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貯蔵品の管理を効率的に行うコツ

ミス・モレをなくそう
 

貯蔵品は金額的には大きくなくとも管理にはそれなりの手間がかかりますし、おろそかにすれば様々なロスが生じます。そこで効率的な管理のためのポイントを紹介します。

「山田くん、よくできたね。狭間商事への提案書はこれでいこう。明日までに10部用意してくれ」

新入社員の山田くん、はじめて1人で作成した提案書を課長に褒められて、大喜びで自分の席に着きました。時計を見上げるともう午後8時を過ぎています。

「訪問時間は明日の午後1時だから、プリントアウトは明日にしよう」

そう思い、家路につきました。

さて、翌日、インクジェットプリンターで出力していると、1枚目の途中でインクが切れてしまいました。インクの在庫を調べたら、必要な黄色の在庫がありません。

消耗品の発注担当の総務の高橋さんを探すと、きょうは風邪で休んでいるとのこと。自分で買いに行くことになりました。
結局、準備が終わったのは、会社を出なければならない時間でした……。

みなさんも似たような経験をされたことがありませんか。
使用されていない事務用品や消耗品、パンフレットや配送用のダンボールなどを総称して貯蔵品といいます。
日常の仕事のなかでスポットライトの当たることの少ないこの「貯蔵品」ですが、なくては困る必需品。管理がうまくできていないと、思わぬ時間のロスにつながります。
また、雑に管理していると、「コピー用紙がよれてしまった」「パンフレットが使えなくなった」など、お金と資源の無駄につながることもあるでしょう。

会計上のルールで、管理しなくてはならないものもあります。

今回は、貯蔵品の効率的な管理方法について考えてみました。

貯蔵品は2つに区分して管理する

貯蔵品とは、原材料や商品または有形固定資産以外のもので、販売や業務をするために必要な道具や物品であり、まだ使っていない状態のものをいいます。

要するに、会社が購入した形のあるものは、商品や材料など販売用のものや長期に渡って使用するものを除いてすべて貯蔵品だといってもよいでしょう。

具体的には、切手、収入印紙、事務用品、サンプル、カタログやパンフレットといったどこの会社でもありそうなものから、タイヤ、発送用の伝票、修理などに使うビスや工具、包装用の資材、制服や長靴なども貯蔵品です。

貯蔵品を管理するにあたっては、その重要性の違いから、まず、大きく「金銭等価物」とそれ以外のものに分けるとよいでしょう。

金銭等価物とは、お金と同等の価値があるものです。換金性のある切手や収入印紙、商品券、旅行券などをいいます。

換金性があるということは、不正の原因になる可能性も高くなり、厳重に管理することが望ましいといえます。

一方、それ以外の貯蔵品は、それほど厳密な管理を要求されませんが、管理をしなくてよいわけではありません。
カタログを顧客に依頼されたにもかかわらず、手元にあるものが色褪せていて送れなかったり、伝票に得意先のサインをもらわないと受注ができない会社なのに受注伝票が切れていて受注できなかったり、ささいなミスが原因で、機会ロスが起きることも少なくないのです。

金銭等価物の管理

(1) 担当者を決める

収入印紙や切手については、どこの会社でも管理担当者がいると思いますが、商品券や図書券、旅行券などについての取扱いは会社によってまちまちなようです。

営業の担当者が販促用にまとめて買って、半分は顧客に渡したが残りの半分はどこにいったかわからなくなる、といったことも起こりがちですから、すべて担当者を決め、一元管理しましょう。

(2) 管理表を作成する

担当者を決めたら管理表()を作成しましょう。

金銭等価物といっても、10円切手まで管理をしていると時間がいくらあっても足りませんから、管理する金額の単位をあらかじめ決めておくとよいと思います。

私がお勧めするのは、1枚1,000円以上のものについては管理表を作成することです。
切手の場合、額面が50円や80円でも、シートごとに大量に購入し、各部門に定期的に配布するということもあると思いますから、シート単位で管理するとよいでしょう。

