比較もできます。

あるいは「役位別「規模別」の集計も行っていますので、

● 建設業の社長だけ並べて、役員報酬総額を比較する
● 卸・小売業の取締役の役員報酬の上限と下限を調べる
● 従業員数51~100名の企業で会長や社長に支払われている役員報酬を並列する

という使い方もできます。

これで、いろいろな角度から役員報酬の相場観を身につけられることでしょう。

役員報酬の支給額決定のために相場を知っておこう

役員報酬は税務調査でも調査されやすい科目です。
調査官は調査対象企業の同業他社の支給実績を把握したうえで調査してくるといいます。

〈インタビュー〉役員報酬の支給相場は税務調査で説得する武器になります

同業他社に比べて役員報酬額が高すぎると損金不算入とされかねません。

税務調査で指摘されて損金不算入とならないためにも、「民間給与実態統計調査」や『「役員報酬・賞与・退職金」「各種手当」中小企業の支給相場』で支給金額を調査するのが有効です。


※1 参考:中央値

仮に5社の役員報酬支給額がそれぞれ以下のとおりだとします。
ケース①
A社1,000万円 B社1,200万円 C社800万円 D社1,100万円 E社900万円

このとき役員報酬の平均額は1,000万円です。

では次の場合はどうなるでしょうか。

ケース②
A社3,800万円 B社200万円 C社400万円 D社500万円 E社100万円

こちらも平均額は1,000万円ですが、この5つの数字で役員報酬は平均1,000万円だといわれても違和感と覚えるのではないでしょうか。

中央値(データを並べたときに真ん中に位置する値)を見るとケース①では1,000万円、ケース②では400万円となります。
ケース②の場合、中央値で見た方がよさそうです。

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