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時間外労働に対する割増賃金の計算方法

2023年4月から中小企業でも割増賃金率改定へ!
 

2023年4月1日からは、中小企業でも月60時間を超える時間外労働に対して、50%以上の割増賃金の支払いが必要になります。

ここであらためて割増賃金の算出方法について確認しておきましょう。

時間外労働に対する割増賃金の計算式

はじめに割増賃金の計算式を確認しておきましょう。

割増賃金の計算式

月給制の場合は、まず時間単価を算出します。そこに割増率を掛け算して割増賃金を計算することになります。

ただし、時間単価を算出するのに必要な「諸手当」には、割増賃金の計算から除外される手当があります。
また「月平均所定労働時間」にも計算式があります。

以下では、それぞれ順に確認していきましょう。

割増賃金の計算から除外する諸手当

割増賃金を計算するためにはまず、時間単価を算出する必要があります。

割増賃金の基礎となるのが、基本給と諸手当の合計です。
この合計額を1か月あたりの平均所定労働時間で割るわけですが、一部の手当は割増賃金の基礎から除くことができます。

<割増賃金の計算根拠から除外できる賃金>
  1. 家族手当(家族の数に関係なく一律に支給される場合等は除外されない)
  2. 通勤手当(通勤費用と関係なく一律に支給される場合等は除外されない)
  3. 別居手当(単身赴任手当等が該当する)
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当(住宅の費用に関係なく支給される場合等は除外されない)
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

つまり逆にいうと、これら以外の手当は割増賃金の基礎に含めなければならないということになります。

月平均所定労働時間の算出

つづいて、時間単価を算出するときの分母となる、1か月あたりの平均所定労働時間の計算式です。

月平均所定労働時間の計算式

なお、ここでいう所定休日は、就業規則で定めている所定休日の日数の合計のことです。

時間外労働に対する割増賃金率

時間単価が算出できたら、そこに割増率をかけて割増賃金を計算します。

時間単価×割増率×時間外労働時間数等

中小企業でも2023年4月1日以降、時間外労働における賃金の割増率は下表の通りになります(大企業では2010年から適用済み)。

区分 割増率

1日8時間、週40時間を超える

時間外労働
月60時間以下 25%以上50%以下
月60時間超 50%以上
法定休日 35%以上50%以下
深夜労働(22時~翌5時の勤務) 25%以上

たとえば2023年4月以降、中小企業において月60時間を超える時間外労働が深夜の時間帯であった場合はどう計算したらよいでしょうか。

時間外労働の割増率50%に深夜労働の割増率25%が上乗せされるので、計75%の割増率となります。
したがって、深夜残業手当はこれまで時間単価の150%であったところ、2023年4月以降は時間単価の175%になります。

割増賃金の端数処理

ところで、割増賃金の計算過程において端数が生じることがあります。

端数処理については行政通達により、次の方法であれば常に労働者の不利になるものではなく、事務簡便を目的として認められるとしています(昭63・3・14基発150号)。

時間外・休日・深夜労働の「時間」の端数処理

1日単位で見た場合だと端数の処理は認められておらず、1分単位で労働時間を集計します。
ただし、1か月の労働時間を通算して1時間未満の端数がある場合は、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが認められています。

1時間あたり賃金額および割増賃金額

時間単価の計算において1円未満の端数が生じた場合、50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げることが認められています。

1か月の時間外・休日・深夜労働の各々の割増賃金の総額

各割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げることが認められています。

今から時間外労働の削減対策を

中小企業においても時間外労働に対する割増率が引き上げられるようになるまで、残り半年となりました。

企業にとっては賃金コストが増える改正ですが、そもそも時間外労働自体が月60時間を超えることがなければ、割増率の引上げの影響を受けることもありません。
今からでも時間外労働の原因に応じた削減策に取り組むようにしましょう。

小宮弘子 氏(特定社会保険労務士)

大手都市銀行本部および100%子会社で人事総務部門を経験後、2010年に社会保険労務士法人トムズコンサルタントに入所、現代表社員。人事・労務問題、諸規程、賃金・評価制度の改定をはじめ、社内制度全般のコンサルティングを中心に行なう。 著書に『この1冊でポイントがわかる 「働き方改革」の教科書』(共著、総合法令出版)、『ストレスチェックQ&A』(共著、泉文堂)などがある。

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