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歴史や由来から学ぶスーツに関する豆知識

ジャケットの切れ込みや袖のボタンにはこんな由来が!?
 

ジャケットの後ろにある切れ込みは何のため?

ジャケットの裾には切れ込みがあります。

この切れ込みを「ベント」といいます。

真ん中に切れ込みが1本あるのが「センターベント」で、左右に切れ込みが2本あるのが「サイドベンツ」です。
※ベン“ツ”なのは、切れ込みがふたつ、つまり複数形だからです。

ジャケットの切れ込み

どうして、このような切れ込みがあるのでしょう。
スーツの由来をたどると、もともとベントは付いてなかったのですが、動きやすさを目的に切れ込みが入ったといわれています。

●センターベント

こちらは乗馬が由来です。
馬にまたがったときに窮屈にならないよう、動きやすさを考慮して切れ込みを入れたといわれています。
たしかに馬に乗れば足を広げることになるので、切れ込みがあった方が腰回りにゆとりができるように思えます。

●サイドベンツ

こちらはサーベルを腰につるすときに裾が跳ね上がらないようにするためといわれています。
刀剣の鞘がこの切れ込みを通るようになっているということです。

どちらも動きやすさを考慮して作られたものです。
裏を返せば、フォーマルな場(動きやすさが重視されていない)では必要ないともいえます。
そこで冠婚葬祭で着るような、いわゆるフォーマルスーツにはあえてベントを入れない(ノーベントにする)という発想もあります。

市販のもので、ノーベントのスーツはなかなか見かけないでしょう。
ですが今はイージーオーダーも手軽になりましたし、あえてベントなしで礼服や略礼服をオーダーするというのも面白いかもしれません。

ジャケットの袖になぜボタンが付いている?

袖には開け閉めできないのに3~4個のボタンが並んで付けられています。
(本切羽といって開け閉めできる仕様もあります)

なぜジャケットの袖にボタンがついているのでしょうか。

一説には、あのナポレオンが指示したことがきっかけだといわれています。

ナポレオンがロシアに遠征したときのことです。
現地のあまりの寒さに兵士たちが袖で鼻水をぬぐうので、袖の汚れが目立ったそうです。
その様子を嫌ったナポレオンは、兵士たちが袖で鼻水がぬぐえないよう、ボタンを付けたというのです。

今あるジャケットの袖に付いているボタン位置ではぬぐっても鼻に当たらない位置にありますが、こんな理由で広まったとするなら面白いですね。

ところでこの袖のボタンですが、きれいに隙間なく並んでいるもののほかに、少し重なっているものを見たことがあるませんか?

キッスボタン

このように少し重なって並んでいるボタンをキッスボタンといいます。

ミリ単位できれいにボタンの端を重ねるのは職人の技量の見せどころのようですが、こんなところに違いを出すのもお洒落ですね。

ちなみにこのキッスボタンはイタリアの職人が考案したもので、イギリス式ではないという話もあります。

イギリスもイタリアもスーツの本場といわれますが、袖のボタンで違いを見分けることができるかもしれませんね。

スラックスのダブル仕上げは雨に祟られたのが原因?

スラックスの裾にはシングルとダブルという、ふたつの仕上げ方があります。

スラックス

シングル(上図左)は裾に折り返しのないもの、ダブル(上図右)は裾を折り返したものです。

このダブルの仕上げが生まれた由来として有名なのが、雨のせいというものです。

いったい、どういうことなのでしょうか。

場所はアメリカ。
とある英国紳士が晩さん会に向かう道すがら、雨に降られてしまいます。
ぬかるみに足元が汚れると困るので、この紳士はスラックスの裾をまくり上げて濡れないようにして晩さん会に出席します。
会場到着後、周囲の人々がまくり上げた裾を見て「なるほど、英国では裾をこのように仕立てるのか」と勘違いして広まったというのです。

ダブル仕上げの由来は諸説あります。
ただ往々にして、勘違いから新しい発想が生まれることもよくあることです。
ですから、案外こういう話がきっかけで……ということがあってもおかしくはありませんね。

なお、このエピソードが理由ということではないでしょうが、本来はシングル仕立てなので、フォーマルスーツでは裾をダブルにはしません。

日常のビジネスシーンではどちらを選んでも差し支えありません。
ただし、ダブルにした場合、折り返しにホコリがたまりやすいので、定期的に手入れするようにしましょう。

また、ダブルにした裾の折り返しに5円玉や10円玉を入れておくと重しになってスラックスの折り目(クリース)がきれいに出るというテクニックもあります。

オーダースーツから既製品へ

いまでこそ量販店でもオーダースーツを始めているところが増えていますが、それまでは既製品を買って、多少のサイズ調整をして着ることが一般的です。

さかのぼってみるとスーツはもともとオーダーして着るものでした。
そもそも貴族がお抱えの仕立屋を呼んで、採寸して……というスタイルだったので当然といえば当然ですが。

歴史をたどってみると、こんなエピソードが見られます。

<古着屋から既製品販売へ>
ひとくちに貴族といっても裕福な貴族もいればそうでない貴族もいたわけです。
裕福でなくとも着るものは着なければいけないわけですが、お抱えの仕立て屋も雇えないし、生地を調達することもできません。

では、どうやって衣服をそろえたのかというと、古着として出回っているものを購入していたのです。

本来、持ち主の体形に合わせて仕立てられたものですから、多少は繕い直して着ていたのかもしれませんが、こんな経緯もあったようです。

実際に古着屋はあったようですし、いわゆる「つるし売り」のはしりはこんなところにあったようです。

なお、今見られるような既製品のスーツが広まったのはアメリカで、ブルックスブラザーズが既製品のスーツを販売したことに端を発します。

無理なく着こなし好印象! ディテールを活かしたスーツの装い方


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アパレルやファッションの分野で革新的な功績を残し、業界の常識、そして社会に変革をもたらしたデザイナー、経営者、ディレクターなどイノベーター(変革者)に焦点を当ててアパレルの歴史を概観します。

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