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中小企業の役付手当・住宅手当・家族手当はいくらなのか?

東京都調査「中小企業の賃金・退職金事情」に見る各種手当の支給実態とは?
 

中小企業の各種手当の支給状況を調べてみよう

同一労働同一賃金を実施するために、会社の給与体系や手当を見直す会社も少なくないのではないでしょうか。

そもそも手当の支給を継続するかどうかというところまで見直しを検討している方もいらっしゃるかもしれませんが、なによりも金額をどう設定するかは気になるところです。

そんなとき何を参照したらよいのでしょう。

今回ご紹介するのがこちら。

東京都産業労働局:中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)

従業員数10人~299人の都内中小企業を対象に、東京都産業労働局が毎年実施している調査です。
調査内容も「平均賃金」「初任給」「年齢別モデル賃金」「賞与」「手当」など多岐にわたって、中小企業の賃金に関する情報がまとめられています。

賃金事情そのものにも興味がわくところですが、令和2年版調査では「役付手当」「住宅手当」「家族手当」についても調査していることに目を引かれます。

東京都内の中小企業に限った調査ではありますが、賃金制度改定の参考になると思われます。
ここでは各種手当の平均支給額や目立ったポイントを紹介していきます。

役付手当の支給状況

まずは役付手当を見ていきましょう。

役付手当とはある役職についている社員に対して、その役職に応じて支給される手当であるわけですが、東京都産業労働局の調査では「部長」「課長」「係長」の支給状況を調査しています。

そもそも役付手当は支給されているのでしょうか。

○役付手当の支給状況
支給あり 59.8%
支給なし 24.2%
無回答  16.0%

およそ6割の企業で支給しているとの結果です。

過去数回の調査にさかのぼってみるといずれも「支給あり」と回答した企業は70%前後(「無回答」は5%程度)だったので、今回、無回答だった16.0%のなかにも役付手当を支給している企業があるだろうということは推測されます。
ですので、実際はもう少し高いパーセンテージかもしれません。

では役付手当は実際にいくら支給されているのでしょうか。

東京都内の中小企業全体で見ると以下の通り。

<役付手当>(同一役職で支給額は同じ場合)
部長課長係長
最高額427,500円355,000円325,000円
平均額93,789円59,881円28,528円
最低額5,000円1,000円2,000円
<役付手当>(同一役職でも支給額が異なる場合)
部長課長係長
最高額480,000円367,200円359,500円
平均額99,653円67,212円31,229円
最低額20,000円5,700円3,000円

いかがでしょう。
同じ役職でも支給額に相当な開きがあるのが分かります。

部長職でいうと役付手当の最高支給額は480,000円。
役付手当だけで一人、社員を雇えそうな金額です。

ちなみに業種別や従業員数別にも集計されていて、そちらも参照すると、役付手当480,000円を支給しているのは「卸売業・小売業」で「従業員数10~49人」の企業であるようです。

部長・課長・係長それぞれの役付手当最高額を見ると、それぞれ「卸売業・小売業で従業員数10~49人の企業」で支給されているという結果でした。

同一の会社だとすれば、よほど業績の良いのでしょうか。

住宅手当の支給状況

続いて住宅手当の支給状況を見てみましょう。
住宅手当も見直しの対象になりやすい手当かもしれません。

というのも、同一労働同一賃金を目指す流れから、住宅手当を(段階的にでも)廃止する向きがあるようですので。
ご記憶の方も多いと思いますが、近年でも日本郵政が一部の正社員の住宅手当を廃止するとの報道がありました。

そもそも住宅手当は転勤の可能性がある(したがって持ち家を購入しづらい)正社員に対する家賃補助という意味合いがあったとか、なかったとか。
今後は手当を支給する意味も変わることがあるのかもしれません。

なにはともあれ、住宅手当はどれくらい支給されているのでしょうか。

○住宅手当の支給状況
支給あり 34.4%
支給なし 50.7%
無回答  14.9%

役付手当に比べると、住宅手当はあまり支給されていないように見えます。

住宅手当の支給金額はいくらでしょう。
一律に支給している場合と、賃貸と持ち家で異なる場合と両方見てみます。

<住宅手当(一律に支給する場合)>
扶養家族あり扶養家族なし
最高額60,000円47,000円
平均額17,825円14,676円
最低額1,000円1,000円
<住宅手当(住宅の形態別に支給する場合)>
扶養家族あり扶養家族なし
賃貸持ち家賃貸持ち家
最高額80,000円35,000円97,200円30,000円
平均額24,030円16,628円19,966円13,148円
最低額2,000円2,500円1,500円1,500円

最も高額だったのは「賃貸・扶養家族なし」で97,200円の支給。
こちらも「卸売業・小売業で従業員数10~49人の企業」で支給されているようです。

「賃貸・扶養家族あり」の住宅手当なら最高額80,000円で、こちらは「製造業で従業員数50~99人の企業」での支給です。

家族手当の支給状況

最後に家族手当の調査結果を見てみましょう。

ひとくちに家族手当といっても、配偶者に対して支給されるのか、子供に支給されるにしても第一子・第二子で金額が変わるのかなど、支給方法はさまざまです。

その会社ごと、いろいろな考え方があるでしょうが、ともあれ支給状況の確認から始めましょう。

○家族手当の支給状況
支給あり 46.1%
支給なし 38.8%
無回答  15.1%

家族手当の「支給あり」で46.1%という数字。
この数字を見て高いと思いますか。それとも低いと思うでしょうか。

再確認のため思い出していただきたいのが、今回ご紹介している数字は東京都内の中小企業を対象にした調査結果だということです。

すこし脱線して、人事院による令和2年度調査をのぞいてみましょう。
対象は中小企業に限りませんが、人事院でも家族手当の支給状況を調査していました。

全国、従業員数50名以上の企業を対象とした調査ですが、家族手当を支給している企業は全体の75.9%とのことです。

人事院:民間給与の実態
家族手当の
支給状況
規模計500人以上100人以上
500人未満
50人以上
100人未満
制度あり75.9%75.8%77.2%71.6%
制度なし24.1%24.2%22.8%28.4%
令和2年職種別民間給与実態調査の結果

企業規模の区分の仕方も違うので、一概には言えませんが、東京都産業労働局の調査に比べると大きな差が見られます。
こういうところにも地域差が表れているのかもしれませんね。

閑話休題、東京都産業労働局の調査に戻って、家族手当の支給金額を調べてみましょう。

<家族手当(一律に支給する場合)>
一律支給
最高額30,000円
平均額9,940円
最低額100円
<家族手当(家族別に支給する場合>
配偶者第一子第二子第三子
最高額40,000円30,000円30,000円34,000円
平均額10,589円5,919円5,351円5,374円
最低額1,000円500円500円300円

企業それぞれの考え方ではありますが、子供に対する家族手当の場合、第一子をいちばん高い金額に設定する企業もあれば、第三子の方が高額に設定している企業もあるようです。

詳しく見てみると、第一子に最高額30,000円を支給しているのは「情報通信業で従業員数10~49人」の会社でした。

いっぽう、第三子に最高額34,000円を支給しているのは「不動産業・物品賃貸業で従業員数50~99人」に会社のようです。


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