同一労働同一賃金はどうやって設計する?事例で学べるガイドブックをご紹介します!
日本商工会議所から公開されているガイドブック「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」中小企業でもついに2021年4月から施行された「同一労働同一賃金」。
正社員と非正規社員に支給する賃金や手当について「均等待遇」「均衡待遇」だとか「不合理な待遇差が禁止」などと言われますが、どうすれば適切に対処できるのでしょうか。
2020年10月、同一労働同一賃金に関して、大きく注目された最高裁判決が立て続けに5つも出たことは記憶に新しいところでしょう。
判決のいくつかについては「不合理な待遇差」だとして、会社側の見解が否決されています。
社員のためにも会社のためにも、問題のない対応にしておきたいところです。
そこで注目したいのが、日本商工会議所から公開されているガイドブック「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」です。
目次
同一労働同一賃金の対応はどれくらい進んでいる?
そもそも同一労働同一賃金に対する、企業の対応はどのくらい進んでいるのでしょうか。
日本商工会議所と東京商工会議所が合同で実施した調査(2021年4月発表)がありますので、まずはこの調査結果を見ることにしましょう。
同一労働同一賃金の「対応に目途がついている」のは全体の56.2%という回答結果です。
その内訳は以下の通りです。
○同一労働同一賃金への対応に目途がついている・・・56.2%
「コロナ禍における雇用・就業面での対応等に関する調査」より
・既に必要な対応は終えた:11.0%
・現在取り組んでいる最中:37.3%
・具体的な対応が決まり、今後取り組む予定:7.9%
その一方で、非正規社員に対して待遇差を「客観的・合理的に説明ができる」と回答した企業の割合は41.1%ということです。
いまや働いている方々の4割が非正規雇用ともいわれています。
そのうえ、70歳までの就業確保を見据え、定年後再雇用という形で新しい働き方が広まるとなると、このさき対応を考えなければならない企業が増えてくることも想像できます。
どの企業でも、同一労働同一賃金にかなった賃金や手当の設計を考えておくのは避けられないということでしょうか。
「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」がオススメ
「それじゃあ、どうしたらいいの?」という方にご紹介したいのが、日本商工会議所で作成されたこちらのガイドブックです。
「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」(PDF 24.5MB)
「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」を公開~ガイドラインや最新の裁判例を踏まえて、各待遇・手当ごとに企業の具体的な対応を解説~
日本商工会議所 ニュースライン2020年11月30日 より
このガイドブックはPDFで公開されていますが、印刷されたものも全国の商工会議所で配布されているようです。どちらかでご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんね。
ところで、ひとくちに同一労働同一賃金とはいうものの、正社員と非正規社員とのあいだで職務内容や責任の範囲が異なれば、待遇も異なることでしょう。
ただし、職務内容や仕事の責任などに関係なく、合理的でない待遇差をつけるならば、それは問題です。
たとえば皆様の会社では、こんな区別をしていらっしゃいませんでしょうか?
- 正社員とパート社員とで手当を区別している
- 正社員のときには支給した手当も、定年後再雇用者には支給していない
この待遇差が不合理ではないというのは、何を根拠にしたらよいのでしょうか。
正社員と非正規社員で賃金や手当に差をつけることについて、これまでさまざまな裁判例が出てきていることは申しあげたとおりです。
重要な判例については報道でも大きく取り上げられていたように、すこし大げさにいうなら、不合理な待遇差は訴訟リスクを抱えているといえます。
そこで「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」の出番です。
この「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」はこれまでの出た裁判例やガイドラインをもとに、会社で支給するいろいろな手当ごとにポイントをわかりやすく教えてくれるのです。
待遇差が問題となる例、問題とならない例を示してくれる!
同一労働同一賃金において、不合理な待遇差は禁止されます。
ですが、わざと不合理な差をつけようと考えている方はいないはずです。
にもかかわらず、ときに裁判になってしまうのはそれだけ、正社員と非正規社員とのあいだの待遇差を設定するのが難しいからだとも考えられますね。
待遇に関する説明義務もありますので、人事労務担当者は気が気でないかもしれません。
「こういう場合は大丈夫なの?」「こう区別したら、どうか?」と疑問に思うこともあるでしょう。
「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」で注目したいのは、問題となる場合、問題とならない場合を具体的な事例として教えてくれる点です。
基本給や賞与だけでなく、役職手当や通勤手当、住宅手当などの各種手当についても、「問題とならない場合は~~」「問題となる場合は~~」というように具体的な事例を挙げてくれています。
それでは「役職手当」を見てみましょう。どんなケースだと問題にならなくて、どんなケースだと問題になるのでしょうか。
【役職手当】
問題とならない例
役職手当について、役職の内容に対して支給しているA社において、通常の労働者であるXの役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く短時間労働者であるYに、所定労働時間に比例した役職手当(例えば、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者にあっては、通常の労働者の半分の役職手当)を支給している。
問題となる例
役職手当について、役職の内容に対して支給しているA社において、通常の労働者であるXの役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く有期雇用労働者であるYに、Xに比べ役職手当を低く支給している。
この例だと、労働時間に比例して支給しているなら短時間労働者と差があっても問題にならないと考えられるようです。
その一方で、職務内容に対して支給するなら同一の役職・内容である限り、有期雇用かどうかで差をつけるのは問題になるのだろうということが読み取れそうです。
ちなみに、この「役職手当」の項目では、報道でも取り上げられた裁判例も紹介しています。
判決そのものを読み通すのはたいへんですが、「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」ではコンパクトに判決内容がまとめられています。
待遇差について何が不合理で、何が不合理ではないかも実例から学ぶことができますね。
同一労働同一賃金ガイドラインよりわかりやすい解説!
じつはこういった内容はすでに「同一労働同一賃金ガイドライン」のなかで、典型的な事例として整理できるものはまとめられていました。
厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
たしかに詳しく書かれているのですが、文字ばかりなので読むだけで疲れてしまいます……。
「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」なら、各種待遇の対応について──
- ポイント
- ガイドラインの考え方
- 問題とならない例/問題となる例
- 関連する裁判例
- 企業における対応
というように、項目別にカラフルにイラスト付きで説明してくれるので、ストレスなく読めそうです。
もちろん他にも「同一労働同一賃金の基本的な考え方」や「均等待遇」「均衡待遇」といった用語解説など、情報盛りだくさん。
まずはこの1冊があれば同一労働同一賃金のあらましと対応策のたいていは理解できるのではないでしょうか。
同一労働同一賃金の対応にお悩みの人事労務担当者様はぜひいちどご覧いただくと、なにかしらヒントが得られるかもしれません。
「同一労働同一賃金まるわかりBOOK」はこちらからPDFでお読みいただけます。
同一労働同一賃金まるわかりBOOK」を公開~ガイドラインや最新の裁判例を踏まえて、各待遇・手当ごとに企業の具体的な対応を解説~(日本商工会議所)
https://www.jcci.or.jp/news/2020/1130103000.html