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ハローワーク経由で優秀な人材を採るコツ

表現一つでも大違い
 

基本的な求人手段として、ハローワークを活用している企業は多いもの。ここでは、ハローワークの上手な活用のしかた、採用に成功する企業の傾向、よりよい人材を獲得するためのコツなどを紹介します。

無料で2か月間も求人広告を掲載できるハローワークは、中小企業にとって大いに役立つメディアであり、人材募集の手段として多くの企業で活用されています。

ハローワーク経由で求人をしても思いどおりの人材を採用することがむずかしい、との声もよく聞かれますが、利用する側の工夫次第で優秀な人材を獲得することは十分可能です。

そこで本稿では、ハローワークの有効な活用法や優秀な人材を採用するコツなどについて解説していきます。

ハローワーク経由の求人の最新事情

厳しい雇用情勢が続くなか、雇用における行政サービスについても、使い勝手をよくしようと様々な努力を続けています。

たとえば、原則29歳以下の人のための「ヤングハローワーク」や、子育て中の女性をサポートする「マザーズハローワーク」など対象者を特化した職業斡旋サービスを始めています。

また、求人申込みをする際、インターネットを使うことで所定の用紙に手書きする手間を省くことができる新しいサービスを準備中です。

具体的なサービス開始時期は未定ですが、このサービスが開始されれば、ハローワークインターネット上から求人申込みの仮登録ができるようになり、ハローワーク窓口での手続き時間が短縮されることが期待されます。

ハローワーク経由の求人のメリットとデメリット

ハローワーク経由の求人のメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 経費がかからない
  • 政府が運営する職業紹介機関なので安心感がある
  • 窓口には専門の相談員がいるため、はじめて求人を出す企業でも気軽に相談できる
  • 全国に広く設置されているため全国規模の求人にも対応できる
  • インターネット検索ができる
  • 厚生労働省管轄の各種奨励金
  • 助成金の対象となりやすい
  • 広告掲載期間がおよそ2か月あるため求人の広告効果がある程度継続する

一方、次のようなデメリットも挙げられます。

  • 求人情報量に限界がある
  • 紙面が画一的で会社ロゴ、写真、イラストなどが使用できず、民間の求人と比較して他社との差別化が図りにくい

お役所の機関ですから、すべての求人を平等に扱う趣旨はわかりますが、民間の知恵を借りて応募者により伝わりやすいサービスを検討してほしいところです。

採用の成否を分けるポイントとは

採用に成功する企業には、次のような3つの傾向があります。

(1)他社の求人情報に敏感であること

求人者が求職者を選ぶように、求職者も求人者を選びます。当たり前のことですが、案外わかっていない担当者が多いものです。

最低限、同業他社の募集要項はチェックし、同じエリアでの同職種の平均的な給与を調べ、見劣りしないかどうかを確認しておくことが必要です。

仮に見劣りするのであれば、給与以外に有利な条件は出せないか、あらかじめ社内で検討しておきましょう。

(2)求人中であることが社内で周知されていること

せっかく応募者から問合せがあったのに、電話応対した人が知らなかったでは、応募者の第一印象が違ってきます。

最低限、どんな求人を出しているか、面接の場所や時間、募集職種などの基本的な質問にはスムーズに回答できるよう、応募者を迎える体制を社内で整えておきたいものです。

(3)求職者と求人者は対等だという意識が定着していること

求職者を「採ってやる」という意識が消えない古参の人事担当者はまだまだ多いようです。
(1)でも触れましたが、求職者も求人者を選んでいます。
ある会社の人事部長は、面接のときに足を組み、高圧的で笑顔をまったく見せない人でした。
求職者が面接には来るものの辞退者が多かったので、その態度を改めるよう助言したところ、最終選考まで進む求職者が増えました。

面接は密室で行なわれるため、外部からはどんな面接をしているか見えません。
面接者に経験が足りない場合は社内で研修するなど、会社も選ばれているという意識をもつことが重要です。

ハローワーク経由の求人のポイント

求人を行なう際の流れは図表1のようになりますが、以下、ポイントを挙げておきます。

◎事業所管轄のハローワークに出向きます(原則平日の8:30〜17:15)。

◎はじめての場合は「事業所登録シート」へ記入します。

◎「求人申込書」に求人の条件等を記入します。ハローワークインターネットサービスの選択も可能です。

◎ハローワークが求人申込書を受理すると「求人票」が渡されます。当然ながら法令に反した求人は受理されません。はじめての場合は、「事業所確認票」も一緒に渡されます。

◎応募があった場合は、ハローワークが面接日の調整を行ない、応募者はハローワークが発行した「紹介状」を面接日当日に持参します。

◎求人者は、採否を応募者に連絡するとともに、ハローワークにも紹介状裏面の「選考結果通知」によりFAXで連絡します。電話でも可能な場合があります。

ハローワークインターネットサービスの活用

求人情報はハローワーク内に設置された端末で検索できるほか、インターネットでも公開できます。
求人企業の希望に応じてハローワークインターネットサービスに事業所名、所在地、電話番号を含む求人情報を掲載できます。
ハローワークインターネットサービスへの掲載には、次の3つの方法があります。掲載を希望しない選択も可能です。

