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当日の病気欠勤申請にどう対応すべきか

悪習になるのを防ごう
 

体調不良など急な事情で当日になって会社に出てこられない、という事態はどんな職場でも起こり得る。
当日欠勤申請に備えて整備しておきたいことを解説する。

事前に申出がなく、当日になって発生する欠勤(以下、「当欠」といいます)によって、当日の業務運営上様々な支障が発生するのは避けられません。

企業の経営者や役職者で、当欠のために仕事の割り振りや人員の配置などで苦労した経験のない人はまずいないでしょう。

多くの職場では、人員配置に余裕があるわけではないので、当欠者の担当業務をカバーするために、上司や他の社員にしわ寄せがいくことになります。

一昔前なら、「這ってでも出てこい!」と一喝する上司も珍しくなかったかもしれませんが、今日では無理に出勤させるとかえってリスクが生まれることを考えなければなりません。
かといって、安易に当欠を認めてしまうと、日常的に当欠が発生するおそれもあるのが、悩ましい問題となっています。


代表的な当欠の理由としては、

  • 病気などによる体調不良
  • 身内や親族の急病・不幸
  • 通勤途上の事故

などが考えられます。
一口に体調不良といっても様々です。
伝染性の病気に感染したときなど本人の意思がどうあれ出勤させるべきではないケースがある一方で、二日酔いが原因などの自己管理の甘さに起因するものもあります。
生理休暇も、当日になって申出がなされる場合が少なくありません。

しかし、原因が何であれ、当欠が発生すればその日の業務に影響が出ることも事実です。
通勤途上の事故や生理休暇のようなやむを得ない場合を除いて、当欠の多い社員は賞与や昇給などの査定で不利な取扱いをすることになります。

申請(申出)に対する基本的な対応の流れ

当欠の申出があるのは早朝か業務が始まる直前です。

役職者や管理者がまだ出勤していないこともありますので、連絡を受けた者は当欠を申し出た者の氏名や所属部署のほか、当欠する理由、当日の業務予定、代わりの者が行なわなければならない業務などの申送り事項について詳しく聞いておく必要があります。

念のため、当日の連絡先(本人の携帯番号など)も聞いておきます。必要な聞き取り事項について、一覧を作成しておくと役に立ちます。

連絡を受けた者が、当欠についての可否を判断する立場にないのであれば、連絡があったことを上司に報告する旨を伝えておくようにします。

上司が出勤している場合は、上司に取り次いで本人から直接申告させるようにします。

始業時間から1時間程度経過しても連絡がない場合、通勤途上の事故などで本人が連絡できない状況になっている可能性があります。会社から連絡を入れることも考えましょう。

生身の人間のことですから、体調不良でどうしても仕事に出られなかったり、家族の急病や事故といった不幸に見舞われることがないとはいえません。
会社としても当欠の発生についてまったく想定しないわけにはいきませんので、当欠に関するルールや対処方法を定めておく必要があります。
ほとんどの就業規則では、遅刻や欠勤の場合は事前に申し出て、上司の許可を得ることが必要と定めています。

そして、それができない場合(当欠など)は、事後できるだけ速やかに申し出ること、といった簡単な記載にとどめているものが少なくありません。

このように、遅刻等を申し出ることを定めているだけの規定は、通信方法が多様化している現在ではきわめて不十分です。

たとえばメールやFAXなど、送りっぱなしの方法でも申出をしたことになってしまいます。
一方的に出社できないことを伝えられても、詳細な事情や業務の引継ぎに関する確認や連絡などが満足に行なえません。

そこで、申出は本人が口頭(電話)で行なうことを原則とし、家族など代理の者の電話やメール、FAXなどによる申出は、やむを得ない場合に限るように定め、社員にそのことを徹底しておきましょう(下参照)。

■遅刻等についての就業規則の規定例
(遅刻、早退、欠勤等)

第○条 従業員が遅刻、早退もしくは欠勤をし、または勤務時間中にやむを得ない事情のため私用で事業場から外出する際は、事前に直接所属長に対し申し出るとともに、所属長の承認を受けなければならない。
  やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届け出なければならない。

2.遅刻・早退・欠勤があった場合は、不就労分に対応する賃金は支払わない。

3.傷病のため継続して○週間以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。
  同一の傷病により、当日になって欠勤を申し出た回数が同一月内で○回以上に及んだ場合も同様とする。

第○条 当日になって欠勤しなければならない場合は、原則として始業時間前に電話により直接所属長(不在の場合は代理者)に申し出たうえで、当日の担当予定業務の引継ぎに関する連絡を行なわなければならない。
  代理人およびメール、FAX等による連絡は、やむを得ない理由がある場合を除いて認めない。

2.従業員は、やむを得ないと認められる理由がある場合を除いて、当日以降に欠勤した日を有給休暇へ振り替えるように申し出ることはできない。

会社の個別事情を反映して決めるべきルール

前もって休むことがわかっていれば対応も楽です。
当欠はどのような会社でも可能な限り避けたいものです。

しかし、現場作業や車の運転、接客や食品関係の業務では無理に出勤させないほうがよいケースも少なくありません。

現場作業や車の運転などの業務では、体調不良のまま仕事をさせると事故につながるおそれが高まります。
そして、もし事故が発生した場合には、会社もその責任を問われます。

