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中小企業とは?業種や従業員数で異なる定義を調べてみました

国内企業の99%が中小企業!
 

世の中にある会社は中小企業と大企業に分けられます。
では、具体的には何を基準にして区別されるのでしょう。

「資本金1億円以下なら中小企業だ」といわれることもありますが、本当にそうなのでしょうか。

じつのところ中小企業は中小企業基本法という法律で定義されているのです。

中小企業とは何なのか、その定義と実態を調べてみます。

中小企業基本法における中小企業の定義

そもそも日本全国で会社の数はどれくらいあるのでしょうか。

2016年調査によると全国の企業数はおよそ359万者。
そのなかでも中小企業数は358万者を数え、なんと企業の99.7%が中小企業なのです。

2021年版中小企業白書参照

残りの1万者が大企業です。
1万というと相当数あるように見えますが、国内企業全体のわずか0.3%でしかありません。

では、大企業と中小企業とは何を基準に分けられるのでしょうか。
中小企業基本法第二条(中小企業者の範囲及び用語の定義)において、中小企業は以下の通り定義されています。

業種 中小企業者(下記のいずれかを満たすこと) うち小規模企業者
資本金 常時雇用する従業員 常時雇用する従業員
卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下 5人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下 5人以下
製造業・建設業・運輸業・その他 3億円以下 300人以下 20人以下

この定義に当てはまらない企業は大企業です。
(例)資本金2億円かつ従業員数300人の卸売業であれば大企業

それでは、次節でポイントを3つ整理してみましょう。

中小企業の定義のポイント

中規模企業と小規模企業者に分けられる

中小企業という枠組みのなかでも従業員数に応じて中規模企業者と小規模企業者(従業員数5人以下または20人以下)に分けられます。

全国に存在する企業の99.7%が中小企業であるわけですが、内訳を見るとこのようになります。
・中規模企業者 53万者(全体の14.7%)
・小規模企業者 305万者(全体の85%)

ちなみに「小規模企業者」と「小規模事業者」で若干、意味合いが異なります。
支援制度によって、小規模な会社の定義が違う場合もありえますので、必要に応じて支援元にお問い合せください。

「小規模事業者」とは、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律第2条に規定する商工会・商工会議所の支援対象となる小規模の商工業者や、所得税法施行令第195条に規定する青色申告を行う不動産所得の金額及び事業所得の金額の合計額が300万円以下の事業者等を指します。

中小企業庁:FAQ「中小企業の定義について」
Q8:「小規模企業者」と「小規模事業者」の違いを教えてください(中小企業庁)

中小企業と定義される資本金と従業員数の見方

業種によって中小企業とみなされる基準が異なります。

たとえば製造業であれば資本金が、3億円以下または従業員数が300人以下であれば中小企業です。
逆に見ると資本金が3億円かつ従業員数300人の製造業であれば大企業です。

つぎに資本金1億円かつ従業員数150人の会社を考えてみましょう。
製造業であれば中小企業ですが、サービス業であれば大企業と判定されます。

このように、同じ中小企業でも業種によって資本金の額や従業員数の上限が異なります。

なお中小企業の場合、資本金額または従業員数のどちらかで基準を満たせばよいので、資本金2億円・従業員数400人の製造業でも中小企業です。

※「資本金3億円以下」の基準を満たしているので「従業員数300人以下」でなくても中小企業に該当します。

細かいところですが、「以下/超」「または/かつ」という言葉の違いに注意しましょう。

税法上の規定とは異なる

法人税法に詳しい方なら、資本金1億円以下の企業は中小企業向けの税制優遇措置が受けられることに気付くかもしれません。
たとえば、資本金1億円以下の企業であれば「中小企業の法人税の軽減税率」を適用できます。

このように法人税法上では資本金が1億円を超えるのか、それとも1億円以下なのかで中小企業を判定します。

他方「2022年4月からパワハラ防止措置が中小企業でも適用」といった場合の中小企業は中小企業基本法の定義に基づきます。

基本的には中小企業基本法の定義に従いますが、税法上はおおむね「資本金1億円以下」が基準になります。

以下は余談ですが、大企業が資本金を減資して1億円以下にしようとするというニュースが一時期見受けられました。
資本金を減らすことで税制面での優遇措置を受けられるのが利点だったようです。

事実、東京商工リサーチによると

1億円以下に減資した企業は、2020年度(2020年4月-2021年3月)が997社(前期比39.4%増、前期715社)で、2021年度も上半期(2021年4-9月)だけで684社と判明

出前館、資本金を550億円減資し1億円へ(東京商工リサーチ)

