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10%の値引きで数量50%アップは得か損か

 
(問題)
あなたは販売価格1万円の商品をA社に対して100個販売する予定でした。A社の担当者から「商品の値段を10%引いてくれたら、150個購入してもいいですよ」という提案がありました。

あなたはこの提案を受けるべきでしょうか、それとも当初の予定通り1万円で商品を販売すべきでしょうか。なお、商品の仕入金額は1個8000円とします。

それでは、2つのパターンを計算しながら、売上と利益の関係を見てみましょう。

売上の数字に注目すると、1万円で100個売った場合は100万円、9,000円で150個売った場合は135万円となります(数式参照)。
このため値下げをして売上を増やした方が、企業の業績にプラスになるのではないか、という気もします。

(数式)
1.1万円で100個売る場合の売上と利益
売上:1万円×100個=100万円
利益:(1万円-8,000円)×100個=20万円

2.9,000円で150個売る場合の売上と利益
売上:9,000円×150個=135万円
利益:(9,000円-8,000円)×150個=15万円

しかしながら、利益の数字を見てみると1万円で売った場合は20万円儲かりますが、9,000円で売った場合は15万円しか儲かりません。

したがって、この問題の答えは、A社の担当者からの提案を受けずに、当初の予定通り値引きせずに販売する、というのが正解となります。

ちなみに、この問題のように、原価率80%(8,000円÷1万円)の商品を販売するときには、10%の値引きを行った場合は、販売数量が2倍になってはじめて値下げ前と同じ利益を獲得することができます。

したがって、販売数量が2倍を超えない限り、値引きを行わない方が利益が大きくなります。

会計的思考とは、経営という視点を意識して日々の業務を行うことです。そのために必要なことは、売上よりも利益の数字に注目することです。

いくら多くの売上を上げたとしても、十分な利益を稼ぐことができなければ、従業員の人件費をまかなうこともできませんし、銀行や投資家などの企業外部の関係者からの評価も低くなってしまいます。

営業マンの立場からは、売上を大きくすることに目を奪われがちですが、企業経営という点から考えると、利益を増やすことの方が大切になるため、どうすれば利益が増えるのかという販売価格のシミュレーションは慎重に行う必要があります。

企業実務サポートクラブ
望月実(公認会計士)

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