風邪を引いている場合など、接客関係では来客に不快感を与えることもあるでしょう。
伝染性のウィルス疾患にかかっていないかについても、特に注意が必要です。

このようなリスクを考えると、体調不良による当欠の申出があった場合には、無理に出勤させるのではなく、当欠を認めたうえで、医療機関での受診と医師による診断結果の報告を義務づけるとよいでしょう。

フレックスタイム制を採用している事業所では、当欠の場合でもコアタイムまでに申出をすれば問題ないと考える社員が少なくないようです。
しかし、当日の勤務ができない状態になっていれば、その時点で速やかに連絡を入れるよう指示しておきましょう。

いずれにしても、会社に来られないことが早めにわかれば、早めに対策をとることができます。

「理由」別の確認と対処のしかた

体調不良の場合は、状態によっては医療機関で診断を受けるように指示し、当日中にその結果を報告させるようにします。

医師から翌日以降についても休養の指示を受けた場合は、いつごろ出社できるか、見込みも含めて連絡するように指示をします。
ここで確認をとっておかないと、翌日以降の人員の配置や仕事の割り振りの見通しが立たないうえ、業務運営への影響が長びくことも考えられるからです。

本人ではなく家族の具合が悪くなったり、近親者が亡くなった場合には、当欠日以外にも休暇が必要になる場合が少なくありません。
その必要性と日数について連絡するようにも指示します。

生理により就業が困難であることを理由とする当欠申出への対応については、女性特有のデリケートな問題であるため、男性が電話応対することは適当とはいえません。
前もって女性の引継ぎ担当を決めるか、女性社員が近くにいれば、電話を代わってもらうなどの対応をしたほうがよいでしょう。

当欠が特に多い特定の従業員への対応

当欠が特に多い従業員がいる場合、まず当人の健康状態について確認する必要があります。

体調不良を理由とする当欠を繰り返す者には診断書の提出を求めましょう。

このとき恣意的な取扱いをされていると受け取られないように、前もって就業規則等でどのような場合に診断書の提出を求めるかを明らかにしておき、周知しておくことが望まれます。

診断の結果、肉体的には問題がないとされても、メンタル面での問題を抱えていることがあります。そうした傾向が感じられたら、専門医の診察を受けるように指示をすることも考えましょう。
このような配慮を示しても、指示に従わず自己判断で当欠を繰り返すのであれば、勤務成績不良での懲戒処分(最終的には解雇)も考えられます。

このような場合、最初は注意や始末書などの軽い処分とし、なお続くときは段階的に重い処分にします。解雇は繰り返し処分を行なっても、正当な事由のない当欠が続いた場合の最終処分です。

後日、欠勤の連絡ができなかったことに十分な理由があるとわかった場合は、処分を見合わせる必要がありますし、人事考課などで不利益な取扱いをすることも、その理由を考慮して慎重に行なう必要があります。

当欠の安易な利用を抑制するための手立て

上司や役職者が有給休暇の請求に対して露骨に嫌な顔を見せたり、使用目的を執拗に聞いたりする(そもそも労基法違反に該当します)と、「事前に申請しても認められないのなら~」ということで、体調不良などを理由に当欠が多発するおそれもあります。

身内の不幸などによる当欠を減少させる手立てはありませんが、えてして「欠勤につながるやむを得ない事態」は立て続けに起こりがちです。
本人も多忙で心身ともに疲れていることがありますから、ことさら証明などを求めるのも酷なことではあります。

しかし、そうした状況を悪用して休みがちな者が出てこないとも限りません。
対策として、慶弔規定を整備して会社から弔電や供花などを送ることのほかに、上司や役員が葬儀に参列することを定めておくと、不正な当欠の申出をけん制することができます。

また、欠勤した日以降に、当欠をした者が有給休暇としての取扱い(振替え)を求めてくることがあります。
事後になってからの有給休暇への振替の申出は、労基法上の有給休暇の請求とは異なり、労働者が自由に指定できるものではありません。

たとえば次のような判例があります。

「年次有給休暇を請求する場合労働者はあらかじめ時期を指定し、これを使用者に通知することを必要とし、労働者において任意に遅刻その他の事情により就業にさしつかえた日を有給休暇に振りかえることはできないものと解すべきである」(電気化学工業事件・昭和37年3月30日新潟地裁判決)

有給休暇の申請ではありませんから、時季変更権の行使ではなく、会社側の判断でその申出を拒否することも可能です。

事後に有給休暇へ振り替えることの可否についても、一定の基準を就業規則等で定め、当欠からの安易な振替えは認めないという姿勢を示しておくことも、当欠対策として有効です。

月刊「企業実務」 2014年3月号
小見山敏郎(社会保険労務士)

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