(3) 定期的に残高を確認する

管理表で管理しているものは、基本的には管理表の帳簿残高と実際の残高に誤差が生じにくいと思いますが、できれば1か月に1度は残高の確認をしましょう。

その際、管理者と確認者を分けることが重要です。

通常は、管理者の上司が確認をすることになると思いますが、上司が忙しく確認が滞るようなら、確実に時間をとることができる人が担当します。

第三者が確認するということが、気を引き締め、ミスを減らすことにつながります。

その他の貯蔵品の管理

(1) 何があるかを洗い出す

その他の貯蔵品の数や内容は会社の業務内容によって違います。

面倒でも1度、その洗い出しをすることをお勧めします。

それぞれの部署で使用しているすべての貯蔵品の品番、仕入先、入数などをまとめてみましょう。

ある会社では、各部門で発注しているA4のコピー用紙の白の色が違っていて、在庫が切れたときに他部門のコピー用紙を使おうとしても使えなかったことがあるそうです。

(2) 担当者を決める

その他の貯蔵品についても管理担当者を決めましょう。

事務用品などの管理は担当者を決めていても、カタログやサンプルなどの管理は担当者が決まっていないケースがあるようです。

管理担当者は管理表の作成・記入などをする必要はありませんが、発注と定期的な在庫チェックに責任をもつようにするとよいでしょう。

(3) 定位置を決める

どんなものにも置き場を与えることが、整理整頓のコツです。

もし、スペースに比してものが多すぎ、定位置を与えられないのならば、思い切って捨ててしまいましょう。

昔の住所が印字された封筒、以前のイベントで使って少しだけ残った販促物など、いつかは誰かが使うだろうと見て見ぬふりをされている貯蔵品は、もったいないなどと思わないことです。

もったいないと思うならば、これからは適正量の発注を心がけること。会社にも〝断捨離〞は有効です。

(4) 必要に応じて廃棄証明を残す

サンプル、特に商品とほぼ同じ価値がある見本品を廃棄するときは、廃棄証明を残しておきましょう。

季節ものであったり、流行りものであったりした見本品が大量に残ることもあると思います。

見本品とはいえ、売却する価値があると考えられるものを廃棄して、損金にする場合には、廃棄証明をとっておくようにするとよいでしょう。

(5) 最低在庫数を決める

貯蔵品を洗い出したら、最低の在庫数を決めましょう。

リードタイム(発注から納品までの日数)と使用の頻度を鑑みて決めるのがポイントです。

(6) 発注カードをつくる

貯蔵品それぞれに、発注の情報を記載した発注カード()をつくります。

パウチ加工をするか、厚紙に印刷するなど、紛失しにくいようにするとよいでしょう。

発注カードはそれぞれの貯蔵品の最低在庫数のあたりに挟みこみます。
最低在庫数に到達したら、最後に使った人が発注担当者にそのカードを渡します。

担当者は、カードの情報に基づいて貯蔵品を発注し、納品されたものを棚に置く際に、最低在庫数のところに発注カードを挟むようにします。
貯蔵品の管理のイニシアチブをとるのは1人でも、実践は社員全員の協力が必要になります。

誰でも気楽に協力できるようなシンプルでわかりやすい方法を採用したいところです。

貯蔵品の会計処理

さて、ここから貯蔵品の会計処理についてみていきます。

税法上も金銭等価物かその他かによって取扱いが異なります。

金銭等価物

購入したときではなく、実際に使用したときに経費になります。在庫品が少額であっても、貯蔵品処理をします。

たとえば、収入印紙4,000円を現金で25枚購入し、当期中に5枚使用、決算期末に20枚の未使用印紙が残っているときには、購入時は、10万円(4,000円×25枚)を租税公課として計上し、決算期末に未使用分の8万円(4,000円×20枚)を租税公課から減らして、貯蔵品として資産計上します。

【購入したとき】
(借方)租税公課100,000円/(貸方)現金100,000円

【期末時】
(借方)貯蔵品80,000円/(貸方)租税公課80,000円

費用計上されるのは10万円(購入額)-8万円(在庫額)=2万円であり、期中で使用した枚数と一致します。

その他の貯蔵品

原則的には、金銭等価物と同じように、購入したときではなく、実際に使用したときに経費となりますが、法人税基本通達2-2-15によると、次の3つの要件をすべて満たせば、購入したときに経費にできるので、在庫計上を省略できます。

  1. 各事業年度ごとに、おおむね一定数量を取得する
  2. 経常的に消費する
  3. 継続して取得(購入)時に損金算入をしている

ただし、注意していただきたいのが、期末直前に大量購入をするような場合です。

予算消化のために貯蔵品を期末にまとめて購入することもあると思いますが、このような場合は先に示した要件にあてはまりませんので、使用していないものは経費にならず、在庫として計上することになります。

月刊「企業実務」 2011年4月号
木村三恵(税理士)

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