なぜ、社員や部下の話が聞けないのか
「なりたい会社」になるヒント最近の若手社員に関する悩みをお聞きしていると、「当たり前のことが通じない」「何を考えているのか、よくわからない」というご相談を多くお受けします。
ところが、経営者や管理職の方は、本人に話を聞かずに憶測で物事を進めてしまっていることも少なくないようです。
当たり前ではありますが、何を考えているかわからない社員に対しては、何を考えているのか、こちらから聞いていく必要があります。
このようなお話をすると「社員や部下の話や意見を聞いて、言いたい放題言われたらどうしたらいいのでしょうか」という質問をお受けします。
ところが、これは大きな勘違いです。なぜなら「意見を聞く」ことと「意見を採用する」ことはまったく別のことだからです。
もちろん、自分の意見や話が採用されたら、社員や部下はうれしいでしょう。でも、たとえ採用されなくとも、自分の話や意見を聞いてくれた、という事実はきちんと社員や部下の心と記憶に残ります。
言うまでもなく、聞いた意見を採用するか否かの選択権は、社員や部下にあるのではなく、経営者や上司の側にあります。
避けるべきは「無反応」
先日、ある経営者の方から依頼があり、課長のAさんに管理職としての意識をもってもらうための研修をさせていただきました。Aさんは優秀な方ですから自分の仕事はきちんとこなすのですが、5名いる部下の育成については、自分の仕事と認識していませんでした。
ある製造業の会社では、優秀な若手社員から「給料を上げてほしい」という相談をされていました。
会社としては経営上の問題もあり、具体的な話をする機会を先延ばしにしていましたが、いよいよ対応を決断しなければならなくなりました。
最終的には本人の意見をジックリと聞く機会を設けたうえで、会社の給与基準を説明し、昇給の時期に給料などの条件を見直すということで話がまとまりました。
本人の希望をすべて受け入れることはできませんでしたが、その若手社員は納得してくれたということでした。
ただし、社員や部下の話を聞く場合、「適当に聞き流している」「どうせ言っても無駄だ」と思われるような聞き方をしていると逆効果です。そのため、経営者や上司の話の聞き方が大事なポイントとなってきます。
また、最も避けなければならないことは「無反応」です。自分の意見がどうなったのかがわからないと、社員や部下のモチベーションが下がります。
できれば、なぜそのような結果になったのかという理由の部分も説明ができるとベストです。
まずは面倒がらずに、社員や部下の話を聞くことから始めてみませんか。
月刊「ニュートップL.」 2011年6月号
吉川直子(コーチ型人材コンサルタント)
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