社員のエンゲージメントを高めて企業の活性化を!
企業業績にも大きく貢献する経営指標昨今、人事分野ではエンゲージメントという言葉が注目を集めています。
リモートワークや働き方改革がいっそう浸透している現代において、エンゲージメントの重要性はますます高まってきています。
今回は、そんな人事分野の重要指標であるエンゲージメントについてご紹介します。
目次
エンゲージメントとは何か?
読者の皆さまのなかには、エンゲージメントという言葉を耳にされたことがある方も多いかもしれません。
エンゲージメントとは、社員一人ひとりが企業の掲げる「戦略・目標」を適切に理解し、「自発的に」自分の力を発揮する貢献意欲のことです。
要するに『働きがい』を意味します。
ただし、詳しくは後述しますが、会社が与えるものである「従業員満足度」や個人が感じる「モチベーション」とは異なります。
それらとは違い、エンゲージメントは、会社と個人が双方向でつながる状態を表す指標となります。
近年では経営指標としてエンゲージメントを導入している企業も多く、その重要性はますます注目されています。
エンゲージメントと従業員満足度の違い
エンゲージメントをもう少し深く理解するために、エンゲージメントと従業員満足度の違いについてご説明します。
まず、従業員満足度は、従業員が組織の物理的環境や人間関係等にどのくらい満足しているかを示す指標です。
会社が従業員に「与える」ものに対し、従業員がどのように感じているかが焦点となります。
ここで注意したいのは、従業員満足度はあくまで「満足度」であり、「自発的に貢献したいという態度・姿勢」とは異なるものだということです。
したがって実は、従業員満足度が高まったからといって、従業員の仕事に対する意欲が高まるとは限りません。
従業員満足度と生産性との関係は明確ではないといわれています。
それに対し、エンゲージメントは会社と従業員が「つながる」状態を指し、組織や仕事に対して、自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組めている状態を表す指標です。
エンゲージメントは調査会社の研究の結果、経営指標(企業の収益性や生産性の向上、離職率や欠勤の低下)に効果的であることが証明されています。
そのため、多くの企業がエンゲージメントを経営指標に取り入れているのです。
エンゲージメントが注目されている背景
もともと、人事領域におけるエンゲージメントという概念はアメリカで生まれました。
従来、多くの企業が従業員満足度に重点を置いていました。
ところが、給与や福利厚生を改善し、従業員満足度を向上させたとしても、必ずしも生産性が上がるわけではないことに気づきはじめます。
そして、エンゲージメントが脚光を浴びるようになりました。
2000年以降、エンゲージメントの考え方は日本企業にも広がりはじめ、少しずつ浸透してきました。
とはいえ、終身雇用の文化が色濃く残る日本では、企業への忠誠心を美徳とし、入社した会社に一生勤め上げる風土であったために、エンゲージメントの浸透には時間がかかりました。
たしかに終身雇用や年功序列型で育ってきた経営者・管理職の方々にとってみれば、「滅私奉公せよ」の一言で片づけたくなる問題です。
しかし、はたして今、企業への忠誠心で社員をつなぎとめることができるのでしょうか。
個人の価値観が多様化し、組織と個人の関係が縦のつながりから横のつながりへと変化している現代社会において、会社・管理職側もエンゲージメントを高める努力を行う必要があることに多くの企業が気づきはじめています。
エンゲージメントの構成要素
エンゲージメントは、大きく「ワーク・エンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」に分けられます。ワーク・エンゲージメントとは仕事に対する以下の3つの要素が満たされている心理状態をいいます。
- 活力:仕事から活力を得ていきいきしている
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる
- 熱意:仕事に誇りややりがいを感じている
一方で、従業員エンゲージメントは、組織に対する自発的な貢献意欲を指し、会社の理念戦略や風土に共感しているかどうかが判断軸となります。
エンゲージメントを高めたいといっても、まずはその一つひとつの要素を指標化することが重要となります。
たとえば、【自己成長】に問題が認められた場合は、部下の成長機会や上司からのフィードバックをきちんと得られているかどうかを、【組織風土】に問題が認められた場合は、部署間での協力や挑戦する文化が根付いているかどうかなど、項目ごとに洗い出すことが必要です。
そのために、今では多くのエンゲージメントサーベイが活用されています。
【主なエンゲージメントサーベイサービス】
●モチベーションクラウド
●WEVOX
●ラフールサーベイ
また、エンゲージメントと会社のビジョンは切っても切れない関係性にあります。
会社がひとつのチームとして成長するためには、経営者が従業員に対し、会社の進むべきビジョンを語らなくてはなりません。
会社の方向性を意識し、経営者と従業員の心が通い合ってこそ、会社は真の実力を発揮できるのです。
上司の果たす役割
エンゲージメントを高めるためには、上司の役割が非常に重要です。
たとえば、上司は以下のようなアプローチをとることで、部下のエンゲージメントを高めてあげることができます。
- 上司が業務面でアドバイスをすること
- 部下の健康や気持ちのケアをすること
- しっかりと部下の言葉に耳を傾けること(傾聴)
- 成長の機会を与えること
また、昨今注目を集めている1on1※を活用して、従業員に「自分は正当に評価されている」と感じてもらうのも、ひとつの手です。
そのためには、1on1を形だけのものにしないよう、上司はフィードバック能力を高めることが求められます。
※上司と部下が1対1で行う面談。30分~1時間程度、定期的に対話を行うもの。1on1ミーティングとも。
エンゲージメントを高める人事制度の仕組み
エンゲージメントを高めるためには人事制度の導入や見直しも効果的です。
仕組みから個人の行動を変えていくことができるためです。
たとえば、人事評価の仕組みとして、MBOという仕組みがあります。
MBOとはManagement by Objectives(目標による管理)の略で、ピーター・ドラッカーが提唱した理論です。
これは従業員一人ひとりの目標を経営目標や部門目標と紐づけ、目標の達成度を管理する方法を指します。
MBOにより、評価の指標が明確になり、個人の目標が経営の目標に連動することが実感できるために、会社への貢献意欲につながります。
その他にも、さまざまな人事制度がありますが、導入に際しては、会社の人事制度導入(または見直し・整備)の目的を従業員に対して明確にすることや、公平で公正な評価軸を設定することが重要です。
また、人事制度は成功企業の真似をするのではなく、自社に合うオリジナルの人事制度を設計することが肝要となります。
テレワークが普及し、従来通りのやり方では会社と従業員の関係性が保てない状況下において、エンゲージメントの重要性はますます高まっています。
エンゲージメントは定量化することが難しいと思われがちですが、アンケートやサーベイツールを用いることで定量化することができます。
したかって、人事制度を整備したり、適切なマネジメント手法をとったりすれば、エンゲージメントを向上させることが可能なのです。
エンゲージメントの向上は経営そのものであり、決して人事部で完結するものではありません。
会社と従業員を次のステージに導くためにも、あらためてエンゲージメントについて考えてみてはいかがでしょうか。
御堂筋税理士法人、株式会社組織デザイン研究所所属。
税理士としてクライアントの経営サポートを行うなかで、経営計画と人事制度のミスマッチに違和感を持ち、抜本的な人事制度改革に取り組むようになる。組織デザイン研究所では、数字に強いからこそできる戦略連動型人事を強みとし、クライアントの人事課題解決に尽力している。