コミュニケーション不足が招く経営への影響
「なりたい会社」になるヒント先日、ある経営者の方から、「お客様から仕事の範囲外の仕事を押しつけられて、自社の負担が増えて困っている」というご相談をお受けしました。仕事上、当初は役割分担が明確でなかったグレーゾーンの仕事に遭遇することがよくあります。このような場合、お客様に自社の役割や仕事の範囲についてきちんと主張し、リクエストをしていく必要があります。
ところが、最近の社員は、
- 交渉力がなく、相手の言いなりになってしまう
- ちょっとした疑問を上司に聞けない
- 周囲に相談できずに一人で仕事を抱え込んでしまう
という傾向があり、多くの会社さんから同様のご相談をよくお受けします。交渉し、リクエストするという行為はエネルギーがいることなので、短期的に見ると、相手の言いなりになるほうが楽で簡単なことかもしれません。ところが、一つひとつは些細なことであっても、それが積み重なっていくと、大きな負担になることもあります。
勝手な判断が負担に
たとえば、ある会社では商品の受注時に客先の廃材を引き取って処分を依頼されるケースが増えていることに気がつきました。
調査した結果、数年前に取引先から担当の営業社員に対して、そのようなリクエストがあったことがわかりました。しかし、当時の担当者が上司に相談することなく、安易にその条件で取引を継続してしまったところ、他のお客様からも同様の条件を出されるようになってしまったのです。
結果として、現在では不況の影響で取引先の売上が減っているなか、労力だけではなく廃材の処分のコストまで自社で負担することになってしまっていました。
取引上の大きな問題に対して、上司に相談することなく勝手に判断してしまった社員個人にも、もちろん問題があります。
ですが、このような変化や状況を察知できなかった管理職のコミュニケーション力の問題も否めません。業界を問わず、できるだけ安い価格で、より高度なサービスを求めるという傾向が強くなっている現在、余分なコストの負担は間違いなく経営を悪化させる原因の一つです。社員一人ひとりのコミュニケーション力が経営に大きく影響していると言っても過言ではありません。
ぜひ、この機会に自社のコミュニケーション環境について見直してみてください。
月刊「ニュートップL.」 2011年11月号
吉川直子(コーチ型人材コンサルタント)
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