都内中小企業の給料や手当の支給実態は?平均支給額や推移をまとめてみました
都内企業の平均賃金は月38万円!「中小企業の賃金事情(令和3年版)」を読む東京都産業労働局では毎年、都内にある従業員が10人~299人規模の中小企業を対象に、賃金についての調査を実施しています。
令和3年度版の調査結果が2021年12月に発表されました。
東京都産業労働局:中小企業の賃金事情(令和3年版)
賃金だけでなく、労働時間や有給休暇の利用状況など、中小企業の実態を垣間見ることのできる調査ですが、ここでは平均賃金額、平均賞与額、各種手当(役付・家族・住宅)支給額を見ていきます。
なお、東京都内の中小企業を対象にした調査です。
たとえば最低賃金においても全国一の高水準ですので、他の道府県の方は地域差を踏まえてご覧ください。
最低賃金 | 2021年改定 | 2020年改定 |
---|---|---|
東京都 | 1,041円 | 1,013円 |
全国加重平均 | 930円 | 902円 |
目次
東京都内中小企業の平均賃金額
令和3年7月時点、1か月の平均賃金は380,226円ということです。
この平均賃金380,226円の内訳詳細は以下の通りです。
- 所定時間内賃金:349,759円(うち通勤手当11,356円)
- 所定時間外賃金:30,467円
- 平均年齢:42.3歳
- 平均勤続年数:10.6年
過去10年間の平均賃金額の推移を追ってみましょう。
2012年から2013年にかけて13,000円強の落ち込みを見せましたが、翌年26,000円の増加を見せます。
その後は380,000円強の水準で推移しているのがわかります。
なお、調査10年間を通して見てみると平均年齢はおおよそ41~42歳、平均勤続年数10~11年のあいだで推移しています。
各年、数か月程度の誤差はありますが、平均年齢も平均勤続年数も大きな差はありません。
都内中小企業における賞与の平均支給額
一方、賞与について見てみると、2020年7月から2021年6月までの夏季一時金と年末一時金は以下の通りです。
<賞与の平均支給額>- 夏季一時金:407,802円
- 年末一時金:414,720円
- その他:82,737円
以上から、年間平均支給額は905,259円です。
※夏季と年末の2回だけに限る(「その他)を除く)と822,522円
なお、賞与を「支給していない」と回答した企業は、852社中191社あり、全体の22.3%を占めています。
また賞与の支給平均額は905,259円ではありますが、中央値は709,333円とのことです。
調査資料を見る限り、業種別に比較すると平均支給額に100万円近い差が出る場合もあります。
※建設業や金融・保険業の平均支給額は140万円超
中小企業を対象にした調査とはいえ、 企業規模だけでも10人~299人と幅が広く、業種によっても違いがあることからデータ分布に偏りが生じるのはやむをえません。
平均値は少し割り引いて見る方がよいかもしれません。
ちなみに厚生労働省でも夏季一時金および年末一時金についての調査をしています。
ただし、こちらはそれぞれ「資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上」の企業が対象です。
【参考:厚生労働省】
○民間主要企業夏季一時金集計
○民間主要企業年末一時金集計
中小企業が支給する各種手当の平均額
続いて、手当の支給実態を見てみましょう。
役付手当・住宅手当・家族手当の支給実態が調査されています。
役付手当の平均支給額
役職別に役付手当の平均支給額が算出されていますが、そのうえで2つのケースでまとめられています。
<同一役職の支給が同じ場合>
部長 | 課長 | 係長 | |||
---|---|---|---|---|---|
平均年齢 | 支給額 | 平均年齢 | 支給額 | 平均年齢 | 支給額 |
50.1 | 86,687 | 46.0 | 55,612 | 43.2 | 25,601 |
<同一役職でも支給額が異なる>
部長 | 課長 | 係長 | |||
---|---|---|---|---|---|
平均年齢 | 支給額 | 平均年齢 | 支給額 | 平均年齢 | 支給額 |
50.1 | 86,687 | 46.0 | 55,612 | 43.2 | 25,601 |
ただし、平均額であって、水準としてみるのは難しいかもしれません。
というのも、たとえば<同一役職の支給額が同じ>部長職の役付手当を見ると、最高支給額は460,000円、最低支給額が3,000円というように大きな開きがあるからです。
業種によっても大きな差があります。
<同一役職の支給額が同じ>部長職でも、業種別に平均支給額を見たとき
・不動産、物品賃貸業:166,689円
・教育、学習支援業:47,500円
というほどの差があります。
「中小企業の賃金事情(令和3年版)第2表 賃金制度、賞与・諸手当」では業種別に平均額・最高額・最低額も掲載されているので、ご参考にされる場合は細分化してご覧いただく方がよいかもしれません。
住宅手当の平均支給額
住宅手当を支給している企業は37.8%と他の手当よりも割合が小さくなっています。
業種によってもバラつきが大きいのですが、平均をまとめると以下の通りになります。
平均額 | 扶養家族あり | 扶養家族なし |
---|---|---|
18,328円 | 19,813円 | 16,815円 |
平均額 | 賃貸 | 持ち家 |
---|---|---|
20,970円 | 22,774円 | 17,932円 |
住宅手当の場合、賃貸か持ち家なのか、あるいは扶養家族の有無によっても支給額が変わることがわかります。
家族手当の支給平均
家族手当は企業によって一律に支給する場合と配偶者や子供に応じて区別する場合があります。
<一律支給>
平均額 11,769円
配偶者 | 第一子 | 第二子 | 第三子 |
---|---|---|---|
10,498円 | 5,802円 | 5,461円 | 5,415円 |
おわりに
東京都内の中小企業に限った調査とはいえ、そもそも中小企業に限定した賃金等の支給実態を知る機会は多くありません。
そういう意味では貴重な資料です。
ここでは取り上げませんでしたが、モデル賃金や初任給の調査も行われているので、企業の賃金設計においては非常に参考になる資料ではないでしょうか。
ご興味のある方はぜひいちど調査資料を覗いてみてください。
東京都産業労働局:中小企業の賃金事情(令和3年版)