(1)全利用者に事業所名等を含む求人情報を提供する方法

広範囲から人材を募集することができますが、人気職種などは応募が集中することがあります。

広く情報が提供される半面、仕事を探している人以外からの問合せ(たとえば、営業電話など)が入ることがあります。

(2)ハローワーク求職登録者に限定して、事業所名等を含む求人情報を提供する方法

(1)と比べて対象者が限定されるため、応募の集中度はある程度緩和されます。問合せは、ハローワークに求職登録して仕事を探している人に限定されます。

(3)インターネットに求人情報を掲載するが、事業所名等は提供しない方法

インターネットで求人情報を検索した人が、ハローワークを通じて応募する方法です。応募は、ハローワークで職業相談・紹介を経た人に限定されます。

ハローワークインターネットサービスに求人情報の掲載を希望する場合は、「求人申込書」にその旨を記入します。

「事業所登録シート」の書き方

事業所登録シートに記入した情報は、基本的にすべての求人票に反映されるので正確に記入してください(図表2)

また、登録後には確認票が交付されるので、記載に誤りがないか必ずチェックしておきましょう。

〈表面〉
事業所番号、事業所名、代表者名、住所地、最寄り駅、社会保険の加入状況、企業年金、退職金制度、定年、再雇用、勤務延長制度、労働組合、育児介護休業制度等の利用状況など、基本情報を記入します。
会社の状況をきちんと把握していないと記入できない項目があるので、あらかじめ準備しておきましょう。

〈裏面〉
事業所番号、創業年、資本金、電話番号、FAX番号、ホームページアドレス、メールアドレス、事業内容、会社の特長を記入します。
ここでの注意点は、事業内容と会社の特長欄についてです。それぞれ90文字以内の字数制限がありますが、他社と一番差別化できる箇所です。この欄の書き方次第で応募者数は大きく違ってきます。

飲食店(洋食)を例に、事業内容の書き方を考えてみましょう。
単に「飲食店(洋食)」と書くよりは、「創業50年。○○地区で最も古い洋食屋です。自慢のオムライス(秘伝のオリジナルソース)は20〜30代女性を中心に口コミで評判となり、マスコミでも紹介されました」と書いたほうがお店の様子が伝わります。

その場で書くとどうしてもありきたりな内容になってしまうので、応募者の立場になってあらかじめ準備しておくことがポイントです。

優秀な人材獲得のために何をすべきか

優秀な人材の獲得は、企業努力なしではできません。
優秀な人材はどの会社でも引っ張りだこで、経営トップが自ら口説き落としてでも採るくらいの覚悟と勢いが必要です。
以下、優秀な人材を獲得するためのハローワークの活用方法をいくつか紹介します。

(1)「タダだから使う」という意識を変える

採用の目的は、「活躍してくれる人材を獲得すること」の1点です。
「ハローワークへの求人はどうせタダなのだから、ダメもとで出しておこう」という発想では、たいてい失敗に終わります。
なぜなら、深く考えずに、戦略もなく求人を出すからです。
ハローワーク経由では人材が集まらない、集まってもすぐに辞める、などと嘆くハローワーク否定派の多くが、「タダだから使う」発想の会社のようです。有効に活用しましょう。

(2)「釣り求人」などは御法度

言うまでもなくハローワークは厚生労働省の下部組織です(正式名称は公共職業安定所)。
法律に基づいて設置されている公の機関ですから、当然ながら、男女雇用機会均等法や職業安定法等に反した求人情報は受理されませんし、応募者を増やすために条件を水増しするなども御法度です。

試用期間中は給与が下がるにもかかわらず、求人情報に明記しなかったためにトラブルになる例がよくあります。
給与は、労働条件のなかでも特に重要な項目です。
たとえば、「月給25万円(試用期間3か月あり。試用期間中は月給20万円)」のように、試用期間と本採用後の給与をそれぞれ分けて正確に記載しましょう。

(3)細かい表現にも気を配る

求人情報の内容は、応募者の立場に立った表現で誰が読んでもわかりすく、が基本です。
営業職募集の場合を例にとると、単に「営業職募集」ではなく、営業のスタイル、法人相手なのか、個人相手なのか、ルートセールスなのか、新規開拓中心なのか、1日の接触件数はどれくらいなのか、など具体的に営業をイメージできるように表記することでミスマッチ求人が減らせます。

また、会社の雰囲気を伝えたいとき、「アットホームな雰囲気の会社です」と記載するよりも、「午後3時にはお菓子の差し入れがあります」のほうが、アットホーム感がリアルに伝わります。

ひととおり原稿が完成したら、応募者に近い世代の第三者に読んでもらい、誤解を招かないような内容になっているかチェックしましょう。

(4)募集のタイミングを見極める

ハローワークで求人できる期間は最大2か月間です。採用予定日から逆算して求人のタイミングを見極めましょう。

さらに、応募者が情報収集に動くタイミングを把握することも重要です。転職者の場合、一般的には賞与期、年末、年度末の区切りで情報を探す傾向があります。
そのタイミングに合わせて求人を出すことも有効です。

(5)積極的にアピールすべきこと

求人情報には、他社との差別化という視点が重要です。
社内では当たり前なことでも、世間一般から見たら「スゴイ」と思えることやものが1つや2つはあるものです。
それを見つけてアピールしましょう。

たとえば、「年功序列、終身雇用が自慢の会社」のように、あえて一般常識から一線を画している点をアピールすることも、年功序列、終身雇用が崩れつつあるいまはかえって新鮮でインパクトがあります。
ただし、誇大な表現は避けましょう。

月刊「企業実務」 2011年9月号
田中謙二(特定社会保険労務士)

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