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パートタイマーの評価と時給の決め方・上げ方

 

いまや中小企業に欠かせない戦力となっているのがパートタイマー。そのやる気を高めるには、働きぶりに応じた評価に基づき賃金を上げることも考えるべきだ。効果的な時給の決め方・上げ方と評価について解説する。

総務省の労働力調査によると、2011年の非正規の雇用者数は1,733万人で、全雇用者に占める割合は35.2%に達しています。非正規の雇用者のうち、パートタイマー・アルバイトは前年比で33万人増加し、1,181万人となっています。この間に正規の雇用者数は25万人減少していますので、それを補う形でパートタイマーやアルバイトが増加した計算になります。
人数が増えただけではありません。仕事の内容にも変化が出てきています。「パートの仕事」というと、従前は単純作業と決まっていましたが、最近は責任のある仕事を任せるケースも増えてきています。なかには「店長」などの管理職を委嘱することもあります。

その働きぶりが会社の業績をも左右することになりますから、いかにしてパートタイマーのやる気を引き出すかを考えなければなりません。
その際、正社員の雇用管理と同様に、ポイントになるのが評価と賃金です。
能力や仕事ぶりを評価してあげることでやる気を刺激することになりますし、その結果を賃金に反映させればモラールアップを図ることができます。

パートタイマーの賃金はどのように決めるべきか

パートタイマーの賃金動向

パートタイマーの賃金は、一般的に時給制がとられています。
厚生労働省の調査によると、女性のパートタイマーの平均時給は図表1のように推移しています。
2005年以降で見ると、基本的には上昇傾向にあるといってよいでしょう。
パートタイマーに対するニーズが高まれば、時給も上昇することになります。
もちろん、規模・業種や年齢、また地域や仕事の内容によっても違いがあります。
自社の時給と相場を比較する場合には、その点を確認しておく必要があります。

賃金の決め方の現状

前述したように、パートタイマーの場合は時給で賃金を決めることが多く、短時間だけ働くというパートタイマーの働き方に適した決め方といえます。

この場合の時給の設定については、たいていは自社の属する業種や地域特性などを考慮して一定の範囲で決められています。

パートタイマーの職種別、地域別等の時給に関する有用な統計データとして、前出の厚生労働省の賃金構造基本統計調査があります。
民間では、アイデム人と仕事研究所が定期的に「パートタイマーの募集時平均時給レポート」を出しています。
リクルートでも「アルバイト・パート全国エリア別募集時平均時給調査」を公表しています。これらを参考にするとよいでしょう。

もちろん、仕事の内容によって違いはあるでしょうが、パートタイマーは単純定型的で補助的な仕事を担当することが多いため、いわゆる職務給的な決め方がなされているのが一般的です。

つまり、正社員のように定期的な昇給は考慮されてこなかった、ということです。

実態に合わせてフレキシブルに

もっとも、ひと口にパートタイマーと呼ばれていても、業種によっても、会社によっても、期待されている役割には違いがあるはずです。

そうすると、賃金決定方法もこれまでのようなやり方にとらわれる必要はありません。一律というような決め方をすることが、パートタイマーの活力を削いでいる可能性もあります。

むしろ、自社におけるパートタイマーの位置づけを明らかにしたうえで、期待する能力や成果に応じて賃金決定方法を変えるべきではないでしょうか。

たとえば、専門的な知識や能力を求めるのであれば、能力基準を明らかにしたうえで、能力に見合う賃金を支払うようにすべきだということです。
また、責任の重い役職につけるのであれば、それに見合う手当を支給することも考えるべきです。

一方で、従来のように単純な仕事だけをやってもらうのであれば、これまでどおりの時給の決め方でも構わないといえます。

つまり、意欲や能力のあるパートタイマーの力を引き出すためには、賃金の決め方をフレキシブルにすることが重要です。
なお、パートタイマーの時給を決める際には最低賃金にも留意しておく必要があります。

最低賃金は、雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用されますので、これを下回る賃金を設定することはできません。

ちなみに2011年10月からの地域別最低賃金は、645円(岩手県、高知県、沖縄県)〜837円(東京都)となっています。

パートタイマーの格付けと評価

パートタイマーの格付け

以上のような賃金の決め方をするにあたっては、当然のことながら、パートタイマーの能力や仕事の責任の重さについての評価が必要になってきます。

正社員については、すでにそうした仕組みが導入されていることが多いですが、パートタイマーに対してまで適用されているケースは少ないでしょう。

もっとも、平成19年のパートタイム労働法の改正によって、正社員と同視できるパートタイマーについては賃金や教育訓練等で差別的な取扱いは禁止されています。
したがって、これに該当するパートタイマーは、正社員と同様の取扱いがなされているはずです。
いずれにしても、能力や責任の重さで賃金を決めるのであれば、それを評価したうえで格付けを行なうことが必要になってきます。

