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インターネット上に誹謗中傷の書込みがされた場合の企業対応

SNSをはじめとするインターネット上のコミュニケーション・ツールは今日、広く普及するに至っていますが、これに伴い、インターネット上での誹謗中傷に関する問題も増加しています。

今回は、企業をターゲットにしたインターネット上の誹謗中傷に対し、企業としてどう対応すればよいかを解説したいと思います。

誹謗中傷があったときの事実確認と証拠保存

リスク対応の第一歩は、事実確認です。
誹謗中傷対応であってもそれは同じで、誰が、どのような情報を書き込んでおり、その情報は事実なのかデマなのかなどを確認します。

今回は、インターネット上の書込みが根も葉もない誹謗中傷であったことを前提として解説を進めます。

事実確認を行った際は、確認の対象となった書込みを保存しておくことも重要です。
スクリーンショットによってキャプチャー画像として保存したり、印刷して紙ベースで保存したりすることが考えられます。

この場合、書込みがなされたウェブサイトのURLもしっかり写しておく必要があります。
キャプチャーした画像を撮影した日時や紙に印刷した日時も明確にわかるようにしておきましょう。

誹謗中傷にはどのような対応をとるべきか

次に、企業は、これからどのような対応をとるべきかを検討することとなります。
誹謗中傷の内容を分析して「その書込みがどの程度、自社に風評被害などのダメージを与えるか」という基準を軸にして、対応に濃淡をつけていくとよいでしょう。

一般的に考えられる企業の対応としては、

  1. 無視する
  2. 自社ホームページなどで書込みがデマであることを公表する
  3. 書込みの削除を求める
  4. 損害賠償を求める
  5. 刑事処罰を求める

といったあたりが挙げられます。

誰もがあきれる、あまりに荒唐無稽な誹謗中傷に対しては、「無視する」という対応もあり得るでしょう。
しかし、真実ではないかと疑われ自社にダメージを与えかねないような書込みに対しては、少なくとも自社ホームページなどで、しっかり反論しておくとよいと思います。

誹謗中傷した書込みの削除請求

インターネット上での誹謗中傷に対しては、その削除を求めることも考えられます。
書込みをした者が特定できていれば、直接その者に削除を求める方法もありますし、それ以外であっても、ウェブサイト管理者やサーバー管理者に対して削除を求める方法もあります。

問題は、どのような書込み(投稿)について削除が認められるかです。
「インターネット上の誹謗中傷をめぐる法的問題に関する有識者検討会」が2022年5月に取りまとめた報告書では、次のような投稿は削除されるべきである旨の考えが示されています。

社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められ、インターネット上に残存することで被害者に精神的苦痛を与えるものであって、表現の受け手の観点から見てもインターネット上に残す価値があるとはいえない投稿については、削除されるべきであると考えられる。

インターネット上の誹謗中傷をめぐる法的問題に関する有識者検討会」より
「取りまとめ」(PDF)を参照

なお、誹謗中傷を受けた被害者がプロバイダーに対して、書込みをした者(発信者)の氏名などの情報につき開示を求める制度を定めたプロバイダー責任制限法が2021年に改正されました。
本改正により、ログイン型と呼ばれるSNSにおける誹謗中傷にも有効に対応できるよう、ログイン通信についても開示の対象とされるに至っています。

なお、この改正法は、2022年10月1日より施行されます。

悪質な誹謗中傷に対する民事・刑事ペナルティー

悪質な誹謗中傷に対しては、民事上の損害賠償請求が可能となりますし、民事にとどめずに、侮辱罪などによって刑事上の処罰を求めることも考えられます。

この侮辱罪ですが、2022年6月に改正があり、法定刑が引き上げられるに至っています。
これまでの法定刑が「拘留または科料」であったのに対し、改正後は「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に引き上げられます。

この改正は、2022年7月7日から施行されています。

植松勉 氏(弁護士)

日比谷T&Y法律事務所パートナー弁護士、企業法務・契約実務に精通。
<役職>
東京弁護士会法制委員会商事法制部会部会長
東京弁護士会会社法部副部長
平成28~30年司法試験・司法試験予備試験考査委員(商法)
令和2年司法試験予備試験考査委員(商法)
<著書>
会社役員 法務・税務の原則と例外(編著)
企業のための契約条項有利変更の手引(編著)
民法(債権法)改正の概要と要件事実(共著)など

https://uematsu-law.com/

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