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数字が合わないとき知っておくと便利な豆知識

 

慎重に何度もチェックをしたのに、数字が合わない、原因もよくわからない……。そんなときに、いち早く正しい数字を導き出す方法があります。

経理の仕事は、毎日数字を扱います。その数字は、企業の財産であるお金に直結し、その計算の積み重ねにより経営成績と財政状態を表わす資料を作成します。

そして、そうした資料をもとに、企業は現在の会社の状況を把握したり、将来の経営戦略を立てたりします。
したがって、経理が扱う数字が正しいものであることは、非常に重要なことです。

しかしながら、経理担当者の日々の仕事のなかで、伝票や領収書、現金の入力・帳簿残高と現物などが合わない、ということは往々にして起こります。

そんなとき、一からすべてをチェックするのは、膨大な手間がかかります。
ここでは、数字が合わない原因やチェック方法について、知っておくと役立つ知識をいくつか紹介しましょう。

正確さはどこで検証されるか

経理処理の正確性は、現金や預金、売掛金や買掛金の残高が正しいかどうかを検証することで、確認できます。
というのは、経理処理は「複式簿記」に従って処理されているため、その一面である資産・負債項目を検証することより、裏づけがなされるからです。

売上高や仕入高、経費の合計を検証するより、実体のある現金や預金、相手先のある売掛金や買掛金の金額のほうが、裏づけがとりやすい数字であるといえます。

数字が合わない原因は

では、数字が合わなくなる原因は何でしょうか。
企業にパソコンが導入される前は、手計算(そろばん)で処理をしていましたから、単なる足し算の集計でも計算間違いがよく生じていました。

しかし、現在は会計ソフトによる作業となっていますので、単純な集計に間違いが生じることは、まず考えられません。

しかも、集計の際の入力値はデータとして残っていますので、間違いの原因をデータから探すことができます。

また、会計ソフトには検索機能が備わっていますから、検索機能を有効に使うことにより、確認作業の効率化が図れます。

このように、パソコン導入前と比べると、集計・確認作業はかなり楽になったといえます。

とはいえ、間違いに気づかないまま日数が過ぎてしまうと、あるいは間違いがいくつも重なると、原因の究明が困難になる可能性が高くなります。

毎日の業務の最後には、少なくとも現金・預金だけは金額を合わせておきましょう。

差額が生じたときの対処法

間違いの多いパターンをふまえて、残高や現物に差額(不突合)が生じた場合の対処方法をみていきましょう。

ピンポイントで合わない数字を探す

単純に違う科目で入力をしてしまった場合は、その合わない金額で探すことができます。

合わない金額を「2」で割ってみる

比較的多いのが、借方と貸方を間違えているケースです。

たとえば、入金を出金扱いにしている場合です。

「振替伝票」を作成していればあまり起こらないミスですが、「入金伝票」や「出金伝票」、通帳の数字を見ながら入力している場合には、間違えていることがよくあります。

借方と貸方(左右)を間違えていると差異は2倍になっています。したがって、間違えて入力した金額は、差異を2で割った数字となります。

合わない金額を「9」または「0.9」で割ってみる

次に多いのは、桁を間違えて入力しているパターンです。
桁間違いかどうかは、差異を「9」または「0.9」で割ってみるとわかります。

たとえば、「4,000円」のところを「400円」としている場合、差異は3,600円です。3,600を「9」で割ると「400」になります。

反対に、「400円」のところを「4,000円」としている場合も差異は3,600円です。3,600を「0.9」で割ると「4,000」になります。

そこで、4,000円を400円と入力していないか、400円を4,000円と入力していないかチェックしてみるのです。

電卓での計算やパソコン(キーボード)入力に慣れている人ほど、桁間違いが多くなるように感じます。

合わない金額が「9」で割り切れるものの、桁間違いではない場合

数字の位を入れ替えて入力している可能性があります。
たとえば、「872」を「827」と入力している場合、差額は45です。差額の45を「9」で割ると「5」で割り切れます。

このように、位が入れ替わっている場合の差額は、常に「9」で割り切れます。

具体的には、差額を「9」で割った数字が、
・9以下の場合
1と10の位の誤り
・10以上99以下の場合
10と100の位の誤り
・100以上999以下の場合
100と1,000の位の誤りというようになります。

数字の見間違い

合わない数字が3,000とか30など、「3」絡みの場合には、「6」と「9」を間違えていることがあります。

「6」と「9」は見た目も似ているのですが、電卓やパソコンのテンキーの位置関係が上下となっているので、入力ミスが多くなりがちです。

「6」と「9」が入っている数字に注意しながら、もう一度確認してみましょう。

元の書類が間違っている

経理が作成する帳票や書類ではなく、そもそも、営業担当者等が精算書などを書き間違えている可能性もあります。
間違いがないか、精算時にしっかりチェックしましょう。

ダブルチェック

「思い込み」や「勘違い」があって、自分だけでは原因を究明できないことも少なくありません。
他の人にチェックしてもらうと、案外あっさりと原因がわかることがあります。

棚卸資産、貯蔵品の管理

棚卸資産、切手や収入印紙などの貯蔵品についても、台帳の数字と現物の数量が合わなくなることがあります。
POSシステム等を利用している場合、システムを通さなかったものがあったことになりますから、その管理が問題となります。

また、貯蔵品については、システムとして管理していない会社も多いことでしょう。管理はしていても、手書きの台帳の場合には、記載ミスや計算ミスが容易に起こり得ます。

棚卸資産も貯蔵品も会社の大切な財産です。現金と同様、価値のあるものだということを意識して、担当者を決めてきちんと管理するようにしましょう。

数字には常に細心の注意を払う

現金や預金など、その実体があるものについては、「残高」という形で把握できるので、間違いがあっても、比較的早い段階で気づくことができます。

一方、決算が終わった後、時間が経ってから気づくのは売掛金や買掛金、未払金の計上間違いです。
金額の小さいものならまだしも、たとえば桁間違いとなると、会社の経営成績や財政状態の数字が大きく狂い、経営判断に影響を及ぼしかねません。
税務申告に関しても、修正申告や更正の請求を行なう事態になります。
数字の取扱いには常に細心の注意を払い、間違いがあった場合はその原因を究明し、同じミスを繰り返さないようにしましょう。

月刊「企業実務」 2012年5月号
加来眞名子(税理士)

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