という数字が示されています。

また、大企業並みの売上を上げつつも定義上、中小企業である企業が少なくありません。
そこで資本金にかかわらず、売上の大きさで判断して、中小企業にも外形標準課税を課そうという議論が、これまでの税制調査会等でなされていると聞いています。

中小企業と大企業を比較する

会社のほとんどが中小企業だとはいえ、大企業の力はやはり大きいようです。

従業員数での比較

まずは従業員数で比較してみましょう。

従業員数
中小企業 3220万人(69%) うち中規模企業1044万人
うち小規模企業2176万人
大企業 1459万人(31%)

大企業の数は全体の0.3%しか存在しないのにもかかわらず、従業員数では全企業の31%を占めています。
あくまで単純計算ですが、大企業は1社あたり約146万人、中小企業は1社あたり約9人となります。

もう少し詳しく見て、中小企業を中規模・小規模で分けるとおおよそ
・中規模企業者:1社あたり約20人
・小規模企業者:1社あたり約7人
となります。

参考程度の数値ではありますが、大企業と中小企業との規模の差が如実に表れています。

ちなみに、総務省統計局の資料によると従業員数の割合はこのようになります。

出典 総務省統計局「日本の統計 2021
「産業,従業者規模別民営事業所数と従業者数(平成28年)」をもとに編集

集計の対象となる事業所数などが異なるのでそのまま比較するわけにはいきませんが、従業員数100人未満で67%を占めています。
こちらも国内企業の全体像の把握にはお役立ていただけるでしょう。

企業が生み出す付加価値額での比較

続いて中小企業と大企業の付加価値額を見てみましょう。
※付加価値額=売上高-外部業者に支払うべき費用

以下の数字は2015年の調査であり、コロナ禍前の数字です。
現在の付加価値額を反映していないかもしれませんが、おおよその比較をしてみます。

付加価値額
中小企業 135.1兆円(53%) うち中規模企業99.4兆円
うち小規模企業35.7兆円
大企業 120.5兆円(47%)

こちらも単純計算ですが、大企業は1社あたり約120億円、中小企業は1社あたり約5600万円の付加価値額を生み出していることになります。

もう少し詳しく見て、中小企業を中規模・小規模で分けるとおおよそ
・中規模企業者:1社あたり約1.9億円
・小規模企業者:1社あたり約1170万円
となります。

以上をまとめると、こちらの円グラフの通りに示されます。

<クリックして拡大>
2021年版中小企業白書 より

世界から見た中小企業の定義

これまで日本国内の中小企業についてみてきましたが、世界にも目を向けてみましょう。
OECDのレポート(©OECD. Reproduced by permission of the OECD)などを参考に中小企業の定義を見てみます。

国によって中小企業の定義も、細部が異なるようです。
従業員数だけ見ても200人以下であったり、500人以下であったりと、基準となる数値に大きな開きがあります。
また資本金ではなく、年間売上高の額で中小企業と判定されることもあるようです。

たとえば欧州委員会による中小企業の定義だと、このようになります。
日本貿易振興機構:ドイツにおける中小企業政策とケーススタディ(2021年3月)参照

企業区分従業者数売上
(ユーロ/年)
貸借対照表上の総資産
零細企業9人以下and200万ユーロ以下or200万ユーロ以下
小規模企業49人以下and1,000万ユーロ以下or1,000万ユーロ以下
中規模企業249人以下and5,000万ユーロ以下or4,300万ユーロ以下
中小企業(総称)250人未満and5,000万ユーロ以下or4,300万ユーロ以下
出所:ボン中小企業研究所及び欧州委員会

一方、アメリカの中小企業庁企業規模基準局による定義では、日本同様、業種別に従業員数等の基準を設けています。
ただし業種も日本より細かく分類され、書店業や証券業、さらには新車ディーラー業といった区分もあるようです。

定義の違いはありますが、OECD加盟国だけで見ても各国、企業の95%以上が中小企業です。
中小企業が雇用に占める割合もほとんどの国で60~70%だそうなので、実態は日本とあまり変わらないようです。

中小企業関連サイト

中小企業に関わりの深いWEBサイトをまとめました。
中小企業向けの支援策や補助金の情報など広くまとめられています。

中小企業庁
中小企業の支援といえばまずはこちらです。
創業支援から資金調達、税務・会計情報まで中小企業に関するもろもろの情報を調べるなら、ここからでしょう。
毎年発行される『中小企業施策利用ガイドブック』も便利です。

ミラサポplus
中小企業向け補助金の情報を得たいなら、このサイトです。
補助金以外の支援サポートも発信しているので、折に触れて覗いてみると参考になります。
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