これは、正社員に適用されていることの多い職能等級制度と同様のものをつくるということです。

その一例が図表2です。

これは小売業を対象としたものですが、自社の業務内容に応じた形でこうした項目を設定し、能力要件を作成すればよいでしょう。
そのうえで、それぞれのパートタイマーの能力を評価して格付けすることになります。
また、この能力要件は、パートタイマー側からみた場合には能力開発目標になります。

どのような能力を身につければ、どこに格付けされるかがわかりますので、目標を設定しやすいでしょう。

パートタイマーの評価

この要件に基づいて格付けした後は、1年に1回または2回程度の評価を行ないます。
このときの評価要素は、正社員と同じでも構いません。
一般的には意欲、能力、成績の3つの要素を評価の対象にしています。
自社の特性を考慮したうえで、評価の細目を設定します。

また、要素別の評価点についても、ウエイト付けをして自社における評価の重点を明らかにするとよいでしょう。
つまり、重視するのは意欲なのか、能力なのか、成績なのかを明示することです。

あわせて評価者には、次のポイントを意識させてください。

  • 減点主義ではなく加点主義で評価すること
  • 評価結果については必ずフィードバックすること
  • 能力開発という観点からの評価を心がけること
  • 評価結果についてフォローをしていくこと

また、パートタイマーを役職につけることがあるのであれば、その役割の重さに対応した形での手当を支給すべきでしょう。

たとえば、パートタイマーに店長を任せる、というケースがないわけではありません。
そうした場合には、「店長手当」といった形での上乗せをするということです。

パートタイマーの賃金の改定

改定時期

正社員の場合には、一般的には4月が賃金の改定時期になっています。これと一緒にするのが基本的な考え方といえます。

また、パートタイマーの場合には期間を定めて契約していることが多いので、契約更新の時期に個別に時給を改定することも考えられます。
改定額をいくらにするかの基準として、あらかじめ時給の賃金表(図表3)を定めておくとよいでしょう。

これはいわゆる等級号俸表のようなものです。
これがあれば、評価によって賃金を決めるときに悩む必要がありません。
改定額の設定として、号俸の刻みは10円単位で定めるのが一般的です。

降給する場合の扱い

時給を改定するというと、基本的には昇給ということになりますが、最近は降給という取扱いをすることもあります。

評価結果が悪い場合、降給することがすべて不利益変更になるものではありません。
仕組みとして制度のなかに組み入れていれば、それに基づいて時給を引き下げることは可能です。
したがって、降給を実施するにあたっては、あらかじめ降給の仕組みを制度として設けたうえで、採用時に働きぶりが悪ければ降給がある旨の説明をしておくべきでしょう。

特に大事なのは、どういう場合にそうなるのか、先に評価基準を示しておくことです。

ただ、当事者からすれば降給はなかなか納得できないでしょう。
そこでどうして、そのような取扱いになるのかについて、きちんとした説明をすべきです。
正社員に評価結果をフィードバックするときと同様に、パートタイマーに対しても面談を実施することが肝要です。

よかった点、悪かった点、能力が優れている点と劣る点、などについて振り返りをすべきだということです。

なお、こうしたフィードバックは時給の改定がない場合も行ないましょう(何の説明もなく自分だけ時給が上がらない、といったことが起これば、降給のときと同じような不満が生まれがちです)。

このとき、根拠となる行動や数字を明示すると納得しやすいと思います。そのために評価者はパートタイマーの日常の行動を確認して記録を残すことも忘れてはなりません。

パートタイマーに対する賞与・退職金等の取扱い

パートタイマーを戦力化するためには、処遇の面で社員と均衡のとれた形にすべきであることは言うまでもありません。

改正パートタイム労働法では、トラブル防止という観点から、昇給、賞与、退職金についての有無を書面で明示することを義務づけていますが、賞与や退職金は必ず支給しなければならないというものではありません。

パートタイマーの働きが会社に貢献しているのであれば、賞与等の支給対象としたほうがモラールは上がります。
賞与等を支給する場合、正社員と同じ支給基準でよいかどうかも問題になります。

支給するならパートタイマー向けの賞与支給基準を、正社員に適用しているものとは別途に定めたほうがよいでしょう。

パートタイマーの仕事が単純定型的で補助的なものであれば、賞与ということではなく「寸志」といった形での支給でも、やる気の向上につながります。
寸志とは、文字どおりささやかな贈り物ということですから、いくらにするかは経営者の考え方次第です。

通常は1万円とか2万円といった額になるのが一般的です。また、あくまで「贈り物」ですから、勤続年数や評価によって差をつけるべきではないでしょう。

もっとも、賞与や寸志を出さないぶん、時給を高くしたほうがパートタイマーを集めやすくなります。その点も考慮して支給するか否かを判断しましょう。

退職金について、パートタイマーは支給対象外としていることがほとんどでしょう。
退職金制度は、そもそも「長期勤続」を奨励する意味をもつものですから、通常はパートタイマーという働き方にはなじまないということです。

月刊「企業実務」 2012年6月号
藤永伸一(人事コンサルタント)

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