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部下のやる気を引き出す効果的なフィードバックの方法

フィードバックとは?というマネージャーのための

読者の大半は、プレイングマネージャーとして、自身の業務やタスクも抱えながら、マネジメントをしているのではないでしょうか。

産業能率大学総合研究所は2022年2月、職場状況や部長の意識についてのアンケート調査結果「上場企業の部長に関する実態調査(第2回)」を発表しました。
そのなかで、部長職のほぼ97%もの人が、本来の業務であるマネージャー業務と現場でのプレイヤー業務を兼務するプレイングマネージャーとして稼働している現状が明らかになったとしています。

フィードバックがもたらす効果

このような状況だからこそ「部下にはやる気を出してみずから行動してほしい」と、切実な悩みを抱えたマネージャーの声を聞くようになりました。
人を育てる環境変化も大きく、「注意しただけなのに、ハラスメントと受け取られてしまった」「転職の壁が低くなって、せっかく育てた人材が離れていってしまう……」と、戸惑いを感じながら手探りで育成している現状もお聞きします。

また、これから日本の労働力人口が減少していくなかで、再雇用制度の導入により年上部下をマネジメントする立場にある方や、外国人労働者を迎え入れている企業で人材育成をしている方もいるのではないでしょうか。

人が育つ環境の変化、人材の多様化が進む状況で「フィードバック」のニーズは今以上に、今後ますます高まっていくことが予測されます。
なぜなら、フィードバックがもたらす効用は「コミュニケーションが円滑になる」「職場環境のほころびを早く察知できる」「問題が小さいうちに対応できる」、ひいては「部署の業績アップ」「職場満足度のアップ」と、個人と組織両方にとって大きいからです。

フィードバックの定義

このフィードバックという言葉ですが、昨今は職場で使用したり、聞いたりする機会も多いのではないでしょうか。

しかし、この「フィードバック」という言葉の捉え方にはさまざまな見解があります。
ある管理職の方は「部下との人事考課面談で評価を伝えるときのこと」と、場面を切り取ってフィードバックと表現していました。

読者のみなさんはどのように捉えていますか?

ここからは私が、フィードバックをどのように定義しているか、どのようなプロセスがあるのかをお伝えしていきます。

フィードバックとは「部下や後輩の成長促進※を目的とし、行動・成果に対して結果を伝えること」と私は定義しています。
※成長促進とは:気づき(現状認識)を促し、新たな行動を起こすこと

部下の気づき(現状認識)を促すためには、部下が自己理解を深める働きかけを、第三者(特に上司)がする必要があります。
また、部下の新たな行動を促すためには上司が信念を語り、本人によって具体的目標を設定できるような関わりをし、目標達成に向けての期待通知をすることも必要です(図1:フィードバックのプロセス)。

フィードバックのプロセス
図1:フィードバックのプロセス

そして、具体的目標に対して実践している部下の行動に着目して、変化を通知することも忘れないようにしましょう。

フィードバックのプロセス

では、具体的にどのように進めていくのかを見ていきましょう。

フィードバックを始めるには

プロセスの始まりは、信頼関係の構築情報収集です。
情報収集をする際には、複数の情報を収集することがポイントになります。
そのためには、部下との信頼関係構築が必要不可欠ですが、この実現には日々の小さな積み重ねが欠かせません。

たとえば、部下から声をかけられたときにはなにか違うことをしながら応対するのではなく、いったん手を止め部下と目線を合わせてしっかり話を聴くなどです。
日々の業務のなかで無意識にしていたことが、部下の信頼を失っているのではないか?と振り返る時間も意識的に設け、日々の行動につなげていきましょう。

情報収集の際には、(1)どのような状況(場面)のときに(2)どのような行動が(3)どのような結果を招き、影響をもたらしたかという3つのポイントを踏まえて情報を整理していきます。
また、第三者から聞こえてきた情報に関しては、その内容を鵜呑みにするのではなく、さらに事実確認のための情報収集が必要なこととしておきます。

フィードバックする伝え方

情報が収集されて、いよいよ本人への通知です。
その際には、相手を映し出す鏡になり、上記に記載した情報収集の(1)~(3)を伝えます。
たとえば、「(1)営業会議で発表するから作成してほしいと頼んでいた資料の件だけど、(2)期日に間に合わず、役員に口頭説明になってしまって(3)わかりづらいと言われたよ」でじゅうぶんなのです。

  1. どのような状況(場面)のときに
    営業会議で発表するから作成してほしいと頼んでいた資料の件だけど
  2. どのような行動が
    期日に間に合わず、役員に口頭説明になってしまって
  3. どのような結果を招き、影響をもたらしたか
    わかりづらいと言われた

しかし、ついつい自分(上司)が受けた影響を「おかげで、私が恥をかいてしまったじゃないか!」のように感情的な言葉で伝える方がいます。
思わず言いたくなることもあるかもしれませんが、ここでは、事実を伝えるのみに留めておきましょう。

フィードバックした後に伝えること

事実通知の後は、部下との対話と振り返りで現状と目指すゴールを明確にしていきます。
ここでのポイントは、部下本人が問題をどう受け止めているのか、言語化できるようサポートすることです。
部下が自分の口から問題を捉えなおすことで、課題を形成していくことにつながります。

そして、何をもって目標クリアなのか共通認識ができるまで対話し、目標達成のためのアクションプランや阻害要因を検討して再発予防策を立てていきます。
この段階で、部下はやることが明確になっています。
ここから行動変容につなげるためにも、上司自身の言葉で要求や今後の期待を伝え、面談を締めくくってください。

要求や期待を伝えるポイントは『愛(I)メッセージ』で伝えることです。
ぜひ、私の思い(どうしたいか)・期待(どうしてほしいか)を、「私」を主語にして伝え、部下や後輩の「お守り」となるような愛あるメッセージを届けてください。

フィードバックをするのは、心理的負担もあることでしょう。
上司自身が心の平穏を保つ取り組みをしながら人材育成に取り組んでいっていただきたいと思います。

【参考文献】

藤井由香里 氏(キャリアコンサルタント、人財育成プロデューサー)

人材育成会社の社長秘書として第一線の顧客対応にあたるほか、育成人事として社内育成や採用活動、キャリア面談、メンタルヘルス対応、ハラスメント相談窓口を経験。
人と仕事との出逢いを通じて、“機会”を創出してきた体験から「笑顔で働く人を増やす」をモットーに、受講者の自信とやる気を引き出す、きめ細やかな指導を信条にしている。
京都芸術大学非常勤講師。著書に『LIFE CAREER 人生100年時代の私らしい働き方』(渡部昌平・編著)/金子書房 第5章「ビジネスマナーから自律を学ぶ」)がある。

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